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ツルカミユズ

 

「しゃがんで!」

「!」

 

 急にバアルが頭を下げ、しゃがむ。

 剣を刀が弾く音。

 二人の美少女プレイヤーが、二人の剣士とバアルの間に現れた。

 

「~~~♪」

 

 その後ろから[始まりの歌]が歌われ始める。

 Aメロだけでなく、フルだ。

 それだけで少なくともレベル10あるプレイヤーとわかる。

 その[始まりの歌]を歌うのは、シーナとカイセイの前に立ったピンク色の髪の美少女プレイヤー。

 ピンクの髪のプレイヤー、頭上に出る名前は『エルミー』。

 手に持つのは大斧。

 

「「~~~~♪」」

 

 バアルの前に立った二人の美少女。

 片方はエイナ。

 もう一人の刀使いは『ハルナ』

 このハルナが、プレイヤーキラーの剣士から剣を一瞬で弾き飛ばした。

 二人は歌声を響かせながら追加バフをかけ合い、慌てて突き出された槍士の槍を地面に踏みつける。

 

「こ、こいつら! クソ! 俺らが誰かわかってんのか!」

「星光騎士団のメンバーだぜ!」

「はあ?」

 

 槍の先端を地面に沈め、エイナが剣を横に構えた途端魔法使いの男が叫ぶ。

 怪訝に聞き返したエイナに、男らが半笑いになる。

 彼ら曰く、自分たちはプロモーションを担当した神野栄治や鶴城一晴の後輩……星光騎士団のメンバーだという。

 目を見開き、喉を詰まらせる。

 あまりにも、悔しくて。

 

「ふーーーん?」

 

 エイナが剣を下げ、槍士の顔面を蹴り飛ばす。

 そしてハルナとエイミーに目線でなにかを合図した。

 

「星光騎士団を名乗るなんていい度胸してんじゃん」

「我々が誰か教えて差し上げるといたしましょうか」

「はーあ。先輩たちの知名度のせいで変なの湧きすぎぃ! ま、これはこれで超ザマア展開だけどねぇ!」

「は、はあ!? なんなんだよ、お前ら!」

 

 剣士二人が剣を拾って構え直す。

 その間に、エイナたちがメニューから見た目を変える。

 ちょうど間奏の流れるところだった。

 シーナとカイセイは目を見開く。

 エイナは”エイジ”に。

 ハルナは”イッセイ”に。

 エイミーは”ユズ”に。

 

「栄治先輩! 一晴先輩! 柚子先輩!」

 

 驚いたのはバアルもだったらしい。

 しかしすぐに、バアルも見た目を変更する。

 バアルか”綾城珀”本人へと姿が変わると三人も意外そうに目を丸くした。

 

「珀くんではないですか。いやはや、なんとも運のない人たちですなぁ!」

「悪いことはできないね? まさか現役騎士団長さんや、俺たちの前で星光騎士団を名乗るなんてね?」

「あ、ぅ、嘘だろ……!?」

「キャハハハハハハ!! オラオラオラオラ! お仕置きタイムだよ! たっぷり楽しんでよねー! ~~~~♪」

 

 間奏が終わって歌が始まると、エイジとイッセイも音をずらしてハモリ出す。

 三人の周りに更なる追加バフ。

 これは――

 

「ハモリで起こる追加バフ!」

 

 チュートリアルに書いてあったが、初めて見た。

 そもそもの精密採点による歌唱追加バフ。

 フルを歌うことで起こる追加バフ。

 さらにそこへハモリによって起こる追加のバフ。

 三対六でも、元々のプレイヤースキルが高いイッセイはこれらのバフでレベル差もなにも感じさせないほどのスピードで剣士二人を一刀両断にして、槍士を槍ごと切り裂いた。

 ぎょっとした魔法使いが震えた声で歌い始めたが、栄治が回り込んで胸の中心に剣を突き立てる。

 急所を突き刺したことによる必中効果。

 瞬く間に四人がセーブポイントへの強制帰還。

 残った弓士二人が、砂利道に走り出す。

 

「逃がさないよぉ! 先輩たちどいててねぇ!」

 

 ジャンプした柚子が、大斧を振り上げる。

 武器スキルが効果範囲を示すと弓士二人はギョッとして走りながら飛んでくる影を見上げた。

 その表情は、半泣きだ。

 

「アックスグラッシャー!」

 

 振り下ろされた大斧により、地面が振動しながらひっくり返る。

 大量の土砂が超広範囲にすさまじい勢いで吹き飛ぶ。

 当然、その範囲内にいた弓士二人はあっという間に姿が見えなくなった。

 普通に考えて、あのバフ量とあの威力の武器スキルを食らったら助からない。 

 

「いや~、愉快痛快~! こんなに気持ちよくプレイヤーキルしたの久しぶりかも~! プレイヤーキルのペナルティー、三日間のバフ効果無効程度で助かるね!」

 

 やり遂げた、とばかりに満面の笑みを浮かべて額の汗を拭うふりをする蔵梨柚子。

 大斧の武器スキルがあまりにもえげつなくて、言葉が出なくなる一同。

 少なくとも栄治と一晴はドン引きである。

 

「お前さぁ~、あんな大技使うなら前もって言っておいてほしいよね? 普通に危ないよね?」

「えー、ちゃんとどいててね、って言ったっす~。ゴミをまとめて処分するのならあれが一番だったんだからいーじゃないっすかぁ」

「それにしても、あのならず者どもが星光騎士団を名乗っているのは不快ですな。今度のアップデートでギルド機能が追加されたら、あの者たちは星光騎士団というギルドをこさえて今のような無体を働くやもしれませんぞ」

「あー、そうだね。クソムカつくし、それは手を打っておこっかね」

 

 と、普通に会話をしてから栄治がくるりと体をシーナたちの方へと向ける。

 美少女アバターエイナから、成人男性――神野栄治の姿になった。

 先日の情報イベントで見た姿そのもの。



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