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東雲芸能科GP(2)


「じゃあ、ここからライブ楽しませてもらうぜ。頑張ってなー」

「えーと、俺たちは出演しないんですけど……でもSNSでの宣伝頑張ります」

「あ、そうなの? うん、まあ頑張れ〜」

「はーい」


 泉と別れて他の屋台も写真に撮ってSNSにあげていく。

 その横でずーっと無言の魁星。


「どうしたの?」

「え? なにが?」

「なんかずっと不機嫌そう」

「い、いやー。別に。……なんか不甲斐ない? って思って」

「んん……? じゃあ、ここのお店は魁星のSNSにあげる?」

「んーーーー」


 と、聞いてみるが、難しい顔をされる。

 腕を組み、首を傾げられて悩まれて、淳としてはなにがなにやら。

 しかし突然後ろに回られ、スマホを目の前に突き出される。


「一緒に撮影してSNSにあげよ。その方が“営業”っぽいっしょ?」

「ああ、なるほど。そうだねー」


 後ろから抱きつかれる形で撮影する。

 確かにBL営業っぽく二人で回ろう、という話だった。

 それに対してはなにも異論はなく、素直に受け入れて笑顔でピースサイン。

 撮影後の写真をSNSにあげると、今までで一番いいね、と拡散がされていく。

 すごい速度だ。


「わー、すごーい。苦手な人もいるからここまで過激なのはもうできないと思うけど、やっぱりBLっぽいのに反応する人は多いね」

「うん……」

「どうしたの? さっきから様子がおかしいけど……」

「んーーーっ」


 屋台の宣伝がある程度済んだので、野外大型ステージに向かう。

 IGシステムを採用しつつ、投票の機能は従来の定期ライブのものを使い“勝者グループ”と“推しアイドル”をそれぞれ選ぶ。

 グループは勝負ごと、推しアイドルは四人まで投票ができるものとするが、そのどちらもに三大大手グループ『星光騎士団』『勇士隊』『魔王軍』のメンバーは含まれない。

 純粋に、三大大手グループ以外の東雲芸能科グループで上位を決めるものとする。

 なお、最下位グループと人気最下位アイドルには罰ゲームが用意されているそうな。

 そのあたりは宇月に言わせると「当たり前じゃん。アイドルの自覚が足りないってことなんだから」とのこと。

 それに罰ゲームを避けるために努力してもらうのも、ある意味ケツ叩きになっていいだろう。

 あと、シンプルに罰ゲームを受けるアイドルは話題性を得られていわゆる“美味しい”目に遭うわけなので、それはそれで注目を浴びることができるからだ。

 細部まで配慮されていて、さすがは宇月。

 だからこそ、三大大手グループのメンバーはこうして撮影をして後日に公式チャンネルに上げる動画を作ったり、MCや審判役やインタビュー役を行う。

 ちなみに一応宇月は『勇士隊』の三年に、公式チャンネルのMCを任せるつもりだったのだが、蓮名と苗村は「アイドルに詳しい千景がやるべき」「自分たちは小芝居をやるから」と丸投げしたそうな。

 そりゃあ、公式から依頼があったのにそんなことを言い出したら千景も淳に相談するわ、と納得した。

 ただ実際本日は千景と日守、熊田が公式チャンネルのMCを行っており、現地のMCと審判役は魔王軍の二、三年が勤めている。

 つまり、やはり蓮名と苗村は二年生たちに仕事を丸投げしてなにかしら、やる気満々ということ……。


「ねえ、魁星? そろそろ次の撮影に行くけど大丈夫?」

「うん。まあ、うん……」

「どうしたの? なにか悩みごと? 俺でよければ相談に乗るけど」

「……うん……」


 うん、と言う割に難しそうな顔のまま。

 人の少ない校舎の渡り廊下を通りながら、お客さんの通れない学生だけが通れる通路に移動する。

 野外ステージを正面から撮影できる本校舎の三階に移動中、魁星の悩みとやらを聞く態勢になるのだが、まだ言葉がまとまらないらしく俯いたまま。

 仕方がないので、魁星の中で悩みごとが話せるようにまとまるまで待つことにする。


「あのさ」

「うん?」


 ようやく彼の中で話せるくらいにまとまったのか、魁星が声を出したのは三階教室に入ってから。

 撮影の準備に入ると、難しい表情で「朝科先輩と連絡取ってる?」と聞かれた。

 首を傾げる。


「なんで上総先輩と同じことを……?」

「え……上総……え? 石動先輩のこと?」

「えっ。あ……あーーー……うん。そのーーー……まだ詳しくは話せないんだけど、事務所の方で一緒にレッスンする機会が増えてて」

「っ……!?」


 Frenzy(フレンジー)のメンバーについては特に強い守秘義務が課せられている。

 なので家族にはもちろん、星光騎士団のメンバーにも話をしていない。

 Frenzy(フレンジー)メンバーについて相談してもいい相手は、事務所の先輩たち――つまり綾城と甘夏と神野と鶴城ぐらい。

 さすがに宇月にも話せていないので、魁星にも「黙っててね」と一応釘を刺す。


「はあー……」

「え? なに?」

「いや……。その、淳ちゃんはモテるから、最近ちょっと……考えちゃって」

「ええ? どういうこと? モテる……? いや、別にモテないよ? モテるって魁星みたいなことを言われるんじゃない?」

「顔とかファンにとかの話じゃなくて」

「は、はあ?」


 本気で理解ができなくて、どういう意味なのかを詳しく聞こうと次の言葉を待つ。

 魁星の方は顔がいいので、雑誌の撮影など単体で仕事が来るようになっているのになにが“淳がモテる”なのやら。


「俺も自分でよくわからないんだよね」

「自分がなにに悩んでるかを?」

「うーん……っていうか、自分がなにに嫉妬してるのかを?」

「嫉妬しているの?」

「そう。でもなんか……ごちゃごちゃしてる。淳ちゃんには俺だけ見ててほしいとか思うのに、淳ちゃんを頼りにしてる御上が羨ましいとかも思うし、他の……卒業した人たちが淳ちゃんに関わろうとしてるのとか聞くとなんで、ってムカつく。俺はなににやきもきしてるんだろうね?」

「……えーと……うーん? それは……?」



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