表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

26/442

初パーティプレイ(1)

 

「お兄ちゃん大変、チコ、この姿で珀様に会うのはなんかこう、無理な気がしてきた」

「アバターの見た目変えたら?」

 

 だから先にログインしておけばよかったのに、と思わないでもないけれどもう約束の時間だからと『お気に入りの見た目』から女の子の姿に変更した。

 魁星は「美少女姉妹になった」という感想。

 

「あ、すみません。もしかして淳くんかな?」

「はい!」

 

 綾城の声に驚いて振り返る。

 暗紅色の髪と菫色の瞳の男子アバター。

 頭の上のキャラクター名は『バアル』。

 

「もしかして、綾城先輩……?」

「そうだよ。淳くんは女の子のアバターなんだね。えっと、それでそちらが」

「い、妹のチコです!」

「初めましてー。えーと」

「あ、俺は魁星っす!」

「えー、魁星くんも来たの? 魁星くんもゲームやるんだ?」

「今日、偶然誘われて……」

「すみません、連絡せず連れてきちゃって」

「ううん、いいよー」

 

 大丈夫、と手を振るう綾城ことバアル。

 メンバーも揃ったことだしひと狩り行こうか、ということになる。

 

「フルダイブ型? 僕も今日はフルダイブ型~。フルフェイスマスクはまだ届いてないんだよねぇ」

「俺もフルフェイスマスクは喉を使うとわかったのでフルダイブ型にしました」

「フルダイブ型が主流なんっすね」

「そうだね、旧来のVR機はゴーグルタイプだったけど、フルダイブ型が出てからは一気にフルダイブ型が主流だね。フルフェイス型はVtuberとかに人気になると思うよ。でも、SBOのシステム的にこういうのが主流にはなっていくかもね。フルダイブ型は体が無防備になってしまうのがネックと言われていたから」

「へー」

 

 まあ、僕はそれで一命取り留めたんだけど、と目を閉じたバアルが言う。

 フルダイブ型で二十四時間ゲーム内に引き篭もるのが、『自殺者支援型VRMMO』。

 病院に収容されて、栄養の点滴と排泄の世話をされ、現実世界と隔離される。

 そこで現実世界へ帰る“リハビリ”を行う。

 

「どんな感じのゲームだったんですか? その……」

「『TEWOザ・エンヴァースワールド・オンライン』? スキルツリー系のSBOとシステム自体は似てたな。あとは『千物語・オンライン』とも似てる。自由度は本当に高くて、サーバが世間一般と隔離されているからすごくリアリティも高かった。今まで結構ゲームしてきたけど、他と比べ物にならないクオリティだったね。今思い出してもすごいゲームだったなぁ」

「へー、ちょっとやってみたいですね」

「TEWOのゲーム性とシステムは後続ゲームに流用されてるらしいから、多分SBOもその後続ゲームの一つじゃないかな」

 

 へー、ともはや「へー」しか言えなくなる三人。

 最初の森で戦い方を確認して、パーティー設定を行う。

 

「歌えばいいんだ?」

「はい。そうしてバフをかけていくと、装備を変えなくても強くなっていくんです。武器や防具のスキルツリーを開放すると、上位武器と交換できるそうで、そこで装備もレベルアップしていくって感じですね」

「へー、面白いシステムだねー。でも、なるほど、確かにそういうことならフルフェイスマスク型が推奨されてるのわかるなー」

 

 と、目をキラキラさせたバアルが杖を持ち上げる。

 バアルは魔法使いタイプを選択したらしい。

 シーナが剣を引き抜き、チコがグローブを着けた手を拳にする。

 目の前には猪型のモンスター。

 

「カイセイはなんの武器にしたの?」

「剣です!」

「いいねぇ。じゃあ目標はイノシシ一人一頭で!」

「はい!」

 

 バアルの声に全員が[始まりの歌]を歌う。

 フルダイブ型だと歌唱の精密採点機能が働かないので、それが適応されるのは魁星だけ。

 魁星が[始まりの歌]を歌うと、パーティー全員に『攻撃力上昇』にプラス『速さ上昇』が加わる。

 つまり、魁星の歌声は――追加バフが発生する程度には、上手い。

 

「たあああ!」

「でやあ!」

「うおおお!」

 

 四人の歌声で『攻撃力上昇』は×4。

 さらに魁星の歌の上手さによる追加バフ『速さ上昇』で、イノシシのモンスターは一撃で倒れた。

 前回“エイナ”と一緒だった時も楽だったが、四人だともっと楽だ。

 これならどんどん進めるね、とモンスターを倒しながら『セカンドソング』に向かう。

 

「あ、レベルアップした。新しい歌を覚えたよ」

「綾城先輩――じゃ、なくてバアルさんは魔法使いですもんね。そういえば魔法使いも歌を歌うと魔法が発動する感じなんですかね」

「うん。魔法って言ってもバフが多いみたい。もう完全にSBOってバフ盛って盛って殴るって感じのゲームなんだね」

「あはは」

 

 魔法ですらバフなのか。

 バアルの感想がまさに的を射ているようだ。

 実際、バフをかけ続けることができるのでレベルや武器関係なく覚えた歌を歌い続けるとどんどん強くなる。

 初心者にも優しいゲームと言える。

 

「サクサク進めて面白ーい!」

「二人はこのゲーム初めてじゃないんじゃなかった?」

「あ、チコはプレイ自体は今日が初めてなんです。初めてログインした時は、情報イベントに栄治様が出ていてそれを見に来た感じなので」

「うわあ、ブレないねー」

 

 えへへ、と笑って誤魔化す兄妹。

 そこにピコン、とゲーム内メッセージが届いた。

 

「あ! エイナさんからメッセージ!」

「誰?」

「お兄ちゃんが初めてプレイした時にフレンドになった人だっけ?」

「そうそう! あんまりログインしないって言ってたけど、ちょうど時間合ったみたい! 一緒に遊ばない? って。どうですかね?」

「うん、いいんじゃない? 僕は構わないよ。人が多い方がレベリングサクサクだし」

「俺も! めっちゃ楽しい!」

「チコもオッケーだよ!」

「ありがとう! 誘ってみるね!」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【宣伝】
『不遇王子が冷酷復讐者の手を掴むまで』(BL、電子書籍)
5cl9kxv8hyj9brwwgc1lm2bv6p53_zyp_m8_ve_81rb.jpg
詳しくはヴィオラ文庫HPまで

『国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!』アンダルシュノベルズ様より発売中!
g8xe22irf6aa55l2h5r0gd492845_cp2_ku_ur_l5yq.jpg
詳しくはホームページへ。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ