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罰ゲーム配信(1)


「響くんもセンブリ茶を飲むのなら、ケーキ食べながら飲むといいよ」

「わあー! ありがとうございます、淳先輩!」


 まさか柳までセンブリ茶を飲みたい、なんていうとは。

 苦い飲み物は甘いもののお供に最適。

 実際抹茶の苦味は和菓子の甘味を際立たせる。

 テーブルに並べられた六つのチョコレートケーキを見て、Walhalla(ヴァルハラ)のメンバーは淳を見て「自分たちも、いいの? 本当に?」という表情。


「いいよ。その代わり全部飲んでね、センブリ茶」

「「「「え……」」」」


 えぐいことをさらりと。


「星光騎士団だけでなく、勇士隊や魔王軍にまで喧嘩を売ったんだから、罰ゲームをしっかり果たして筋を通してもらわないと」

「あ……う……は、はい……」

「りょ、了解です……」

「でもチョコレートケーキ、ありがとうございます!」

「チョコレートケーキ、ありがとうございます……」


 Walhalla(ヴァルハラ)の四人もしっかり頭を下げて、ドン、とテーブルの上に置かれる三リットル水筒。

 紙コップを手に、震えながらポットの中身を各々注いでいく。

 その姿を玖賀が震えながら見ていた。

 まだまだ、罰ゲームは続く。


「あ、待って。撮影するから」

「「撮影するから!?」」

「撮影しなかったらただの後輩イジメになっちゃうじゃない。こうしてネタにして配信すれば、知名度アップも狙えるよ。元々そのつもりだったんでしょう?」

「うっ」


 お見通しの淳に、Walhalla(ヴァルハラ)四人はそれぞれ視線を彷徨わせる。

 実際、ステージで宇月と麻野が四人の後頭部を掴んでプールに叩き込んだのも、見ようによっては炎上もの。

 あそこだけ切り取られて悪意ある編集をされれば、宇月と麻野がネット叩きに遭うかもしれない。

 Walhalla(ヴァルハラ)のメンバーが自発的に罰ゲームを受けるところをネットで配信することで、その危険性を下げるのも重要だろう。

 一部のファンは若手が罰ゲームで苦しむところを楽しむ層もいる。

 そうして苦労している姿を多くの人に見せれば、応援しようというファンも増えるというもの。


「こういう裏の苦労も見せていけば、東雲学院芸能科のファンは『頑張っているな』って応援しようと思ってくれるよ。どうする? やめる?」

「や、やります! 撮影よろしくお願いします!」

「オッケー。それじゃあ、前置きは自分たちでやってね」

「は、はい」


 この子たち――Walhalla(ヴァルハラ)は先輩がいない。

 なので、こういうところで東雲学院芸能科のやり方を教えてあげる。

 自分たちの動画サイトチャンネルやSNSアカウントを作って露出を増やす。

 彼らはすでに事務所所属のアイドルなので、どこまで世話を焼いてよいものか悩むけれど。


「撮影開始まで三、二……」

「いやー、負けちゃいました! Walhalla(ヴァルハラ)リーダー石神です!」

「同じくWalhalla(ヴァルハラ)、折織でーす」

「同じくWalhalla(ヴァルハラ)、陸奥更だぜ!」

「同じくWalhalla(ヴァルハラ)、高倉だよー!」

「ってわけで! 罰ゲームの残りのセンブリ茶を飲んでいこうと思います! あ、そうだ! お茶請け! いただきました! 今月は星光騎士団の柳くんが誕生日月なので、お祝いのチョコレートケーキだそうです! お誕生日おめでとうございます!」

「「「お誕生日おめでとうございます!」」」

「ありがとうございます〜。星光騎士団第二部隊所属の柳響でーす。今からWalhalla(ヴァルハラ)の皆さんにご同伴させていただきます〜。よろしくね〜」


 上手い入りだ。

 柳もセンブリ茶試飲のために同じテーブルに着席。

 慌ただしいスタッフさんを尻目に、先程プールで飲んだセンブリ茶の苦味を思い出したWalhalla(ヴァルハラ)面々、わかりやすく目の前の紙コップの中身を見て死んだ目になる。


「ちなみに柳くんもセンブリ茶を飲んでみたい、ということで一緒に飲むことになりました。正気の沙汰とは思えません」

「そんなにぃ〜!? いや〜、さっき玖賀くんも試飲して戻ってこなかったもんねぇ」

「そうだよ」

「マジで苦いよ」

「こんな苦いものを飲もうと思った最初の人間も伝えてきた人間も変態だよ……」

「罰ゲームで知名度アップしてんのもなんつーかさすが人類、人の苦しむ様を見るためならなんでもするって思うよね」

「なんでみんなそんなに性格悪いこと言うのぉ? 僕の誕生日月ケーキ、没収しちゃうぞっ」

「「「「ごめんなさい!」」」」


 全員、柳に頭を下げる。

 チョコレートは命綱なので没収されたら玖賀のように震えて泣くことになるだろう。

 ちなみに、その玖賀は魁星の隣で「美味ぇ……美味ぇ……」と泣きながら手掴みで食べている。


「ちなみにノルマはるこの三リットル水筒全部です。いや、負けたのは俺たちですからね! 飲みますよ! ……飲みたくねぇ……」

「やるしかないのか……」

「もおおお……折織が東雲学院芸能科の一番知名度高いグループ全部に喧嘩を売れば、俺たちの名前も売れる、とか言うから〜……」

「おい、他責はよくない。即賛成しただろうが」

「はい! 仲間割れせずに全部サクサク飲んじゃおう! ケーキの生クリーム溶けちゃう前に!」

「う……それもそうだな……」


 と、石神がリーダーらしく他の三人を咎めて紙コップを震える手で持ち上げる。

 淳が「先にケーキを一口食べてからがいいよ」と言うと石神が「あ、撮影は星光騎士団の音無先輩にお願いしています!」とつけ加えた。

 こういうのもまた、オタクには大変美味しい。



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