東雲能科GP、優勝グループ発表
「お! そんな話してたらいよいよ優勝グループが決まったらしいぜ!」
麻野がスタッフの合図に顔を上げて大型ステージを指差す。
わあ、と客席から声が上がり、淳たちも出番が近づいて顔を見合わせて頷き合う。
この結果で個人ランキングによるコラボユニットメンバーも大きく変わる。
これまでの成績からしてColorが優勢だろうが、やはり伝統的な和風ユニットは根強いファンがいるのでここで一気に逆転するのも十分考えられた。
「ジュンジュン的にどっちが来ると思う?」
「うーん、やっぱり花鳥風月かな。三大大手グループの次に古参ファンが多いから」
「え、そういうものか?」
「うん。というか――根本的な実力差がやっぱりここに来て出てきたよね」
「「?」」
顔を見合わせる魁星と周。
だが客席を見て、と淳が促すと一目瞭然。
揺れるサイリウムはピンク。
花鳥風月のグループカラーだ。
ちらちらと見える推しうちわもピンクが多い。
今までステージばかり見ていて気づかなかったのだろう、魁星と周から「あ……」という声が漏れる。
「あと、花鳥風月のパフォーマンスが普通にハイレベル。三人ともダンスが激しいわけではないんだけど、その分歌唱力が飛び抜けている。和風ロック嫌いな人いないし?」
「めっちゃわかる。曲全部よかった」
「確かに」
こくり、と素直に頷く魁星と周。
花鳥風月、伝統的な和風曲に加えて和風ロック調の曲が増えている。
望月が和風ロック好きだったから、らしい。
しかも全部いい曲。
作詞作曲は雛森日織。
有償で依頼していたとのこと。
「――――さあ! 映えある第一回、東雲芸能科グランプリ、優勝グループは……!」
茅原が上手く溜めて――スポットライトが照らされたのは――。
「花鳥風月ー!」
「「「わああああ!」」」
わかりやすくガクーーーっと項垂れるColor、冬紋。
しかしそれ以外のメンバーはすぐに拍手して花鳥風月を賞賛した。
ただ、未だ花鳥風月メンバーは呆然。
序盤、独走状態だったColorを逆転しての優勝。
これはある意味最高に気持ちいい。
もちろんその裏には、花鳥風月を何年も支えてきたファンの情熱、愛がある。
それを痛感したから、三人とも涙を滲ませたのだろう。
「おめでとうー!」
「おめでとうございます! リーダーの桃花鳥 先輩、優勝です! 一言お願いします!」
「あ……ああ……その……感謝の言葉しか、ない。ありがとう、応援してくれて……みんな、本当に……ありがとう……」
「望月先輩、一言お願いします!」
「信じられない。まさか勝てると思ってなかった。Colorの勢いがすごかったし、夏山は去年の二年生の『トップ4』だったし……。本当に? 本当に? ……みんな、本当に……ありがとう!」
「新座くん」
「あ、あっ……ありがとうございます!」
双子がちゃんと三人にインタビューをしていく。
拍手が鳴り止まない。
淳もパネルを持っていなかったら全力で叫びそう。
「おら、どうよ、夏山。負けちまったけど」
「いや! 仕方ないよ! 客席を最初に見た時からやっぱり花鳥風月は強いなー、って思っていたもん。でも、昨日までの二日間のリードでなんとかならないかなー、とか思ってたけど……いや! でも、今日の、この最後のステージまで応援し続けてくれたみんなー! ありがとうー! 一歩届かなかったけどー! 俺、やり切った! みんなもやり切ったよねー!」
わあああ、と客席からも歓声が上がる。
両手をぶんぶんと振ってその歓声に応える夏山。
「ま、夏山は個人ランキングの方でコラボユニット入り決まってるしな」
「そうそう! そっちも頑張るよー! コラボユニットも応援してほしーなーーー! ほら、個人ランキングだと桃花鳥 くんが除外になっちゃうから、翡翠と俺がコラボユニットに入るもんねー!」
「そうじゃん! 翡翠、頑張ってけろ!」
「目立ちたくない……」
「「お前は〜」」
スッと思い切り顔を背ける冬紋。
呆れた顔をする睦秋と初春。
冬紋、家がヤのつく家だったことがずっと後ろ暗いから、あまり目立ちたがらない。
たが、四人の中では飛び抜けて顔がいい。
顔だけで選ばれがちなので、余計に自分の内面に自信がないのだろう。
そういうところは後藤と通じるものがある。
「そいじゃあ、ここで優勝グループの花鳥風月にトロフィーと優勝賞品の贈呈だぜぇーい!」
と、麻野が叫ぶ。
淳たちがパネルとトロフィーを持って出ていく。
最初に魁星が小さなトロフィーを望月に手渡す。
次に周が最初から予定されていた景品その1の書かれたパネルAを新座に渡した。
景品その1は『校内活動費100万円』。
そして淳が鏡音が頑張って作ってくれた、景品その2、パネルBを桃花鳥 に贈る。
「これは?」
「これは昨日急遽決まった例のとんでもねぇ追加ご褒美だぜ。なぁ? 宇月?」
「そうだよー。咲良ちゃん、さあさあ、布を外してパネルを掲げてー」
と、茅原と宇月が布を取るよう桃花鳥 に指示をする。
桃花鳥 も不思議そうに首を傾げつつ布を外した。
文字が見えると全員が目を見開く。
パネルBが顕になると、茅原と麻野が「っつーわけでぇ!」と拳を掲げた。
「東雲芸能科GP、優勝グループは! 今年のIG夏の陣本戦出場権が贈呈だぜえーーーー!」
会場が振動するほどの大きな歓声。
宇月が「咲良ちゃん、掲げて掲げて」とパネルを掲げるように言うのだが、桃花鳥 はそのままへなへなと座り込んでしまった。
完全に腰が抜けている。
「み、美桜……こんな……」
「にゃはは。まあ、そういうわけで、スケジュール的にコラボユニットには出られないってことぉ。歓迎するよぉ、花鳥風月! 三大大手グループと一緒に夏を満喫しよぉ〜ねぇ〜?」






