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お披露目ライブ(3)


「そしてそして、知ってる人も多いと思うけどウチの現リーダー綾城珀先輩がこの度プロアイドル『Blossom(ブロッサム)』としてデビューしたよぉ! 珀先輩のプロ初ライブは五月四日、四方峰町ショッピングモール中央広場で午後三時から! そう! この新人ちゃんたちの出番のあとだよぉ~! 絶対絶対、ぜーーーったい観に行くよねえ? もちろん僕も応援に行くよぉ~!」

「行く行くぅ~!」

 

 先輩たち、ライブ来るのかぁ、とプレッシャーを感じる三人。

 そして淳は心の中で「うちわ作り、智子ちゃんに頼んでおかなきゃ。間に合うかな?」と別のことを心配していた。

 

「さらに続報なんやけど、最近発売されたフルフェイスマスク型VR機とそれ対応のVRMMO『SBOソング・バッファー・オンライン』内で、『Blossom(ブロッサム)』の単独ライブが開催されるらしいで。時間は十九時からだそうや。わし、そのために初めてVR機買うたわ」

「僕も僕も! 握手会もあるんだってぇ! プロの珀先輩と最初に握手できるチャンスだもん、みんな絶対行くよね? ね!?」

「圧ヤバァ。と、それからわしの個人のお仕事やけど五月十五日に発売される『月刊Lunaleze』に丸っと三ページ、わしの特集を掲載してもろたで。予約して買うてほしいわ~」

 

 なんだと、と淳が無意識にスマホを取り出そうとして、まだ衣装から着替えていないことに気がついた。

 なによりまだ配信中。

 仕方ないので配信後、シャワーを浴びてスマホをいじれるようになったらネット予約しようと決意。

 腐っても星光騎士団箱推しのドルオタである。

 

「配信情報も出しておくねぇ? 今ご覧の東雲学院芸能科、星光騎士団専用チャンネルで今月十八日に月定期生放送を予定しておくよお。今回の担当は僕とこたちゃんの二年生コンビ! 内容は前日に星光騎士団公式SNSで発表するから、チェックよろしくぅ」

「動画は今編集中やさかい、完成し次第アップするで。今回の動画は料理やな。これからは一年生組にも手伝ってもらうさかい、楽しみにしててぇーな?」

「五月二十日はニッコニッコで若本アキラさんのチャンネルに僕がゲスト出演させてもらうよぉ。生放送だけどアーカイブは残るから、お昼に観るのが難しい人も安心してねえ」

「そんでそんでぇ、五月二十二日は『グルメ弁当』のプロモーション配信が入ってるでぇ。担当はわしとこーちゃん、そんで魔王軍西の四天王が一角、雛村日織くんと勇士隊、苗村裕貴くんや」

「五月二十五日にはVtuber、甘梨リンちゃんと僕がゲーム配信でコラボするよぉ~! ゲームはあんまり得意じゃないから、色々教わる予定!」

「で、五月三十日は定期ライブやね。いや~、来月もイベント目白押しやなぁ。予定表は星光騎士団公式ホームページに載せておくさかい、チェックしてぇーな? SNSでも予定表は出しておくつもりやで」

「そうそう、もう一つ大事なことあったよねぇ。新人三人のSNSアカウント!」

「「「!?」」」

 

 にっこりと“先輩”の顔になる宇月。

 ゾッ、と背筋が寒くなる三人。

 あの顔はあれだ。意地悪する時の顔だ。

 

「ツブヤキッターとインスター、二種類のSNSアカウントを今日中に公開するねぇ。例年通り運用は個人に任せるからぁ、興味ある人はフォローしてあげて~」

「うんうん。お披露目も終わったし、来月も忙しいな~。ありがたいこっちゃ。新人三人にもぎょうさん儲けてもらわんと。ほな、今日現地に来てくれた子もアーカイブを観てくれた子もあんがとさんな~。チャンネル登録、高評価、SNSフォローよろしゅう頼みますわ」

「まったね~」

 

 先輩たちに続いて、淳たちもカメラに向かって手を振る。

 配信が切れる前に笑顔が崩れそうになる。

 が、花崗が配信を切ると膝から崩れ落ちる三人。

 

「き、緊張したぁ~~~~~~~~」

「いきなり配信始めるとか聞いてないっすよ~~~!」

「ッ、こんなに気疲れするとは」

「ほらほら~、まだ休めると思わないで~。さっきも言ったけれどSNSアカウント二つ、作れ」

「「「……!?」」」

 

 宇月に笑顔を向けられて震えあがる。

 今から、この疲弊した頭でSNSアカウントを作り、活動について考えて呟いたり写真を上げなければいけないのか。

 ふっ、と笑う淳。

 

「二人とも、ピース作って」

「「え? う、うん?」」

「指先をくっつけると星みたいな形になるでしょ? これを自分のスマホで撮影して、SNSにこの写真上げよう。星光騎士団のマークは星だし」

「「て、天才か?」」

 

 ドルオタを舐めないでほしい。

 アイドルが映っていなくても、ファンが嬉しい写真は熟知している。

 淳の提案に自分もやった覚えがある宇月は苦虫を噛み潰したような表情になった。

 写真を撮影し、SNSアカウントを作ってから『音無淳です。これからよろしくお願いします!』というコメントと共に写真を添付する。

 

「にゃはははは! 淳くんのが一枚上手やなぁ! SNSアカウント開設おめ~。リツイしといてやるわ」

「自分のアカウントと間違えたり、炎上とかやめてよねぇ?」

「炎上が不安ならわしらに内容見せてから投稿するようにせいよ? 炎上はほんまに気ぃつけ。まあ、授業でもやると思うけどなぁ」

「そ、そうですね。気をつけます」

 

 SNSの炎上は、授業で三回はやっている。

 なにも問題なくSNS運用をしていても、綾城のように思いも寄らぬ方向から油と火を吹っかけられることもあるけれど、こちらに非がないと日々アピールしておくのは悪いことではない。

 

「俺、SNSも初めて」

「自分も」

「えええ!?」

 

 同期たちの家庭事情は、淳が思っている以上に特殊らしい。

 ちょっとソワソワする二人に、第二部隊隊長として「俺がしっかりしないと――」という自覚を持った。


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