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お色気研修デート(5)


 なんとなく、朝科について歩き出す。

 朝科が歩き出したのはビル内のショッピングモール。

 

「今は楽しそうにしているみたいだしね。御上くんだったかな? あの子が上手く日守くんを扱っているみたいで安心したよ」

「ああ、そうですね。千景くんは放っておけないタイプの子なので……」

 

 元々同じ中学で、いじめられっ子の千景はクラスヒエラルキートップの日守は当時まったく交流はない。

 だが現在……『下剋上』以降、立場は逆転。

 いや、日守が千景の暴走を抑えて世話を焼いているようにしか見えない。

 まあ、いい関係性になっていると思う。

 

(若干……本っっっっ当にちょっとだけ、千景くんが気安く相手をしている日守くんに思うところがないわけではないけれど……。まあ、ああして他意も緊張もない笑顔を向けられる相手がいるのはいいことだよねって……いや、やっぱり面白くはないな)

 

 話題作りにもいいし、ちょっとだけちょっかいをかけてしまおうか、なんてモヤモヤした考えもあるのだがスケジュール的に難しいのが難点。

 

「そうか。それなら今月の定期ライブ、様子を見に行ってみようかな。一将(かずまさ)はちゃんとやっていると思うけれど、一応ね。新しい四天王チームも見ておきたいしね」

「茅原先輩、頑張っていますよ。先日も宇月先輩主催の東雲芸能科GPで麻野先輩と一緒に司会を務めておられましたし」

「へえ、なんだかおもしろい企画をやったんだね。あ、このお店」

「はい?」

 

 朝科が指差したのはモール内の服屋。

 首を傾げると「アイドルたるもの、見た目は大事だよ。夏は色気を振りまく絶好の季節だし」と言われてハッとした。

 入店してすぐにタンクトップと薄手のパーカー、ジーンズ生地の七分丈ハーフパンツ。

 

「試着してくるから見ててね」

「え? あ、はい」

 

 試着室に同じもののサイズ違いを持ってきて、実際に着て見せてくれた。

 パーカーは少し大きめなせいか、首筋がよく見える。

 左腕は脇までチラ見せ。

 右手で髪をかき上げるポーズを取って「どう?」とウインク。

 なるほど……と目を伏せる淳。

 

「でもそれを自分でできるかどうかは話が別なんです!」

 

 本当にエッチなお兄さんすぎる。

 いそいそと淳を試着室に詰め着替えさせられて、着替え終えたら朝科がポージングの指示。

 この角度でこうして、こういう表情にすると色っぽく見られるよ、と教えてもらい真似をすると確かに見れなくもない。

 神野や宇月に教わったことと、このように実地訓練を受けられるとだいぶコツがわかってきた気がする。

 

「あとは、耳元で吐息を含ませるように囁く。これ、マイク越しでも応用ができるよ」

「ほうほう」

「それと、常に人目を意識する。男も女もみんな、通り過ぎる時に一度でも視線を向けられたら勝ち、みたいなプチゲームを自分の中でやってみたり、ね。これはモデルの花崗(みかげ)くんに教わったことだけれど、やはり常に意識する、のが重要らしい」

「つ、常に、ですか」

「うん、難しいけれど、そういう意識が重要なんだよ。まあ、アイドルでも役者でもモデルでも、演者というのは人目にさらされる職業だからね。それを日常にも持ち込む、という感じかな」

 

 とか言っている間に、朝科の両肩からパーカーがずり落ちる。

 程よく鍛えられた二の腕と、無駄毛の一本もない脇、タンクトップから見える鎖骨や胸板、ハーフパンツから生える生足まで、目のやり場に困る色気。

 これに店の奥の通路からも、人がチラチラと視線を投げて行くのに気がついた。

 芸能事務所が入っているビルなので、男の美人も見慣れたものだろうがこんな長身でこの色気はやはり目立つのか。

 

「あれえ、ジーくんじゃん。服買いに来たの?」

「ぎょえっ!? こ、神野栄治様!?」

「んも~。俺のことはお兄ちゃんって呼んでいいって言ってるのに。で、お前誰?」

「あ、きょ、去年の魔王軍魔王、朝科旭と申します」

 

 スマホとネギのはみ出た買い物袋を下げた神野がそのまま入店してきた。

 まあ、通路から丸見えなので別に問題はないのだが。

 さすがの朝科も東雲芸能科の“伝説”には素直にパーカーを着直してペコリと自己紹介した。

 

「もしかしてまた色気の授業やってるの?」

「あ、ハイ。その、やはり難しいので……色んな人の話を聞いて参考にできればと」

「前にも言ったけれど一朝一夕で身につけられるものじゃないよね」

「そ、それはもう、わ、わかっているんですけど……」

「なにしてんの?」

「い、いや、あの……す、すごくて……」

 

 直視不能なフェロモン駄々洩れコンビが目の前に完成してしまい、顔面を腕で覆って顔も背ける。

 見たら男でも三秒で孕みそうな光景と色香。

 ドルオタにはステージ下から見るのも失神ものなのに、距離が近すぎる。

 

「神野先輩はお買い物帰りですか?」

「そう。奥のスーパー社員証割引あるから、最近はもっぱらこっちで買い物してるんだよね」

「……先輩って意外と所帯じみているというか……自分で買い物して持ち帰りとかしているんですね……? なんか、こう、通販で産地直送の野菜とか買っているイメージでした」

「えー? まあ、そういうのも悪くないんだろうけれど、毎日の食事作りで献立も考えながら買い物しなきゃだしそういうのって意外と非効率なんだよねぇ。野菜の一部は家の庭でおじいちゃんが家庭菜園で作っているけど、肉はそうもいかないし」

「へ、へぇ~……お肉もお高いA5ランクとかをお取り寄せしているイメージでした」

「おじいちゃんやマヨの誕生日とかならそれもいいけど、毎日の食事にそんなことしないよね」



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