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ガチ目の説教


「え、ええと……」


 東雲芸能科GP終盤。

 勝ち残ったのは三年生四人の『Color(カラー)』VS三年生二人二年生一人の『花鳥風月(かちょうふうげつ)』。

 Color(カラー)のメンバーは夏山真紅(なつやましんく)初春珊瑚(ういはるさんご)睦秋琥珀(ともあきこはく)冬紋翡翠(とうもんしんく)

 花鳥風月は桃花鳥咲良(ときさくら)望月丞玖(もちづきたすく)新座優星(にいざゆうせい)

 そんなColor(カラー)の四人と花鳥風月のメンバーが困惑の表情で舞台裏に佇む。

 同じくMCの茅原と麻野、急遽MCサポートに参戦した『双陽月(そうようげつ)』の桜屋敷太陽(さくらやしきたいよう)桜屋敷月光(さくらやしきげっこう)、景品贈呈のために準備を進めていた星光騎士団フルメンバーも呆れた顔でそれを見ていた。


「でも……でも……」

「でもじゃないの。ダメなものはダメなの。お前、君主になったんだから下々の者をちゃんと導かないとダメだろう? 独りよがりで遊びたいのなら、責任を果たさないとダメだろう? 事務系の仕事も全部千景に丸投げしてるっていうじゃねぇのお前。ダメよ、千景、いくら優秀っつっても二年生なんだからさぁ。あのな、好きなことをする自由には当然責任も伴うんだよ。もう一回説明する?」

「う、ううあ……」


 石動に正座で怒られている勇士隊の君主、蓮名とその腹心、苗村。

 昼からずっとここで怒られているらしい。


「だって、事務仕事とかよくわからないんです!」

「いっぱい教えたのになぁ」


 天井を仰ぐ石動。

 微妙な顔でアイコンタクトする宇月と淳。

 引き継ぎが上手くできていない、とは言っていたがここまでダメか。


「苗村、お前もダメかぁ?」

「…………っ」

「はあ……」


 頭を抱える石動。

 一応卒業生なので、グループ権限はない。

 ついに匙を投げたのか、スマホぽちぽちして勇士隊の二年生たちを呼び出した。

 別室で待機していた勇士隊の二年生が、勇士隊の顧問倉治(くらじ)先生も参加。


「石動、わざわざ来てくれてすまんな。俺の言うことも聞かんからな、こいつら」

「いやぁ、まあ……俺の言うことも一時的には聞くんですけどね。とりあえずこのアホコンビは事務仕事一般がダメってことみたいです。千景に全部丸投げしたい、戦隊モノっぽいことをやりたい、っていうのを譲るつもりはないのでここからは俺の提案なのですが――別室でいいです?」

「「ええ……」」


 ただ今までの長いお説教により他のグループの邪魔はしないこと、今回のように乱入は事前に連絡して相手の許可を取る、と約束させた。

 以後、これだけは守ると他のグループに約束したので宇月と茅原も証人として頷いたがここから先は勇士隊内の事情。

 正座で足が痺れた蓮名と苗村を左右から抱え上げ、勇士隊関係者は控え室に移動して行った。

 疲れ果てた二年生の顔と、倉治先生の険しい表情。

 どうなるのかはわからないが、頑なに事務仕事をやりたくないのと戦隊モノっぽいことをやる、というところは譲らなさそうなのでその辺りを改めて詰めることだろう。


「石動先輩まで連れ出してもまだアレか」

「つーか、石動先輩なんで来たんだ? 観にきてたのか?」

「ううん、ウチのナッシーが事務所同じだから呼び出したの」

「マジかよ、お前、旭先輩たちにも気に入られていたし、すげぇな」

「あ、あの石動先輩を連れ出せるとかヤベェやつだな、テメェ」

「ええ……?」


 茅原と麻野にドン引きされた。

 なんでだ。


「でも、思ったよりも石動先輩って優しそうだったな〜」

「どこが!? 二時間くらいここで正座させてお説教させてたべさ!? 懇々と!」

「口調は優しかったけどやってることエグいって……」

「あ……」


 Color(カラー)夏山がアホなことを言うので、初春と睦秋に突っ込まれる。

 確かに淡々と懇々とお説教をしていて、口調こそ優しかったが二時間人の行き交うステージ裏でお説教。

 宇月も「普通に邪魔だしねぇ」と一刀両断。

 ただ、アホの蓮名にさっきの二つを約束させた功績はでかい。

 そこだけは満場一致で「さすが石動先輩」と三年生たちが声を揃えた。


「どちらにしても、決勝戦に邪魔は入らなさそうだな」

「そうだな! 正々堂々、全力を尽くそうな! 桃花鳥(とき)!」

「フン」


 ぎろり、と夏山を睨みつける桃花鳥(とき)

 さすが三年生のクールビューティ、対応が塩。

 魁星がビビりながら「桃花鳥(とき) 先輩って、なんか結構、その……こ、怖いんですかね?」と後藤に聞く。

 後藤にはふるふる首を横振られたが、それはどういう意味なのだろうか。


「僕、クラス違うけど咲良ちゃん、シンプルに人見知りキャラだよ。夏山たちはクラス違うから、話しかけてほしくないだけかなぁ、アレは」

「(コクコク)」

「「「人見知り」」」


 後藤も極度の人間恐怖症なので、桃花鳥(とき) とは通じるものがあるらしい。

 コクコクと深く頷くので、人見知りはガチなのだろう。

 宇月には「ウチの学年、ナッシーたちの学年みたいにコラボユニットやってないからクラスや部活違うと交流ほとんどないからねぇ」と言われてしまう。

 なるほど?


「宇月先輩は桃花鳥(とき) 先輩と交流があるんですか?」

「咲良ちゃん可愛いところがたくさんあるんだよぉ。僕としてはそういうところを前に出していけば、Color(カラー)なんて目じゃないと思うんだけど……今回期待してたんだけどねぇ〜」


 とのこと。

 そんなことを言われたらドルオタは大変興味を持ってしまう。


「ど、どんなところが可愛いんですかね?」

「流行のスイーツとか前にすると目キラキラさせて『ほあ……』とか言って、360度鑑賞してから幸せそうに食べるところとか〜、猫大好きで猫の前だと猫語使っちゃうところとか〜、ナッシーみたいにアイドル大好きでアイドルグッズ集めているところとか〜」

「美桜!」


 顔を真っ赤にした桃花鳥(とき) がズンズン凄い勢いで近づいてきて宇月の口を手で覆う。

 意外である。

 お互いを下の名前で呼び合うほど仲がよかったのか、この二人。



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