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ストーカーLARA


「え!? どういうこと!? 身バレしたってこと!?」

「多分?」

「なにがどうしてバレたの?」

「それがよくわからなくて。身バレしないためのキャラクターなので、発言には気をつけていたので。……まさかプレイスタイルでバレたとはとても思えないのですが」


 目を伏せる鏡音。

 確かに、一応プロの鏡音は幼い頃からオンラインゲーム内での発言は気をつけていたはず。

 それでもプレイスタイルを見て鏡音とわかるのだとしたら、それは立派な鏡音ファン……いや、マニア。

 もしくは相当手練のプロゲーマー。

 加えて現実の『鏡音円』にLARAは興味がないはず。

 LARAが興味のある相手は、智子とSBO内の鏡音……『マギ』だ。


「いや!」

「え?」


 だが、淳はハッとした。

 ららのストーカーは智子が小学生時代から。

 年々なんとなく、気持ち悪さが増している。

 その執着心、執念は、決して舐めてかかれるものではない。


「多分、“逆”だと思う」

「逆? とは?」

「前に鏡音くん、智子を助けてくれたことがあったでしょう?」

「ええと……助けたというか……」


 えっ、どういうこと? と食いつく先輩ズ。

 そりゃあ淳の妹――あの美少女を“助けた”なんてラブコメの始まりみたいな出来事、詳しく知りたくなっちゃうだろう。

 鏡音は困ったように「先に登校させただけです」と困り顔。


「でもそれがきっかけになっていると思う。うちの妹、小学生の頃に変質者に悪戯されかけて、それを神野栄治様に助けてもらってからというもの東雲学院芸能科箱推し、星光騎士団箱推しになったんだけど……」

「え? あ、は、はあ……え? 大丈夫だったんですか?」

「うん。神野栄治様が華麗に助けてくれて、本当にかっこよかった」

「なるほど……?」


 その時の話はまた今度、と淳が言うので目を逸らす先輩ズ。

 先輩たちの様子にドルオタの気配を察する鏡音。

 その話、間違いなく長くなる。


「というわけで、うちの妹は星光騎士団が大好き」

「え? は、はい」

「星光騎士団のメンバーになった鏡音くんは入学当時から『推すかも』って思っていたところ、大好きな星光騎士団に入団したからほぼ『推し確』になってたらしいよ。で、そんな鏡音くんがストーカーのららちゃんから庇ってもらったら――」


 神妙な面持ちになる一同。

 まさか、と周が声を漏らす。


「綾城先輩が卒業して割とガチめに次の推しをガチ推しするって言ってたから、鏡音くんをガチ推しするって言ってた」

「「「「………………え?」」」」

「え?」


 変な顔をされる。

 なにもおかしなことを言っていないつもりのドルオタ。

 すごく真顔で真面目に言ったのに、思っていた反応と違う。


「えーと、ジュンジュン、それはあのさ……智子ちゃんがドカてんに恋しちゃったり……は?」

「智子って筋骨隆々なマッチョが好きだから、鏡音くんみたいなヒョロガリは恋愛対象にはならないんだよね。あくまでアイドルとして推し活対象」

「ア、ソウナンダー……」


 首を横に振る淳に、気の抜けた返事と力の抜ける魁星。

 智子の恋愛対象は初めて聞いたので、びっくりさせてしまったのかも。

 鏡音も恋愛対象にされたわけではないと知って、胸を撫で下ろす。


「で、その『チコの最推し』に興味を持って調べたんだと思う。もしかしたらまだ確信まではないかもしれないけれど……」

「かなり確信には迫っているってとこ?」

「はい。なんていうか……そういう感じの子なんですよね。鏡音くん、今すぐ『マギ』は名前もアバターも変えてフレ解して逃げた方がいいかも」

「きょ、今日中にそうします」


 もう、怖い。

 血の気の引いた鏡音はがっくり項垂れて「ちょっと気に入っていたんですけどね」と呟きつつ「一応活動拠点も移します」と言う。

 それが安全だろう。

 オープンワールドなので、フレ解してしまえば追うのはかなり難しいはずだ。

 もっと高難易度なダンジョン近くの村か町に拠点を移せば、レベルの低いLARAはついてこれないはずである。


「でもさー、俺たちがLARAちゃんってプレイヤーに会った時、かなりドカてんのこと気に入ってたよね? その場合、智子ちゃんとの仲を邪魔したドカてんとげーむないで惚れ込んでたマギが同一人物だったってことじゃん? どうすんのかな?」


 と、魁星。

 確かに、マギに対してはあからさまなぐらいにアピールしていた。

 だが所詮はゲームだ。

 そもそもLARAはおそらく智子を捜してSBOを始めたと思われる。

 ゲーム内の智子を捜すために、高レベルプレイヤーを味方にしたかっただけかもしれない。

 ということは、やはり手段でしかない鏡音のことは『智子とあたしを引き裂いた男』でしかないのかも?


「それは俺にもわからないけれど、あの子は嫌いだから相手を害するとか、そういうことをするような子じゃないよ。全部を“好き”に極振りしていて、他は全部“無関心”なんだ。で、自分の“好き”には自分の理想を押しつける……っていうか……?」

「あ、ああ……そういうタイプの子。……いるねぇ」


 と呆れ顔の宇月。

 好きなことに夢中になりすぎて、他のことは全部興味なし。

 自分の“好き”に一直線だからこそ飛び抜けた能力を持つ人間は、芸能界で“珍獣”として重宝される。

 そういう人間はだいたい、自分の“好き”以外に興味がない。

 だが、ららの場合は『理想の押しつけ』というもっとも厄介な属性がついている。


「もしかしたら鏡音くんにも『理想』を押しつけられるかもね」

「ええ……」

「まあ、話してわかるタイプじゃないからやっぱり逃げるが勝ちだと思う」


 ただ、逃げると追われるだけで。



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