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五月の定期ライブ、IG夏の陣に向けて


「あとー、来月SBO内イベントでレイドライブの依頼が東雲芸能科全体に来てるんだって。今回から西雲学園のアイドルも参入してくるから、“先輩”としてしっかり土台を見せつけてくるようにーって。とはいえ星光騎士団(うち)は忙しいから、一日か二日参加できたらいいんじゃない? 予定が合う人は参加してねぇーって感じ? 僕、モデルの依頼で長野に行くからログインできそうな体調だったら参加するねぇ」

「そうなんですね……俺もスケジュール確認してみます」

「俺もー」

「自分も」


 まあ、来月ならばそれなりにスケジュールの空きもあるだろう。

 魁星も水着のモデルが入ってるんですよね、と呟くので宇月が「はあ? 仕事は選べよっていうか、それ学院からオーケー出たのぉ!?」と声を張り上げた。

 そういえば、一応そういう肌の露出が多い仕事は学院から「学生なのでNG」と言われそうなのに。


「え? いや、なんか現場で直接誘われたから、学院にはそう報告して許可をもらいましたよ?」

「は? ちゃんと仕事の内容も伝えたの?」

「いつものスタッフさんから……誘われて……内容は最近……『こういう内容に決まりました』って……」

「ちゃんと内容も学院に報告しろ! 今すぐ!」

「ハイ!!」


 聞いたことのない宇月の怒声に魁星が直立して、こちらも、聞いたことのない大声での返事。

 速攻でレッスン室から出て真水先生に報告しに出かけて行った。

 淳と周、顔を見合わせて眉尻を下げる。

 個人の仕事に口出すことはなかったが、今後は内容もチェックしなければいけないかもしれない、


「…………ナギーはマネさんがいるから大丈夫だと思うけど〜、ドカてんはそういうお仕事の依頼が来たら僕たちお兄ちゃんたちに相談するんだよぉ?」

「は……はい」

「ナッシーとブサーも、わかってるね?」

「「も、もちろんです……」」


 魁星、お説教コース確定。

 可哀想に、と思う反面自業自得な気もする。


「こりゃあ、真水先生に他の生徒も変な仕事依頼されていないかどうか調べてもらった方がいいな。ナッシー、バカに釘刺しておいて」

「了解。……もしもし魁星? 真水先生に他の生徒も同じ手口でおかしな仕事をもらってきているかもしれないから、一度調べて、とつけ加えて進言しておいてね。うんう、うん、そう。うん、じゃあね。……釘刺しておきました」


 仕事が早い。


「まあ、いいや。バカのブサーが戻る前に他の話もしておくねぇ? スケジュールの方は日々更新されているから、各自でチェックしてね。あと、先にナッシーたちにこれを渡しておくよぉ」

「これは?」


 手渡されたのはUSBメモリ。

 宇月と後藤がニコニコしている。

 いや、宇月はニヤニヤか?


「個人曲だよぉ。これはブサーの分。あとで渡しておいてね。確認して、自分で歌い方とか研究しておいて〜。今年から個人曲を星光騎士団のチャンネルでMVとして投稿解禁になったから〜、それ用に練習しておいてね〜。一応個人曲は難しいから収録は夏の陣のあとにしてるけど」

「ええ!? 今年から……MVを!? 宇月先輩と後藤先輩のも!? 魔王軍や勇士隊の個人曲もですか!?」

「そう。らいじんぐの二人が卒業後にMV専門の会社を立ち上げることにしたから、契約形態が確立したから二人の会社の応援も兼ねて定期的にMV制作を依頼することになったんだってぇ。去年だったら珀先輩とかひま先輩のMV上げられたんだけどねぇ……まあ、卒業済みの先輩たちの個人曲MVは時間をかけてスケジュールとか合わせて収録してもらおうねって感じかなぁ」

「ふおおおおおおおおお!」


 ドルオタ歓喜の雄叫び。

 卒業と同時にサブスクからも消えていくので、MVで残るならオタク大歓喜である。

 星光騎士団のメンバーだけでなく魔王軍や勇士隊の個人曲MVまでそれぞれのチャンネルで上がるなんて。


「千景くんに連絡していいですか!?」

「あとでねぇ?」

「はい!」

「って感じで、二年生は個人曲の練習も入れてねぇ。夏の陣に間に合ったら夏の陣のセトリに入れてもいいから〜。あと――これはちょっとアレなんだけどさぁ」

「はい?」


 ちょっと神妙な面持ちになる宇月。

 後藤が衣装の入っている紙袋を持ってきて、差し出してくる。

 淳に向けて差し出されたそれを、受け取った。


「ごたちゃんがアームカバーをつけてくれたから、試着してみてって。ナッシー髪色変わったから、色の調整もしたいんだって」

「あ、すみません。事務所指示でして」

「うん、聞いてる。というわけで隣のレッスン室で試着してきて」

「はい、わかりました……?」


 しかしながらやや不思議な面持ちのまま。

 後藤とともに隣のレッスン室に移動して、試着してみる。

 数箇所仮縫いの部分があるが、ほぼできている。

 ノースリーブの上着、丈は燕尾服風になっており、裏地は夜空の生地が使われていて表は星光騎士団のイメージカラーの白基調。

 ズボンには太もも部分にデザインベルトが二本。

 青銀の靴紐ブーツ。

 全員基本は同じだが、それぞれメンバーごとにブローチを胸元につけるらしい。

 そして淳は怪我を隠すためのアームカバー。

 白の生地は通気性がよく、上着と似たものが使われているらしい。

 手首より上……親指の根本にゴムが入っていて、二の腕の部分にベルトで固定する形。


「こっち……」

「手袋ですか」


 こくり、と後藤が頷き紙袋から取り出してきたのは右腕だけの手袋。

 小指と親指だけ出ているタイプの、こちらも二の腕まで長く、ベルトで固定するもの。

 そして、後藤が木箱を取り出す。

 木箱の中から縦巻きロールの金髪美少女SDを取り出した。

 ……今日はまたずいぶん派手目なSDだな。


「どっちがいい? 別のものがいい?」

「うーん、手袋の方がオタクとしては好きですね」

「……そう……」


真顔で答えたら謎の間があった気がする。


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