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ゲーム内ナンパ注意(4)


 ナンパ男を無視してステージの方へと向かうことにした。

 とりあえず存在をしっかりと確認したので頷きあって、人垣を避けるように側面からステージの上へ登る。

 もちろん、アバターはリアルの姿。

 

「お、乱入きたこれ」

「こんばんは〜! 星光騎士団第一部隊の音無淳(おとなしじゅん)です!」

「同じく、星光騎士団第一部隊の狗央周(くおうあまね)です!」

「皆さん、こんばんは。春日芸能事務所Blossom(ブロッサム)綾城珀(あやしろはく)です」

「ちょりーーーっす! コスモプロダクション所属、花崗(みかげ)ひまりくんやでー」

「えええええ!? 綾城先輩、花崗先輩!?」


 現在ステージでパフォーマンスをしていたのは魔王軍西軍、緋村壮馬(ひむらそうま)

 一緒に歌っていたのは一年生の鷹宮藤人(たかみやとうり)

 緋村は卒業生の綾城と花崗のことをちゃんと知っていたので、本当に驚いてステージから落ちそうになる。


「そ、そそそ卒業した綾城先輩と花崗先輩じゃないですか!? え!? なんで!? どうしたんですか!? えええ!? あ、初めまして、魔王軍、今年の西軍リーダー緋村壮馬と申します」

「え、あ、はぇ? は、初めましてぇー! 魔王軍西軍の一年、鷹宮藤人ですー……えー?」

「初めましてやでぇ〜」

「初めまして。突然お邪魔して申し訳ない」

「「いえいえいえいえ」」


 息ぴったりの西軍二人。

 綾城がお辞儀するとお笑い芸人のようにステージの真ん中を手のひらで指しながら「「どうぞどうぞ」」と声を揃えて後退っていく。


「実はさっき婚約者さんとデートしてたんですけど、アバター設定を女性にしていたらナンパされちゃったんですよね」


 ステージ中央に来て速攻で切り込む綾城。

 そんな綾城にヒャッと笑い出す花崗。

 容赦がなさすぎる。


「え!? え!? こ、婚約者さんとデートされてたんですか!? 綾城先輩が!?」

「バレないようにたまに女性アバターで遊んでるんです。女の子同士ならイチャイチャしてても目立たないので」

「わ、わっ……そ、それ言ってよかったんですか!?」

「まあ、それはそれとしてナンパしてきた人たちが『星光騎士団』の『綾城珀』と『花崗ひまり』と『後藤琥太郎』と『花房魁星』を名乗っておりまして」

「え? え!? ……え? なに……え? 騙りってことですか!?」

「そうなんですよ」


 にこり、といつもの優しい微笑みの綾城。

 今頃あの連中はどんな顔をしているだろうか?

 それとも、ステージを見ずに別の女の子をナンパしに行っているだろうか?

 まあ、どうでもいい。

 緋村が即座にMC役を買って出てくれたおかげで、スムーズに本題を切り出せた。

 ありがとう、緋村。

 だが普通に大混乱を与えてしまった。

 ごめんよ、緋村。


「わしらって気づかず……まあ、わしら全員バレんように女の子のアバター使っとったんやけど……ナンパしてくるんやもん、笑い堪えるんしんどかったわ」


 けへけへ、と本当に苦しそうに喋る花崗。

 容赦がない。

 だがそれを聞いている客席の反応も、楽しげにバカにしている笑いが起こっている。


「我々、バフの効果を高めるために確かにSBOでレベリングしておりますが、他のプレイヤーの方に話しかけて協力を仰いだり『一緒にライブ観賞しながらお茶をしましょう』等の、いわゆるナンパはいたしません。絶対に」


 笑顔の綾城珀。

 彼、実際“騙り”のせいで炎上して自殺未遂にまで追い込まれたので笑顔だが、怖い。

 そんな経験も踏まえた上で「当然『リアルで会いたい』等のことも言いません。絶対。ありえないです。そもそも東雲学院芸能科の方で、炎上しないための授業があり……」と説明が入る。

 笑顔のまま、ブチギレておられる。


「というわけで、我々を騙って声がけをしてくるようなプレイヤーはすべて偽者と思っていただいて構いません。今回の件で魔王軍のメンバーや、勇士隊のメンバーをはじめ、他の東雲学院芸能科生徒……アイドルの名前を騙るようになることも考えられますので、皆様どうぞご注意ください。後ほど個人のSNSアカウントからも注意喚起させていただきますが、本当にありえないので安心して遊んでくださいね。僕は婚約者さん一筋なので」


 あ、それがネックだったのか。

 シアさんに勘違いされたくないし、シアさん以外にうつつを抜かしているという噂が立つのも嫌、と。

 さすがガチ恋勢徹底的に殺す系アイドル。


「せやね。わしも今は仕事で海外におるから、リアルで会いたいーなんて無理やし。まあ、そもそもわし、あんまりゲームログインせんしな。今日もわしを騙る不届もんをしばきに来たんやで。あと、珀ちゃんに会いに」

「ねー、久しぶりだよねー」


 と、顔を見合わせて体を傾ける綾城と花崗。

 仲良しな姿に客席から「きゃー!」という悲鳴が上がる。

 ドルオタも噛み締めるように目を瞑り、胸を押さえる。

 尊くて死ぬ。

 いや、強制ログアウトになる。


「つまり東雲学院芸能科のアイドルを騙る不届者が幅を利かせているってことなんですね?」

「そうなの。せっかくステージがあるから、大々的に注意喚起しようかと思って」

「わかりました。おーい! 御上ー! もう一回おいでー」


 と、緋村がステージ裏に向かって叫ぶ。

 ひょこ、と千景が顔を出す。

 そしてオロオロしながら、江花と共にステージに上がってきた。


「お、おろろろろろろ……あ、あ、あ、ああ、綾城珀先輩と花崗ひまり先輩……ひょえええ……ほ、本物ぉ……」

「初めまして、一年生B組江花満月(えはなみつき)でぇーす」

「よろしゅう。ああ、そういえばおったね、淳ちゃんのお友達でアイドルオタクのおもろい子」

「勇士隊の一年生? わあ、可愛いねー。うちの一年生にもそのうち会いに行きたいね」

「せやね」


 と、ほんわか空気。

 緋村がすぐに「今までの聞いてた?」と千景に聞くと、すぐに「はい! 勇士隊の方からも、注意喚起、させていただきます」と頷く。

 話が早い。




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