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お披露目前日

 

 ――四月三十日は定期ライブ。

 四月の定期ライブは入学後最初に行われるバトルオーディションとは違い、外部の”東雲学院芸能科ファン”に向けたお披露目。

 前日に作られた学校公式グッズと、星光騎士団限定グッズの置かれた物販スペースを見て感慨深くなる。

 

「うわあああ……本当にこんなサインがグッズになってしまったぁ!」

「授業を真面目に聞いていないからでしょう」

 

 ブースに並べられた自分の適当なサイン入り初グッズに崩れ落ちる魁星。

 その横で一応、不慣れながらもサイン入りのグッズを手に取って出来栄えに満足する周と淳。

 出されたグッズは学校公式のものはプロマイドと缶バッチ、名前入りサイリウムだ。

 星光騎士団オリジナルグッズはサイリウム。

 グループごとにサイリウムカラーが決まっており、星光騎士団は白と青。

 なので販売されているサイリウムは星光騎士団カラーのみが光る仕様。

 新入生の淳たちは、まだ星光騎士団所属になったばかりなので専用グッズは名前入りサイリウムのみ。

 落ち込む魁星には淳が「来年また学院公式グッズは作り直しになるし、星光騎士団オリジナルグッズはまた別に作られるから」と慰める。

 グッズブースに布をかけて、練習棟の調理室へと戻ることにした。

 そこには二、三年の先輩たちが後片付けを終わらせて屯っている。

 

「ケーキも上手くできてよかったね。宇月先輩、改めてお誕生日おめでとうございます」

「フン!! ……アリガト」

(((ツンデレ~)))

 

 さすがに一ヵ月も経つと、先輩たちの性格もだんだん把握してきた。

 特に面倒見のいい花崗(みかげ)が気難しい宇月やなにを考えているのかわかりづらい後藤のフォローもしてくれる。

 それによって宇月は意地っ張りなツンデレ。綾城と神野に憧れており、自分にも他人にも厳しいとわかった。

 また、後藤は人見知り。SD(スーパードルフィー)と綾城、宇月としか直接話さないらしい。

 一応部活ではSD越しに話をしたそうだが、アイドルスイッチの入った後藤はファンに対して『理想のアイドル』を体現する。

 淳も昨年の定期ライブで宇月や後藤のファンサービスを行っているのを見てきたので、二年生組もファンの前では立派なアイドルをやっていた。

 そういう前提の予備知識を耳打ちされて、よくよく観察していると、確かにその通り。

 誕生日ケーキを作って明日のライブで誕生日月である宇月を祝うのだけれど、淳が存外ケーキ作りで活躍したのでいつもより態度が柔和。

 見た目の可愛い宇月のツンデレを見ると「かわいい~」となる。

 ステージ上や配信上の宇月しか知らなかったけれど、素の彼も十分魅力的だと思う。

 そんな宇月にニコニコしてしまうと、宇月に「なに笑ってんだよぉ!」と怒られた。

 

「いや~、それにしても淳ちゃん結構料理上手いなぁ? 慣れとるのがようわかるわ」

「えへへ。東雲学院芸能科に入学できたら星光騎士団に入団したかったので、家の手伝いの中でも料理も頑張ってきたのでそう言っていただけて嬉しいです」

「はあああ~~~、淳ちゃんはほんまに星光騎士団好きやったんやなぁ。入団したあとのことまで考えて努力しとったん? えらい将来の楽しみな後輩が入って来てくれたわぁ。こりゃあ、みーちゃんが団長になったあとも副団長はこーちゃんより淳ちゃんのがええかもな」

「うぃ」

「って、本当に副団長の座譲るのに躊躇ないんかーい」

 

 花崗が漫才師のように軽い裏拳で後藤の胸にツッコミを入れる。

 しかし、いきなり副団長は「さすがに無茶です!」と顔をブンブンと左右に振った。

 販売するケーキのラッピングを終わらせ、冷蔵庫に収容してから綾城が手を洗って拭きながらメンバーの方に戻ってくる。

 

「ダメだよ、こたちゃん。後輩に面倒なことを丸投げしちゃ。後進を育てる意味で仕事を振るのはいいよ。淳くんは『才能がある』って栄治先輩が褒めていたから」

「ぅええええ!? え、栄治様が!?」

「そうそう。淳くんは”芸能人の才能”があるって言っていたよ。芸能の才能がある人が、芸能をやるのは珍しいって。声変りが終わればきっとみんなを笑顔にできるアイドルになれるって、僕もそう思うよ」

「え、う、え、う」

 

 なんてことを言うのだろうか。

 淳にとっての”神”である神野栄治にも、綾城珀にもそんな手放しで褒められたらどうしていいのかわからない。

 顔に集まる熱。

 絶対に顔が真っ赤になっている。

 

「も、もう! そんなに褒めないでください! 俺、まだ星光騎士団のメンバーとしてなんにも貢献してませんよ! お披露目も明日ですけれど、相変わらず歌えませんし……」

「声変わりが終わるの楽しみだね~」

「チッ! 珀先輩や神野先輩に褒められたからって調子に乗らないでよね!」

「あううう……」

 

 先程まで機嫌のよかった宇月が大好きな綾城と尊敬している神野に淳が褒めそやされているのを気に入らず、ツンツンモードで刺々しく睨みつけて叫ぶ。

 淳だってまさかここまで評価されているなんて思わなかった。

 ただのドルオタなのに。

 

「言うて珀ちゃん、もうすぐプロとして初めての本番ライブやろ? 余裕やなぁ」

「場数は三年間東雲芸能科で踏んできたし、ミスしてもカバーしてくれる人たちと一緒だし。むしろ拳志郎くんが心配かなぁ。彼、アイドル経験してきた人じゃないから。まあでも、スポーツマンだから大丈夫でしょう。むしろプレッシャーには一番強そう」

「わしらは本来行かんでもええんやろけど、ライブオーディションは絶対観に行くで」

「ふふ、その前に明日の淳ちゃんたちでしょ? 期待してるよ」

 

 二、三年が淳たち一年を振り返る。

 明日、東雲学院芸能科ファンや星光騎士団ファンに、お披露目だ。



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