ドルオタ特有の早口でお送りしています
「〜〜〜♪」
決勝戦先行はColor。
四人とも歌唱力は十分。
ダンスも幼馴染同士なだけあり、綺麗に揃っていて練習量がうかがえる。
アイドルの王道ど真ん中、という楽曲を、ザ・アイドルといったアイドル、夏山真紅がセンターで歌うので、ダイレクトにくるものがある。
「マジ顔がいい……」
「音無先輩ってアイドルならなんでも好きなんですね……?」
鏡音に気づかれてしまった。
一応「な、なんでもじゃないよ? 俺は基本的に東雲学院芸能科箱推しなだけで」と一応言い訳する。
学生セミプロは一通り通ってきたけれど、やはり思い入れは東雲学院芸能科。
「淳、カメラを回しますから語ってください」
「オッケー。…………いや、やはりさすが三年生の強豪、Colorのパフォーマンスですね。東雲芸能科GP決勝戦な駒を進めただけはあります。あ、みなさんはColorのことをどのくらいご存じでしょうか? ざっくりメンバー紹介をいたしましょうか? Colorは全員三年生で結成されているグループです。メンバーは四人。初春珊瑚先輩、睦秋琥珀先輩、冬紋翡翠先輩、そしてリーダーは夏山真紅先輩! さて、ここで豆知識です。Colorの四名は小学校からの幼馴染四人組が、リーダーの夏山先輩が主導で結成されたそうです。実は睦秋琥珀先輩と冬紋翡翠先輩は一年生の頃に普通科に転科したいと分裂しかけたことがあるのですが、その時も夏山先輩がお二人を説得してアイドルを続けることになったそうですよ。夏山真紅先輩はアイドルをやるに至り、どうしてこんなにアイドルへ熱量があるのですか、という質問に対して『珊瑚も琥珀も翡翠も俺とは違った魅力がすっっっごくて、もっといろんな人に三人を愛してほしかった。俺の幼馴染サイコー! って自慢したかった。だから四人じゃなきゃダメだった』と答えており、ColorがColorたる所以もまた、あの四人なんだからこそなのでしょう」
うわあ、と鏡音がドン引きした表情。
それでもまだまだ止まらないのが東雲学院芸能科箱推し。
「次に、決勝戦Colorのお相手になる花鳥風月についても説明しましょう! まず、メンバーの紹介です。二年生の新座優星くん。三年生の望月丞玖先輩、リーダーは同じく三年生の桃花鳥咲良先輩です。桃花鳥先輩の苗字は非常に珍しく、三文字で二文字呼びなんです。可愛い漢字なので、公式ホームページから確認してみてください。絶対一発で読めないですよ。さて、ここで豆知識です。花鳥風月は東雲学院芸能科が設立された十年前に結成された三大大手グループ、星光騎士団、魔王軍、勇士隊に次ぐ歴史を持つ古参グループの一つです。初代は楓月瑛太先輩で、コンセプトは『和の伝統を受け継いでいく、重厚なアイドル』でした。そのコンセプト通りに和にまつわる特技がないと加入ができないという、ちょっと加入が難しいグループなんですよ。しかし、逆にいうとその加入条件を突破している人たちだけで構成されているので花鳥風月は非常にパフォーマンス能力が高いです。桃花鳥 先輩は幼い頃から日本舞踊を嗜んでおられ、望月先輩は日本創作折り紙コンテスト優勝経験者。なにそれって思うかもしれませんが、詳細を調べてみたら『え? これ折り紙?』という作品が出てきて度肝を抜かれること間違いなしなので、ぜひググってみてください。ビビりますよ〜。そして俺たちと同じ学年の新座くんですが、彼は古典文学を嗜んでいて平安時代の物語に大変造詣が深い人です。花鳥風月の歌詞全般を去年の加入以降担当していて、とても綺麗な言葉を使う人なのでぜひ歌詞にも注目してみてくださいね」
セリフ、長……と、魁星が呟く。
カメラが回っているので、別に構わないのだが情報量がものすごい。
周が「オッケーですよ」と合図して撮影を止める。
動画は後日編集するのだが、多分ここはノーカットで使われることだろう。
「本当にお詳しいんですね」
「ドカてん、ジュンジュンに東雲学院の生徒のプロフィール聞いてみな。全自動で全部教えてくれるよ」
「え……? い、いえ、オレはそこまで気になる先輩とかいないので……」
「今年の一年生のプロフィールも全員覚えたよ〜」
「なんという暗記力の無駄遣い……」
「む、無駄遣いじゃないよぉ!?」
鏡音、時々辛辣。
「それにしても、なかなか面白い企画考えたもんだな」
「うわぁっ……! あ……、上総先輩」
のし、と淳の肩にのしかかってきたのは石動。
勇士隊の話し合いは終わったらしい。
「勇士隊、大丈夫ですか?」
「え、知らね。俺卒業生だもん」
「ええ……」
「蓮名を丸め込むくらいのことしかしてねぇなぁ」
「ええ……」
石動であっても蓮名を制御しきれないのが。
丸め込む……ある程度の進路方向に誘導はできたらしいが、なんという暴走系ヒーロー。
「そういえば、桃花鳥 先輩って上総先輩のファンだったらしいですよ。俺、さっき初めて知りました」
「とき? 誰?」
「花鳥風月の」
「ああ、織部の後輩。……そういえば一時期めちゃくちゃ監視されていたな」
監視。
そう受け取られていたのか。
「てっきり実家の回し者なのかと思ってた。違うの?」
「ファンだそうですよ。上総先輩が日本舞踊を嗜んでおられたのがパフォーマンスを見てわかったらしくて、上総先輩のそういうパフォーマンスの大ファンみたいでした」
「舞踊なぁ……別に好きでやってたわけじゃないんだけど……」
むしろ嫌そうな顔をする。
けれど、淳も一年生の初期の石動のパフォーマンスは優美という言葉がぴったりで好きだ。
「熱烈でしたよ。サインほしいみたいです」
「もう帰る」
「え……」
興味を失ったかのように、淳の肩から腕を外して舞台裏の出入り口から出ていってしまう。
なにが気に入らなかったのか。
相変わらず猫のような人だ。






