これは対宇月兵器
「以上、『花鳥風月』のパフォーマンスおわり! これにて長いと感じた三日の東雲芸能科GPの全パフォーマンスが終了したってことだな。現在集計中だから、しばらくはトークタイムと洒落込もうか」
「はいはーい! ここはゲストに舞台裏にいる星光騎士団の人たちを呼んできたらいいんじゃないですかね? ほら、星光騎士団のドルオタ代表の音無淳くんとか、今日運営お手伝いで件の鏡音円くんも登校していますから、呼んだら来てくれるかも?」
「そうそうー! 結構話を聞いてみたい人多いんじゃない〜? 個人投票の方に、参加してないのに鏡音くんに票が入っていましたし。会いたい人、いるかなー?」
双陽月の太陽と月光が客席に向かって耳を傾ける。
すると「会いたーい!」という声が上がった。
太陽と月光が声を揃えて「うんうん、じゃあ交渉してきますねー」と双子は舞台袖に消える。
「「言っちゃった♡」」
と、待機していた星光騎士団メンバーの前にてへぺろの双子に困惑の鏡音。
「いえ……あの……先輩たちと相談して、今月の月末の定期ライブで復帰、ということになっていたので……」
「そう言わずにー! お客さんも会いたいって言ってたし!」
「……宇月先輩……」
双子にグイグイと近づかれ、宇月に助けを求める鏡音。
実に正しい判断だ。
この学院で多分、宇月が一番強い。
だが、それは味方の時。
「うーん、でもお客さんが会いたいって言っているなら、応えてあげるのがアイドルでしょぉ?」
「えええ……」
まあ、宇月の企画したイベントなので、お客さんの満足度をあげる方を取った模様。
星光騎士団二年生ズはそれぞれ景品パネルと小さなトロフィーを持っているので、今出てていくのは少し難しい。
特に景品パネルBは鏡音が作った、追加の景品が書かれている。
最後まで隠し通さないとサプライズにはならない。
ちなみにその景品パネルBを持つのは淳だ。
結果が出るまでは、ステージに上がれないと思っている。
なので鏡音が助けを求めるように淳たちを見上げてきたのにも、「俺たちは難しいかなぁ、トロフィーとパネルを守っていないといけないから」と困った笑顔で答えるしかない。
そして困った鏡音は、星光騎士団三年生たちの方を見る。
「ひ、一人では嫌なので、宇月先輩が一緒に来てほしいです」
「グッ……!」
宇月がいびらず、素直に可愛がっている一年生の後輩にそんなことを裾を引っ張られながらお願いされたら――そりゃあ宇月も「え、うっ、も、もぉ〜〜〜〜……しょ、しょうがないなぁ」と言っちゃう。
にやけそうな顔を必死に抑えつつ、ほっぺ染めながら仕方なさそう〜な声色で。
微笑ましそうにその姿を眺める後藤と、無言で目を閉じてその空気を味わう淳。
ドルオタの浸る姿に魁星と周が無表情になるのを双子は眺めつつ、とりあえず任務達成。
「あの、では、いってきます」
「「「行ってらっしゃい〜」」」
二年生ズと後藤が二人をステージに送る。
スン……となった周は「円くんにはこれから宇月先輩をお任せしましょうか」と呟く。
確かに怒り狂った宇月を止められるのは、鏡音しかいないかもしれない。
淳がパネルBを包む布を外れないよう慎重にステージ横に移動して、ステージを眺める。
「ど、どうも……」
「ちっすちっすぅー! 星光騎士団団長の宇月美桜だよぉ〜。皆様にご所望の鏡音円をお届けぇ♡」
マイク越しに控えめな挨拶をする鏡音と、いつもの可愛い宇月美桜を存分に差し出す宇月。
昼間ステージでドスの効いた声でWalhallaを脅した姿とは、とても同一人物とは思えない。
「あん? なんで宇月までついてきたんだよ?」
「それが聞いてくださいよー、舞台裏で鏡音くんをお誘いしたら『宇月先輩、一緒に来て〜』って鏡音くんがおねだりしてたんですよ〜」
「ね? 宇月先輩」
太陽と月光に話を振られた宇月と鏡音。
途端に鏡音は恥ずかしそうに目を背けるけれど、宇月は口許を緩める。
「そ、そうねー。まあ、デビューして間もない内から自主的に自粛しちゃって、人前に出るのがちょっと不安〜って感じだったからしょーがないしょーがない。でも〜、ドカてんは今日本当にただお手伝いに出てきただけだから、本格的な復帰は今月の定期ライブの予定だったの。みんな、もう少し待っててあげてねぇ?」
ワア、と歓声が上がる。
宇月が代わりに鏡音をフォローして、本来のMC、茅原と麻野を見た。
集計の結果はまだらしい。
「まあけど、今回の東雲芸能科GP個人ランキングには鏡音の名前も入ってんだよなぁ。星光騎士団、魔王軍、勇士隊はグループも個人も投票不可。票が入っても無効ってことになってんのに」
「その件に関してはご存じでしたかー?」
月光にマイクを向けられた鏡音は、一瞬驚いた表情。
けれどすぐにいつもの無表情に戻り、「はい。大変驚いていると同時に、こんな新参者の自分を応援してくださっている方がたくさんいることを実感して大変光栄かつ嬉しく思います」とお手本のような回答をかます。
新人とは思えない圧倒的定型文回答に、麻野が目をまんまるくしている。
……麻野の知性ではちょっと難しかった可能性もなきにしもあらず。
「ですが、今回は星光騎士団も除外対象となっておりますので、自分の票は無効です。大変ありがたく思っておりますが、どうかお許しください」
「うんうん。でも気持ちはちゃんと届いているからねぇ?」
「はい。本当にありがたく思っています。……その、ライブの練習も頑張ります。緊張で本来の実力を発揮できないかったのですが、SBOの中でライブをしたりして、ライブ慣れしていきたいと思いますので……」
「お、じゃあ今夜あたりSBOの中でライブしよっか」
「え! …………いえ、はい。や、やります」
「おっけー! みんな、聞いたー? SBOにアカウント持ってる人は絶対見に来てねぇ〜! フルメンバーは難しいと思うけどぉ、僕とドカてんは絶対ライブしに行くからー」
わあー! とまた客席から歓声が上がる。
それを聞いて周と魁星がちらりと淳を見た。
絶望に染まった表情。
「淳、今日もしかしてこのあとレッスンですか?」
「ログイン……できない……今日、このあと21時までレッスン……」
「さ、撮影しておきますね」
「周ぇ! ありがとう、周ぇ!」






