イメージカラー
(イメージカラーかぁ……)
確かにアイドルといえばイメージカラー。
星光騎士団は白、魔王軍は紫、勇士隊は青……のようにグループのイメージカラーが定められており、サイリウムでの応援の際に声がけして色を変更して振って応援を呼びかける。
アイドル自身もイメージカラーを設定している人もおり、Blossomは綾城が白、甘夏が赤、鶴城が青、神野がワインレッドなので、サイリウムはマゼンダ――というカラー設定してあった。
「なあ、俺、青なの?」
「そのように話していましたし、なにか不服ですか?」
「多分そのうち同じ事務所合同とかも考えられてるよな?」
「まあ……そうですね……?」
「なら、俺は水色でいいし梅春はライトグリーン、淳はオレンジにした方がよくね? 色被りしない方がファンも応援しやすいんじゃねーの?」
「ですね!!」
「うるさ」
石動、オタク心がよくおわかりで。
「東雲学院芸能科はグループのイメージカラーしかなかったんですけれど、アイドル個人のイメージカラーがあるとその色のグッズとかも集めやすいですしグッズ加工とかする時の枠とかイメージカラーにしたり」
「――っていう感じでイメージカラーはかぶらねー方がいいっしょ。淳、明日にでも髪色オレンジに変えてこい。若干根本黒入ってきてるし」
「了解です!」
「もしくは茶髪に戻してオレンジのメッシュ入れてくるとか。毛の裏とか、下の方とかに強めに入れておくと髪が伸びても変化しづらくて手入れ時期ずらせるしいいかも。まあ、その辺は美容師と相談しつついじってこい」
髪の毛を撫でられる。
じーっと見られてそんなふうに色々考えてくれる石動がイケメンすぎた。
(桃花鳥先輩の気持ちがわかりすぎる〜! 上総先輩イケメンー!)
こう、さりげない優しさ。
真剣にこちらのことを考えてくれるところが、まさにイケメン。
これは女子もドキドキするシチュエーション。
「わかりました。ではイヤホンのカラーもそのように変更してきます。イメージカラーについても、水色、オレンジ、ライトグリーンに変更して、グッズ展開していきますね。今のところグッズはオリジナルサイリウムがノーマル、ハート、スタータイプ別各三種。サイリウムリング、サイリウムうちわ、キーホルダー各三名分、各三種と三人セット三種類缶バッチ各三名分、各二種とメンバー二種。チェキカード三人分各五種。オリジナルバッグ三人分、各一種とメンバーセット二種、グループタオル色違い三種……」
「俺らまでイラストが多いんだな」
「三人が揃っているものはだいたいイラストになりがちですね。松竹くんがいるので。、ご不満ですか?」
「別にぃ。なんかファンアートみたいで面白いからいいけど」
と、サンプル画像を見ての感想。
淳も覗き込み、眺めてみるとなるほど、これは面白い。
というか、想像以上に種類が多い。
学院の方の公式グッズはグループサイリウムと各アイドルのキーホルダー、缶バッチ、タオルくらいだ。
グッズにかけるお金が違う、と感心してしまった。
学院の方は売れなかったらと思うと在庫になってしまうから、と綾城や花崗や朝科や石動や大久保レベルでないと追加生産などなかなかされない。
淳も入学した当初のグッズ在庫がまだある。
というか、ほとんどの生徒は在学中にグッズ在庫が売り切れることはない。
去年の三年生たちが異常、と言っても差し支えないレベル。
しかし、このグッズの種類……『絶対に、売る』という気合いを感じる。
「なんだか……ここまでしていただくと緊張してきますね。プレッシャーというか……」
「そんなん学院と同じだろう。ところで、この“ぬい”ってなんだ?」
「キャラクターを模した二頭身のぬいぐるみですね。こんな感じです」
「はあー。今時のオタクはこんなモンまで欲しがるんか。意味わからん……。このクリアファイルとか、使い道なさそう。アクリルスタンド? っていうのもなにに使うんだ?」
「アクリルスタンドは祭壇に並べたりしますし、クリアファイルは布教用ですね」
「ふ………………ふーーーん……」
ドン引きされた。解せぬ。
翌日、ゴールデンウィークが終わった平日。
三年生数人は振替休日でお休み。
主に宇月、後藤、茅原、麻野などの運営組。
そして今日から淳は千景のサポート――そう、コラボユニットのだ。
「で、午前の授業を休んで来たわけだけど」
「は、はい。すみません……すみません……!」
「いやー、千景くんが謝ることはまったくないんだけれど……」
腕を組みながら練習棟一階の第二レッスン室を眺める。
そこにいたのは双陽月の双子のみ。
「夏山先輩と冬紋先輩は?」
「それが、さっきチャットルームに連絡入れたら冬紋先輩がゴネまくってるらしくて説得に時間がほしいって」
「ええ……?」
困った顔の月光がスマホのモニターを見せてくれる。
確かに夏山真紅から『ごめん! 翡翠がずっとヤダって言ってる! もう少し説得してみるから先に始めててほしい!』とのこと。
どうしよう、と顔を見合わせる太陽と月光は、多分冬紋翡翠の家庭事情について知らないんだろうなぁ、と別な意味で顔を見合わせる淳と千景。
ドルオタはこうなる気がしていたので、繰り上がりを視野に考えていた。
「冬紋先輩ならそうなる気はしてたしね。とりあえず曲と振付、衣装の候補をいくつか用意していたから確認してほしいな。もちろん先輩たちが来たら、先輩たちの意見も参考に――」
して、と言おうとした時、廊下の方から扉が開閉する音。
千景とまたも顔を見合わせる淳。
「どうしたの?」
「この時間帯、レッスン室のレンタルメンバーはコラボユニットメンバーとそのサポートをする俺と千景くんだけなんだけど」
「えっと、つまり練習棟一階には誰もいないはずってこと、です……ね?」
「そのはず」
沈黙が流れる四人。






