表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ソング・バッファー・オンライン~新人アイドルの日常~  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』
6章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

277/553

宇月先輩、有能


 翌日、他の一年生は中央区のショッピングモールでバトルオーデション。

 柳は自宅待機。

 鏡音も自宅で自粛――なのだが昨夜宇月に言われて今頃はお掃除をしていることだろう。

 淳と周は午前中の撮影担当。

 撮影室で二人、MCを入れつつ動画を撮影。

 午前中も淡々と対戦が続く。

 しかし、昨日宇月が分析していた通り『Color(カラー)』を中心に、三年生のみのグループや、三年生を含むグループはだいぶ個性を出してきている。

 ただやはり、Color(カラー)が大変に強い。

 星光騎士団、魔王軍、勇士隊に比べれば、という前提にはなるが、三大大手グループを除けばColor(カラー)が今年一番強いだろう。


「ふんふんふふーん♪」

「宇月先輩、なんかご機嫌ですね?」


 昼食休憩に入ると、宇月が撮影したデータを取りに現れる。

 しかしながら、気持ち悪いくらい……ではなく、珍しく上機嫌。

 怯えながら周が宇月に聞いてみると、ふふーん、と得意げに胸を張る宇月。


「ごたちゃんが今日から秋野直芸能事務所のレッスンでお休みなんだって。まあ普通にゴールデンウィークなんだけど。それはそれとしてごたちゃんのおかげで秋野直先輩と繋がりができて、なんとー! 『東雲芸能科GP』優勝グループにはすごーい特権が与えられることになったわけよ」

「え?」


 確か東雲芸能科GPは、投票の多いアイドル同士でコラボユニットを組む――というのが目玉だったはず。

 優勝グループについては――そういえば特になにも聞いていない。


「急遽優勝グループにも――景品が用意されたということですか?」

「そう!」

「へぇ、それはすごいですね」

「いったいどんな景品なんですか?」


 宇月がここまで得意げになるなんて、と興味本位で聞いてみると、宇月も「待ってました」とばかりにスマホを見せてくる。

 画面に映るのは、編集中の画像。

 画像に書かれているのは『IG夏の陣、本戦参戦権』。


「「本戦!?」」

「そ。星光騎士団(ウチ)は今年シード権があるんだけど〜、そのおかげで東雲学院芸能科からもう一つグループ参戦ねじ込めませんかねぇ? って秋野先輩にごたちゃんから聞いてもらったの。そしたら「いいよ」って! 詳細ももらっているから優勝グループには我ら三大大手グループとともに夏の陣参戦だよぉ」


 胸を張ってドヤ顔の宇月。

 周の横で淳が前のめりになる。


「す! すごい! これ、本当に普通にすごいですよ!? ええええ!? か、快挙すぎる!」

「でしょー! もっとほめてー」

「すごいです! 宇月先輩!」

「そ、そんなにすごいことなのですか?」

「すごいよ! だって予選の前にも二万組以上のアイドルグループが振り落とされるんだよ! 基準は活動頻度、グループ経歴、知名度、売上、楽曲、ダンス、昨年のIG順位、メンバー経歴などなど、かなり細かく精査される。それらを通って、やっと予選なんだよ! 予選に参加できても約千組。その上位四十八組が本戦に参加できるんだよ! そこに精査も予選もすっ飛ばして本戦に出場できるなんて……逆にハードル高くないですか!?」


 解説していたらだんだんその凄さに負担になってきたらしく、宇月に聞き返してしまう淳。

 日本のアイドルグループにとって、あまりにも至高のステージ。

 そこに、こんな学院の学生が企画したイベントで優勝しただけで本戦出場なんて……逆に恨みを買うのでは。


「まぁねー。僕も聞いた時はびっくりしちゃったぁ。マジでいいんですか? って八回くらい聞き返しちゃったもん」

「それは八回くらい聞き返しますよ」

「でも秋野先輩的には『学科が別とはいえ後輩が頑張ってたら応援したい』って言ってくれたし」


 秋野直は、忘れがちだが東雲学院普通科出身の大きな意味で淳たちのOB。

 神野栄治も秋野直とは仲が良く、星光騎士団が初めてIGに出演したのも秋野の伝手が大きかったという。

 というよりも、そもそもIGは最初、秋野直が高校一年の時に色々な企業のおじ様たちにおねだりをして協賛になってもらい、開催したもの。

 当時はここまで大きなイベントにはなるとは思われておらず、しかしそれでも秋野が卒業後、神野が三年生になった時に「俺らが三年連続優勝して殿堂入りした今、これからのアイドル業界を盛り立てる、もっと色んなアイドルを知ってもらいたい」からと星光騎士団が誘われて参戦した。

 そういう意味でも東雲学院のアイドルを贔屓したいと思ってくれたらしい。


「あと、『プロアイドルたち、たるんでる』ってキレてた」

「…………たる……んで、ます、か、ね?」

「秋野先輩にはそう見えちゃうみたい。去年も学生の珀先輩がリーダーのBlossom(ブロッサム)と星光騎士団が優勝と準優勝だったからねぇ」

「……う、うーん。それは……でも、プロアイドルもやっぱりレベルが高いところばかりですけどね?」

「星光騎士団と勇士隊も学生の集団だったし、そういう意味では東雲学院(うち)のアイドルって本戦でも通用するって信頼になってるってことじゃない? ケツ叩きの意味も込めて緊急参戦させたいって言ってたよ。要するにテコ入れだよね」

「なるほど……。効果あるんですかね?」

「さぁね。でも、去年軒並み優勝候補が新人アイドルであるBlossom(ブロッサム)に叩きのめされ、星光騎士団にも遅れを取ったのを見てそう思うのは無理ないかなーって俺も思っちゃう」


 確かに。

 学生である星光騎士団に勝利したのはBlossom(ブロッサム)のみ、という見方をすると――。


「ついでに言うとIGに通用できるくらいのレベルを僕らは維持しなきゃいけない。学院全体のレベルアップをして切磋琢磨し合うことで、プロに負けない実績を重ねていけるはずなんだよね。それを証明する意味でも、優勝グループはIGにご招待ってわけ」

「素晴らしいと思います」


 思わず拍手賞賛を贈る淳。

 宇月、マジで全体を見据えておられてさすがすぎる。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【宣伝】
『不遇王子が冷酷復讐者の手を掴むまで』(BL、電子書籍)
5cl9kxv8hyj9brwwgc1lm2bv6p53_zyp_m8_ve_81rb.jpg
詳しくはヴィオラ文庫HPまで

『国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!』アンダルシュノベルズ様より発売中!
g8xe22irf6aa55l2h5r0gd492845_cp2_ku_ur_l5yq.jpg
詳しくはホームページへ。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ