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フルボッコ確定『決闘』(5)


「魔王軍のパフォーマンスでしたー! ……えっと、めっちゃ……なんか……うん!」


 天皚、あえて言葉にしない。

 同級生のはずなのに、色気が違う。

 さすが魔王軍、とでもいえばいいのか。


「くっ……俺も色気を出せるように試行錯誤しているのに、長緒くんたちはもうあんなに色気を出せるようになっているなんて……! すごい!」

「いやー、お前のさっきのパフォーマンスの色気もかなりのもんだったよ……」

「え? 本当?」

「本当本当。御上がいたら失神してだと思うレベル」

「え! 失神……って……」


 そんなまさか、と言いかけたが千景、淳に対して失神した実績がある。

 えー、そうかなぁ、と思いつつ千景なら失神していそう、と思ってしまう。

 淳的にはまだまだ未熟な“色香”でも、千景は通用してしまうので。

 だが、千景の存在は淳の学び方に自信を与えてくれる。

 彼が認めてくれるから、アイドルとしての道筋が間違っていないと思えるのだ。

 ファンとの交流がいかに大切か思い知らされる。


「なにかファンの人にお返ししたいよねぇ」

「突然なんの話……?」

「え? いやぁ、千景くんにはいつもお世話になってるしな〜って思って」

「今の話の流れでなんでそんな話に?」

「え?」

「え?」


 謎に聞き返された。


「じゃ、俺様たちもまたあとで勇士隊のパフォーマンスが終わったら戻ってくるぜ! オメェら、俺様たちに投票する準備しながらいい子で待ってんだぜ!」

「またあとでねー」


 魔王軍もサクサクとパフォーマンスを終えて舞台袖に下がっていく。

 そこで芽黒が石神を呼び寄せる。


「星光騎士団、魔王軍のパフォーマンスが終わりましたが、先輩たちが自分たちの曲をあんなふうに歌い上げるのを見てどう思いました?」


 と、ここでインタビューを入れた。

 台本にはないが、石神の固かった表情が少し軟化する。

 きっと芽黒はWalhalla(ヴァルハラ)のメンバーが先輩たちのパフォーマンスに圧倒されて、固まっていたのを見て気を遣ってくれたのだろう。

 優しい。

 すでにプロデビューしているとはいえ、一年生の後輩であることに違いはないのだからと接しているあたり、芽黒の人柄が窺えてドルオタは大変よいものを見せてただいた気持ちになる。

 というか、これこそ東雲学院芸能科を箱で推す理由の一つともいえるだろうか。

 これ、この、先輩後輩の交流が堪らなくエモいのだ。

 去年は同じ立場だったからこそ、後輩の緊張を和らげる先輩の図。

 来年にはWalhalla(ヴァルハラ)が同じように一年生に接する光景を見られると思うと「これだから学院推しが辞められないよね」とまた呟いて駿河屋に変な目で見られる。


「い、いやー! さすが先輩たちって感じ? でも、鏡音と柳は俺たちと同い年の同級生ですからね! ま、だから? って感じですよ!」

「そう? 次は最後――勇士隊のパフォーマンスだけど、受け止められるかな?」

「はあ!? 当たり前じゃないですか! だからこそ俺たちは『決闘』を申し込んだんです! 絶対お客さんたちは俺たちに投票してくれるって信じてますよ!」

「ふふふ、そっかぁ。じゃあ、そろそろ最後の勇士隊を呼んじゃうね」

「望むところですよ!」


 芽黒の小さい子を相手にするようなインタビューにも、石神がそれはもうドヤ顔で煽る。

 あまりにもちっちゃい子の虚勢みたいで芽黒も幼児に対するほっこりみたいな顔になっているのだが。

 そんなSAMURAIリーダーに呆れつつ、山原が「それでは登場していただきましょう! 最後のグループは勇士隊の選出メンバーです! 誰がくるのかなー!」と言いながらステージ後ろに下がる。

 入ってきたのは青と紫の同デザイン衣装に身を包んだ蓮名、千景……勇士隊に加入した一年生、江花満月(えはなみつき)玖賀衛都(くがえいと)だ。

 まさかの星光騎士団と同じ構成。

 というか――


「ええええ!? 蓮名先輩が可愛いヤンデレ系を歌うのぉ!?」

「っていうか、音無そろそろ舞台袖に戻った方がよくない? このあと投票タイムにステージ上がるんじゃないの? 魔王軍だけ見にきたって言ってなかった? 勇士隊出てきちゃったよ?」

「嫌だ! 全部見届けたい!」

「我儘言うなよぉ〜!?」


 実際勇士隊になったら戻ってきてくださいね、と周には言われている。

 だが、まさかあの熱血ニチアサ系アイドルが可愛いヤンデレ系曲を歌うなんて。

 人の言うことなんて聞かなさそうなのに、練習したのか、蓮名が、あの曲を。

 絶対観たい、見届けたい。


「ちょっとだけ、半分だけ」

「あっという間に終わるって! 今のうちに舞台袖に戻ってそこで観なよ!」

「嫌だ! 正面から、ステージを見上げたい!」

「誰かー! 狗央か花房迎えに来てぇー!」


 駿河屋に押し返されつつもステージではトークが進む。

 どうやら同じことを思っていたのは淳だけではなかったらしい。


「え! 蓮名先輩も、あれ歌うんですか!? 歌えるんですか!?」


 天皚、容赦なく聞いちゃう。

 それに対して蓮名が「わはははは! 当然だな! 胸を貸してやると言っただろう!」と腰に手を当てて胸を張る。

 声でか。

 隣でもじもじする千景にも「御上歌えるの?」という質問に「どちらかというと課題曲が得意分野ですねぇ」と小さく……マイクでもギリギリ拾える声量で告げる。

 こちらはなんか、そんな感じがする不思議。



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