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一年生のクラス(2)


 夏コミがわからない面々が首を傾げるのとは逆に、夏コミの戦場を知る面々からは信じ難いとばかりに「それは無理じゃなぁい? 一年の体力で参加できる場所じゃないよぉ?」とか「あ、あんな戦場に夏の陣のあとに参加する……!? オタクなら確かに参加しなければと思うのはわかわかりますが夏の陣の翌週に……!?」とか「それは、さすがに……」等々、主に二年、三年から青い顔で心配される。

 結構夏の陣と夏コミ、両方の経験者がいるのも怖い。

 

「えっと、鏡音くんは?」

 

 夏の陣も夏コミも行ったことのない芽黒が鏡音に話を振る。

 鏡音は首を横に振り、「自分は響くんほど積極的にクラスメイトと交流していませんでしたし、一ヶ月休んでいましたので」とのこと。

 話題が終わってしまう。

 人見知り感のある鏡音なので、芽黒にも無表情対応。

 こうして見ると結構宇月や淳たちには心を開いてくれているんだな、と思う。

 

「鏡音くんは江花君とクラスメイトだよね? 話したことはないの?」

 

 困った芽黒に淳が助け舟を出す。

 玖賀は舞台裏に行ったきり戻ってこないが、江花も鏡音と同じ一年B組。

 せっかくステージにいるのだからと話題を出すと、無表情で見つめ合う鏡音と江花。

 なんとも言えない時間が流れて、鏡音が居心地悪そうに「いえ……」と首を振る。

 ものすごい距離感に先輩たちも居心地悪げになってしまった。


「江花くんは仲のいいクラスメイトはできましたか?」


 星光騎士団の一年生が終わったので、勇士隊の一年生、江花にバトンタッチ。

 江花は少し考えてWalhalla(ヴァルハラ)陸奥更白刃(むつさらしろは)の方を見る。


「えーと、ボクァ陸奥更白刃(むつさらしろは)くんと、アプリゲームの話をしましたねー」

「あ……え、えへ……」


 話を振られた陸奥更、一気に顔を赤くして、照れ照れ。

 客席から「へーーー」という大きな声。

「どんなゲームやってるのぉ?」と宇月が話題を広げると、江花は「あの英霊をサーヴァントとして召喚して世界を救うやつですね」というと大体の人は「あー」と納得する。


「あれ、廉歌もやってるんですけど、廉歌とはクラスが違うんですよねー。だから誰かやってないかなーって思ってー。なんか鏡音くんとかやってそうって思ってたんですけどー、意外とガチャ機能のあるアプリゲームはやってないって一刀両断されちゃってー」

「ドカてん……」

「嘘は言えないです」


 人見知りが発動しとる。


「で、やってる人探してたらー、陸奥更くんがやってるって言ってくれてー。フレンドになりましたー」


 ドンドンぱふぱふ、と口で効果音を入れて客席からもワア、と歓声が上がる。

 ドルオタ、これこれぇ、と噛み締める。

 こういう、アイドルの日常生活を垣間見えるエピソードが涎が垂れるほど美味ぇ。

 淳だけでなく千景も目を瞑って味わっている。


「玖賀くんにも聞いてみたいところだけど〜……なんかまだ帰ってこないねぇ」

「だからやめておけって言ったのに」

「もしかして俺がいつも飲んでいるものより苦いのだろうか!? 俺にも一杯いただけないだろうか!」

「マジで言ってるぅ? まあいいや、一杯だけねぇ?」

「うむ!」


 えー、と困惑しながら魁星が紙コップにセンブリ茶を淹れて手渡す。

 それを受け取り、一気飲みする蓮名。


「うーーーん! 苦い! もう一杯!」

「青汁か」


 なんかのCMみたいになった。

 でもまあ、と宇月が「もう一杯あげなぁ」と魁星に指示。

 魁星、宇宙人でも見る目で見ている。


「魔王軍は一年生連れてきてないねぇ」

「そーだなー。そういやぁ、一年どもにクラスに友達がいるとか聞いたことねぇやー」

Walhalla(ヴァルハラ)の四人は、やっぱり同じグループ内の子たちとしか話さないの? それともちゃんとお友達ができたかな?」


 蓮名にはセンブリ茶を与えて黙らせ、宇月と麻野が芽黒に目で合図する。

 そこはしっかりMCの役割を果たさせよう、ということ。

 芽黒もその意図を察して、Walhalla(ヴァルハラ)の四人に優しく声をかける。

 芽黒、気づいているのかいないのかわからないが、割とさっきから幼稚園児相手みたいな優しすぎるお兄さん対応。

 それがまたドルオタには「空気美味ぇ……」「てぇてぇ……」「ありがてぇ……」となる。


「まずは石神くん」

「えっと! はい! ……いやー……そうですね、やっぱり同グループの理人(りひと)とばっかり話してますねー」

「へー、どんなことを話すの?」

「どんな……うーん、曲の話とか、こんな音楽やってみたい、とか、今度の振付の話とか」

「グループの話とかするんだね」

「そうですね!」


 と、強く頷く石神。

 完全にど真面目。

 自分のキャラづけが高飛車な自信家というものなのを、忘れているほどのフレッシュ。


折織(おりしき)くんはどうですか? 石神くん以外にお友達はできましたか?」

「いいえ。なんか警戒されてるっぽくて。というか、今のところあまりクラス内で交流とかは、ないです」

「柳くんもA組ですよね? 二人とお話しは――」

「すみません、先月の定期ライブ以降、僕と鏡音くんはおやすみしてたので……」

「あ、そっか」


 そんな中でも廉歌と仲良くなっていたのだから、柳のコミュ力すごい。

 では、と芽黒から山原にバトンタッチ。


「陸奥更くんと高倉くんはB組でお友達はできましたか? 陸奥更くんは勇士隊の江花くんと同じゲームをやっていたとのことだけれど、江花くん以外とは?」

「えっと、まだ名前を覚えるのでいっぱいいっぱいで」

「おれもまだグループメンバー以外とはプリント回す時以外、話さないですねー」

「あー」


 グループが仲良しなのもいいけどねー、と山原と芽黒と天皚が笑い合う。

 二年生だけのグループなので、Walhalla(ヴァルハラ)も他人とは思えないのだろう。



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