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東雲芸能科GP、最終日(1)


「じゃじゃーーーん! 星光騎士団団長、宇月美桜ちゃんだよぉー! 本日東雲芸能科GP最終日! みんなぁー、お気に入りアイドルへの投票も今日までだよぉ〜! 中間発表は上位四名を除き野外大型ステージにて確認できるから、推しが入ってねぇーーー! って人はSNSで拡散して応援してあげてねぇー」

「改めて言うけど、俺たち『魔王軍』と宇月の『星光騎士団』、そしてもう一つの古参『勇士隊』は投票対象外だから気ぃつけてくれよな!」

「ってわけで今日、最終日も『魔王軍』魔王、茅原一将(ちかはかずまさ)と俺様! 麻野(あさの)ルイが審判及びMCを務めるぜ!」


 わあ、と観客席から声が上がる。

 その様子を眺めつつ、淳は魁星、周、鏡音とともに野外大型ステージの場所から離れて練習棟一階のガーデンスペースに向かう。

 今日、とんでもない情報が入ってしまい、淳たちはその対応に追われることとなった。

 なお、柳は本日も親とマネージャーの反対により自宅待機継続。

 近所で実父の目撃情報が入ってしまったため、引越しを検討し始めたそうな。

 年度が変わって一ヶ月で引っ越しになるとは可哀想に。

 引越しで逃げるなんて、と母親は反対しているらしいが、マネージャーが説得して引っ越し先を探しているというから仕方ない。

 確かに変態からは逃げるが勝ち。

 そんな事情もあり、柳の方が登校時期の見通しが立たなくなっている。


「あ、いたいた、千景くーん」

「ひえ! あ……お、音無くん……おはようございます……」

「おはよう〜。大丈夫? 顔、すごく疲れているけど……」

「あ、あはは……」


 空笑いする千景の姿に淳たちはゾッとした。

 あのネガティブの権化のような千景が、愛想笑いした、だと?

 一言も謝ることなく、空笑い、だと?

 思わず淳が隣にいた他の勇士隊二年――日守と熊田、榎島(えじま)の方を見る。

 視線がかち合った瞬間日守が噴火した。


「なんにも大丈夫じゃねぇよ! 勇士隊の倉庫から花火がごっそりなくなってたんやで! 絶対“なにか”やる気満々やないけ!」

「ハァーーーーーーーッッッ……」

「ワシらが先輩たちを見張っとったつもりやったのに、まんまと花火を盗まれてもうた。悪いとは思うけ、ワシらも見回り協力する」


 深い溜息を吐く熊田と、眉間を揉み解す榎島。

 鏡音だけ話に置いてけぼり。

 くいくい、と周の裾を引いて、小声で「なくなった花火を探すということですか?」と聞く。

 そうか、今年の一年生は……知らないんだな、と振り返る先輩たち。

 しかし、目が泳ぐ先輩たち。

 もうこの時点で嫌な予感がする鏡音。


「…………。え!? あ、かか、かかかかかか鏡音円(かがねまどか)くんんん!?」

「え、あ、そうだ。うん、自粛中なんだけど、東雲芸能科GP、星光騎士団は雑務だから手伝ってもらおうと思って連れてきたの。そっか、初対面だよね。鏡音くん、こちら『勇士隊』二年生の御上千景(みかみちかげ)くんと日守風雅(ひもりふうが)くん、熊田芳野(くまだよしの)くん、榎島葉(えじまよう)くん。で、この子は星光騎士団一年生の鏡音円くんです」

「初めまして、鏡音円と申します」

「ひゃあーーーー! 鏡音円くんですよ、鏡音円くん! 本物! 本当ですよ、風雅くん!」

「いだだだだだだた!?」


 バシバシバシバシ、ものすごい勢いで日守の腕を叩き続けて大興奮の千景。

 しかしさすが人見知り、日守の後ろに隠れながらめちゃくちゃ小声。

 だが興奮冷めやらぬ。


「誰やねん、知らんがな! なんか入学早々炎上したやつだろ!?」

「違いますよ! 十二歳でプロゲーマーチームにスカウトされた某FPSゲーム世界ランキング最高三位、現世界ランキング十五位、ワイチューブゲーム配信チャンネル登録者数59万人突破の大人気配信者ですよ! 今回の暴力騒動も柳響くんを守ったことによる正当防衛ということで、ますます人気が急上昇中の! すごいー、本物ですよ! ひゃあああぁ!」

「痛い痛い痛い! 殴るのやめーや!」


 千景、憩星矢(いこいせいや)同担日守に対してずいぶん打ち解けた模様。

 殴るのをやめろ、と言われて千景が日守の右腕に腕を回してぐりぐり頭を押しつけてまだはしゃぐ。


「はしゃぐ千景くん可愛いね」

「そうですか……」


 ムッとしている魁星を横目で見ながら周がニッコニコの淳に目を細める。

 もう諦めている顔だ。

 そんな先輩たちの様子に鏡音の顔色がだんだん悪くなっていく。

 まあ、先輩たちの知らなかった面を見たら……というかドン引きされない方がおかしいことに気がつかない程度には淳たちも染まっている。


「はあはあ……………………サインください」

「へ……え?」

「御上くんへはサインをして差し上げていいと思いますよ。その……淳と同類なので」

「え、ええと……はい」

「ですが、校則でサインと写真は禁止されていますから、悪用しない淳と御上くんだけ特別です。これ以降はお断りしてくださいね」

「わかりました」


 周がいい含めて、鏡音は日守の後ろに隠れる千景から差し出されたチェキにサインを書く。

 なお、そのチェキも発売したての東雲芸能科公式鏡音グッズだ。

 サンプルはもらっているだろうが、購入して持っている人を初めて見た鏡音は最初、これにサインするんですか、と周を振り返る。

 周にこくり、と頷かれたので困惑の拭えないまま鏡音はサインをさらりと書いて千景へ返却。


「ありがとうございます、ありがとうございますっ!」

「い、いえ……自分なんかのサインでよろしければ……」

「なにをおっしゃるんですか! どうか鏡音くんのサインは安売りしないでください! 世界でたった一つのサイン入りチェキ……」

「は、はあ……」


 うっとりする千景に、やはり困惑しまくる鏡音。

 そうか、ドルオタとは初遭遇か。

 淳はこれまでしっかりとした“先輩”の皮をかぶっていたから、多分まだ淳が千景と同類だとわかっていない。



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