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SBOの大型イベント(1)


「えー、俺たち別にBlossom(ブロッサム)代表できてないんだけどぉ?」

「まあ、そう言わずに」

 

 社長に引き留められて、不満を漏らす神野。

 とりあえずFrenzy(フレンジー)のリーダーとして社長に向き直る淳。

 いったいなんの用なのか。

 

「実は『SBOソング・バッファー・オンライン』の方でコラボ企画が来ているんです。かなり大型の企画になりそうで、来年の大型アップデートでSBO初のトーナメント戦で朝十時から午後十時までライブ出場者にバフをつけ続けるという……」

「しんどすぎでしょ」

「鬼ですかな?」

「さすがに君たちに朝十時から午後十時まで歌えとは言いませんよ。交代で歌ってもらいますよ」

 

 それでも三つのグループに丸一日歌わせるということでは?

 どちらにしてもブラック労働すぎる。

 

「問題は一日ではないということでですね」

「は? 数日レベルってこと?」

「初日は初級者、レベル1からレベル20までのプレイヤー限定。二日目は中級者、21から50までのプレイヤー限定。三日目はレベル51以上の熟練者限定、ですね」

「ねぇちょっと稼働させすぎじゃない? ツアーじゃん、そんなの」

Blossom(ブロッサム)は来年ツアーも決定していますからね。秋ですけど。まあ、それの予行演習とでも思って」

「ぐっ」

「え! Blossom(ブロッサム)、ツアー決定したんですか!?全国ですか!?」

「全国ですよ。ちゃんと円盤発売しますよ。円盤は再来年ですけど」

「うわー! おめでとうございます! 関東ツアー、チケット予約します!」

 

 デビュー三年目で全国ツアーなんてさすがはIG殿堂入りに大手をかけているだけはある。

 完全に大バズりだ。

 人気は今も高まり続けており、今やBlossom(ブロッサム)の曲を聴かない日はない。

 正直今真横にBlossom(ブロッサム)のメンバーである神野と鶴城がいるのが、まるで奇跡のようだ。

 

「えー、ジーくんには俺からチケットあげるから買わなくていいよねー?」

「いえ、払います」

「むー。可愛くなぁーい。お兄さんに少しは甘えればいいのにね?」

「恐れ多いです」

 

 なにより自分の力で勝ち取りたい。

 それがオタク――。

 

「まあ、ツアーについては追々。その前にさっきのトーナメントについての続きです。その大型トーナメントの前に、試験的に今年のうちに小さなトーナメントが行われるんですが、五人組グループで参加者を募集することになっているそうなんです」

「ねえ? まさかそれに俺たちに出ろとか言わないよね?」

「僕だって君たちのスケジュールは把握しているので、それが無理なのは分かっています。というより、事務所の垣根を越えて多くのアイドルに参加してほしいんですよ」

 

 眉を寄せる神野。

 おそらくこの時点で社長の言いたいことを理解していたのは神野だけだろう。

 

「データも収集したいし、ってことね」

「ん〜〜?」

「別になんでもないよね」

 

 ふん、と腕を組んで顔を背ける神野に社長が笑顔で「さすが栄治ですねぇ」と謎の感心。

 それを見て「ああ、見ざる言わざる聴かざる」と察することができたのは淳と鶴城だけだろうか。

 だが、SBO内の『音声データ』を収集している、という話は淳も聞いている。

 データ収集とはそれの話だろう。

 

「そこでですね」

「なに、ゲームの中でIG(アイドルグランプリ)でも開催するつもり?」

「さすが栄治」

「は? 嘘、本気? マジで言ってる?」

「マジで言ってますよ〜」

「っ……」

 

 大変に楽しそうな社長。

 IGは主催こそ『CRYWN(クラウン)』が行っているが、CRYWNの所属事務所『秋野直芸能事務所』と懇意にしている春日芸能事務所の社長――春日彗がスポンサーとして資金を出している。

 他の大手事務所も出資しているが、第一回目からほぼ全額の資金を出している春日芸能事務所にはIGに自事務所のアイドルを本戦にゴリ押しで出せる程度の権威を持つ。

 実際それで実力を示してしまったBlossom(ブロッサム)なので、誰も文句は言えないだろう。

 

「お金はあるので、そのくらいのイベントは簡単にできるんですけどね。企画を作る時間が僕にはないんですよ。ですが、松田くんが入ってからゲーム内での企画をたくさん提案してくれるようになりましてね。その中からSBO内で全国のアイドルを集めて勝者を決めるイベントを採用しようかとー」

「……それ、Blossom(俺たち)も参加しなきゃダメ? 面倒くさいんだけど?」

「逆に参加しないと逃げたって思われません?」

 

 社長がそう言った瞬間、神野がわかりやすく神野が綺麗な顔を盛大に歪めた。

 神野栄治、プロ意識が高いためプロとしてのプライドをかなり高めに持ち合わせておられる。

 そんなことを言われたら当然――

 

「はあ? 逃げるわけないよね。でも、俺をそんな言葉で挑発したって俺たちに決定権ないからね?」

「うーん、どうも僕は煽りスキルが低い」

「あの人の真似とかやめてよね。社長には合ってない。ねえ、そういうことするならマジで別れた方がいいよね? 変な影響受けすぎじゃない?」

「はぁーい。もー、そこまで言わないでくださいよぉ」

 

 今度はなんとなく先程よりはぬくぬくしい睨み合い。

 まるで兄弟のようなやりとり。

 いや、仲のよい友人同士か。

 

「珀には二人から話しておいてください。Frenzy(フレンジー)は――まだデビュー前なので不参加ですが、来年は出てもらうのでスケジュールに入れておきますね」

「えっと、具体的な日取りがもう決まっているんですか?」

「夏の陣と冬の陣の間。十月五日ですね。十月は中旬にeスポーツの祭典があるので、ゲームとしてというよりはアイドルのイベントとして行うつもりです」

「え、今年中に初開催するの? 今から告知するの?」

「十分間に合いますよ。他のアイドル事務所には告知済みなので」


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