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先輩と後輩なので


「それじゃあ次は星光騎士団の後輩、淳ちゃんとクーちゃんとも一曲歌っていくでー! わしとクーちゃんはレベル低いけど珀ちゃんと淳ちゃんはレベル50超えとるからいいバフつくで〜!」

「アイテムドロップ率上昇とかつけましょう」

「通やなぁ」

「それでは、この曲を歌いましょうか」

 

 綾城が曲を入れる。

 前奏だけで全員「あ〜〜〜」と納得するくらい、星光騎士団では“課題曲”の一つとして今も受け継がれている十二代目『ツルカミコンビ』時代の曲。

 鶴城の和風さが色濃く特徴として出されている『雪月風花』。

 十二代目星光騎士団の専用曲だ。

 

「「「「〜〜〜〜♪」」」」

 

 ステージに四人並び、指先を掲げながら歌い出す。

 千景が「びゃあああああぁ」と聞いたことない声を上げる。

 フルメンバーではないにしても、星光騎士団をIG夏の陣準優勝に導いた卒業した二人と次世代の星光騎士団を引っ張っていくであろう二人のステージなんて、きっともう二度と見られない。

 淳もパフォーマンスする側でなければ、同じような悲鳴をあげていた。

 その自信がある。

 

(ああ……なんて聞き心地のいい声)

 

 それにやはり二人の歌声の表現力が桁違いだ。

 淳も周もかなり上手くなっているが、声色の変化の幅がすごい。

 柔らかな歌声が喜怒哀楽を表す時に力強くなり、掠れるほどに切なくなり、高い伸びの部分は心底気持ちよさそうに歌う。

 

「〜〜〜♪ ……というわけで、今夜限りの復活やったわけやけど……やっぱ楽しいわー」

「ひまりちゃんもアイドルに戻る?」

「あかんあかん。そういうお仕事依頼が来たら、そりゃあ受けるけどわしの事務所はモデル業中心やからなー。あ、でもお仕事の依頼があれば喜んで受けますんで、よろしゅう」

 

 ちゃっかり自分の宣伝も入れてくる。

 これぞ東雲学院芸能科、星光騎士団副団長だった男。

 隙あらば自分とグループを売り込むべし。

 チャンスがあれば積極的に仕事を募集すべし。

 空いたステージがあればライブして知名度を上げろ。

 誰かがライブしていたら便乗してライブして知名度を上げろ。

 芸能界なんざ目立てば目立つだけいい。

 芸能界なんぞ多少図々しいくらいでちょうどいい。

 そんな教えを残したお人なだけある。

 

「それじゃあ、今日はステージに乱入させてくれてありがとう~」

「いえいえ! お二人のパフォーマンス、勉強になりました!」

「最高でした~~~!」

「はい、もう、うう……感無量で……ううう……」

「ガチ泣き……?」

「そない泣かんでも、いつでも連絡してくれてええんやで」

 

 べしょ、と泣いてしまう淳。

 やっぱり先輩たちは偉大である。

 

「そうそう、最後にもう一度注意喚起をしておきますが、我々の名を騙って女性に声掛けしたりする輩がいました。もしかしたら我々が把握していないだけで、もっと悪質なこともしているかもしれません。が、我々東雲学院芸能科関係者は他プレイヤーの方に活動している名前でお声がけをすることはまずありえません。仕事のお話も学院を通していただきますので、くれぐれも我々を名乗る不審者にはご注意ください~」

「ついさっきわしらの仮の姿アバターにナンパしてくれたからな~。クックックッ」

「あれは面白かったよね~。笑いを堪えるの、難しかった」

「笑い堪えるの大変でしたよね」

「そうそう、そんな感じでわしらの名前を語るやつらはわしらに笑われとるって知っといてぇな~~~」

 

 花崗(みかげ)、これでもかというくらいにバカにした笑いで先ほどの輩たちを牽制する。

 ああいうやつらはプライドが高い。

 馬鹿にされるのを非常に嫌うので、このようにバカにされるのが一番嫌いだろう。

 だからあえてバカにしているんだろうけれど。

 

「では、星光騎士団のみなさんでした! 来月の定期ライブも必ず会いに来るから、また来てねー!」

 

 最後に緋村がまとめて、SBOの定期ライブは終了。

 かかっているバフの数は二十五。

 ゲーム大好き淳と綾城とシアはこのあと普通に狩りに出かけました。

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 六月に入り、レッスン中にスマホが鳴る。

 ちょうど水分補給休憩中なので、鞄からスマホを取り出して内容を見ると朝科からメールだ。

 

「むぐっっっ」

「どうした?」

「あ、朝科先輩が玉置先輩出演中の2.5次元舞台の観覧チケットを取ったってメッセージを!」

「玉置先輩?」

「玉置先輩ってまさか玉置藍(たまきあい)先輩? そういやあの人舞台俳優になったんだっけ」

「そうですそうです」

 

 松田は忘れているがさすがに石動は一年生の時の三年生――君主のことは覚えていた。

 思い出したのか非常に微妙な顔になる。

 

「あの人の舞台か……そういえばメッセージ俺にも来てたなぁ」

「え、そうなんですか?」

「なんか未だに気を使ってくれるんだよ。勇士隊に誘ってくれた時から、クソガキかなんかだと思われてんだよなぁ……。まあ、クソガキだったのは間違いねぇけど」

「あはは」

 

 反応しづらい。

 だが、石動にとってはやはり一年だけでも一緒に活動した相手。

 淳にとっての綾城珀。

 一年だけでも、三年生の先輩はずっと憧れだ。

 すごくお世話になった人だ。

 石動にとっても玉置先輩はそういう人なんだろう。

 

「一緒に行きますか?近くの席には座れないかもしれませんけれど」

「うーん。……いつ?」

「えっと、六月七日の十五時です」

「誰からの誘いっていってたっけ?」

「朝科先輩です」

「………」


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