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フルボッコ確定『決闘』(4)


 パフォーマンスが終わると、Walhalla(ヴァルハラ)の曲なのにものすごい盛り上がり。

 複雑そうなWalhalla(ヴァルハラ)メンバー。

 わかってはいたはずだが、これほどアウェイだと思わなかったのか。

 だが――

 

(嫌な言い方をすればWalhalla(ヴァルハラ)の目的は大手三大グループを使った売名だ。自身のデビュー曲を星光騎士団、魔王軍、勇士隊に歌わせるのは、非常にいい宣伝になる。あと、シンプルに魔王軍と勇士隊のメンバーがこのヤンデレ可愛い系の曲を歌うところ楽しみ)

 

 ドルオタ、ぶれない。

 

「うおおお! さすが星光騎士団! 完璧なパフォーマンスでしたね! 最後の宇月先輩のセリフとか背筋がぞわっとしました!」

「ええ~? 喧嘩売られてるぅ?」

「売ってないです売ってないです! 褒めてるんです!」

 

 天皚(てんがい)、宇月に軽率に絡むので速攻返り討ちに合う。

 この人、慣れていない後輩相手に容赦はない。

 ビビり散らかしてブンブン顔を横に振るが、宇月はまったく気にせず「みんなは~? 怖くしすぎちゃったかなぁ?」と客席に問う。

 当然満足げな声が聞こえてくる。

 まあ、ここで怖すぎた、なんてことを言うファンはいないだろう。

 

「それじゃあ、今から魔王軍にバトンタッチするね。魔王軍、勇士隊のパフォーマンスが終わって最後、投票時間になったらまた僕らに会えるから、最後までちゃんと見届けてくれると嬉しいな~」

「はい。それではまた後程」

「まったねぇ~!」

 

 MCスルーで宇月が客席に手を振って、星光騎士団は一時舞台袖に引っ込む。

 次は魔王軍。

 淳は速攻で推しうちわとサイリウムを片手にいそいそと客席の最前列の関係者席に赴いた。

 関係者席には学年関係なく、『決闘』を見守っている。

 やってきた淳にギョッとしたのは、Monday(マンデー)駿河屋祝(するがやしゅく)

 

「お、お前こんなところに来ていいのかよ? このあとも出番あるよな?」

「うん。でも魔王軍のパフォーマンスだけは見たいと思って」

「ぶ……ブレねぇぇぇ……!」

 

 駿河屋が呆れる中、ステージに魔王軍が登場する。

 ただ、魔王軍の魔王(リーダー)茅原一将(ちはらかずまさ)は不在。

 二年生の西軍リーダー、緋村壮馬(ひむらそうま)、南軍リーダー、長緒幸央(ながおゆきお)、北軍リーダー、飯葛快斗(いいくずかいと)、そして副リーダーにして東軍の三年、麻野(あさの)ルイが選出メンバーらしい。

 四天王勢揃いとは、あまりにもガチ。

 いや、星光騎士団も人の子とは言えないけれど。

 

「ハッハー!!来てやったぜクソ雑魚ども! 魔王軍東軍リーダーの麻野ルイ様だぜ!」

「こんちわー。西軍リーダーの緋村壮馬くーんでーす」

「ちぃーっす。南軍リーダーの長緒幸央くんだよーん」

「どうもー、北雲リーダーの飯葛快斗だよー」

「え……!? あの、魔王軍も専用衣装ですか!?」

「そうだぜ。後藤が作ってくれたんだ」

 

 山原が本当に驚いたように四人を上から下まで顔を動かす。

 魔王軍の選出メンバーは星光騎士団の淳と同デザイン。

 既製品を改造したものに変わりはないが、色は黒と赤。

 今頃後藤がドヤ顔で「私が作りました」ヅラをしていることだろう。

 

「ええ~、すごいですね! もしかして勇士隊も……?」

「さあな! そんなネタバレは野暮ってやつだろう! さあ! ガキども! 座して刮目しやがれ!」

 

 ああ、あれ、きっと長緒が考えたセリフなんだろうな、と微笑ましく眺めてしまう。

 麻野、中二病のセリフは好きなようだが難しい漢字が多いのでカッコいいセリフを考えては茅原に読み仮名を入れてもらっていると聞いた。

 先日長緒と飯葛が「麻野先輩が最近茅原先輩が忙しくて読み仮名振ってもらえないって落ち込んでたんだけど、簡単でカッコいい口上あるかな?」と相談していたのを横で聞いて内心悶絶していたドルオタ。

 とりあえずその成果に同級生たちも微笑ましい眼差しを先輩に向けているのを見て、まあ、察した。

 魔王軍推しのファンもそんな二年生の姿に察したことだろう。

 麻野のお勉強できないバカキャラがガチなのは有名――。

 まあ、このままでは二年生も平均点数が下がり続けると心配されているのでニコニコ見ている場合ではないとドルオタではなく友人の部分が頭の片隅で突っ込んでしまうけれど。

 

「それでは次鋒! 魔王軍! 『永久相思相愛一直線!』!」

 

 天皚が宣言し、前奏が始まる。

 全体的に高身長のイケメンが集まる魔王軍がどのようにこの可愛いヤンデレ系曲を歌い上げるのか。

 ドルオタは興味と期待で涎が……いや、ちゃんと推しうちわを各四人分片手に二枚ずつ、サイリウムも四本ずつ、振る。

 隣の駿河屋が「器用すぎない……?」と割とドン引きしながら淳の両手を見て呟く。

 

「〜〜〜♪」

 

 だがこれは予想以上。

 歌詞そのものは可愛いのだが、歌い方はいつもの魔王軍のカッコよくて大胆なもの。

 そんな歌い方なもんで、セリフふう歌詞は完全にヤンデレ極振り。

 まあ、元々魔王軍は病んでいる系の曲も多いのである意味得意分野に引き込んだ――という感じだろう。

 魔王軍ファンは「ぎゃああああぁ!」「きゃぁぁーーー!」という悲鳴が何度も上がる。

 

「え、えぐいーーーい! やばいーー! ぎゃぁぁぁあああぁぁぁ!」

「じゅ、淳ちゃん……! 落ち着いて!」


 なんというか、完全に可愛いが排除されてかっこいい病み系に仕上がって、さらにいつもの魔王軍らしい色気ムンムンの振付。

 Walhalla(ヴァルハラ)、ポカーン。

 そりゃあここまでまったくの別物にされたらあんな顔にもなる。

 完全に別世界のなにかを見る目だ。



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