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SBO新人研修会(3)


「部屋、決めてきました!」

「次はどうするんですか?」

「次はレベリング!」

「レベリング!」


 盛大に食いついてきた。鏡音――マギが。

 二階から降りてきた二人を引き連れて、まずはファーストソングの近くの森へ。

 戦い方はシンプルなもので、振り下ろしたり振り上げたりする『斬撃』、弓矢や突き技の『突き』。

 武器交換を続け、レベル5から押し潰す系の『打撃』が加わる。

 初期装備だと剣、槍、弓矢。

 マギは剣、ビッキーは槍を選択したので初期魔物の一種、ミニボアが現れるとマギが踏み出す。

 

「じゃあ、僕らが歌ってバフをかけてあげるからー」


 と、ミオが人差し指を立てながらドヤ顔で言っている最中、魔物の悲鳴が森に木霊する。

 全員の視線がマギに注がれるが、経験値はパーティー仕様で全員に微々たる数値が入ってきた。

 パーティー仕様なのでまだレベル1だったマギとビッキーにはかなり多いくらいの量の経験値。

 いや、そうではなくて。

 

「ちょ……え……っ」

「ちょ、ちょっと……」

 

 困惑の声を漏らすミオとセイ。

 そのまま次の獲物に向かって走って行ってしまうマギ。

 都度都度経験値がポンポンポンと入ってくるので、全員がますます困惑。

 ものすごい勢いで周辺の魔物が倒されていく。

 魔物が可哀想になるあの現象。

 

「あ、あの……円っち……じゃなくて、マギっち……ぼ、僕、レベルがもう10になったんだけど……」

「バフいらねー……」

「武器のスキルツリーが全解放できたら帰ってくる……かなぁ……?」

 

 仕方なく、マギはそのままにビッキーのレベリング……もとい戦闘に注力することにした。

 マギのおかげでレベルは自動的に上がっていくので、ステータス的には攻撃を受けてもダウンすることはない。

 しかしどうせならプレイヤースキルツリーを解放してからでもいいかもね、とシーナが助言してプレイヤースキルツリーと武器スキルツリーを解放していく。

 幸というべきか、それらのスキルツリーを解放するSP(スキルポイント)はレベルアップと同時に手に入る。

 ……マギのおかげで、全自動で入ってくる。

 

「まあ、普通パーティーを組んだら前衛後衛に分かれて後衛が歌ってバフをかけるんだよねぇ。ナッシー……じゃなかったシーナが魔法師の職業だから、バフはより多めにつけられるんだ〜」

「魔法師はバフにレベルの高い効果付与がつく職業なんだよ。俺たち、ライブの時は職業魔法師になって、サーバー全体に高レベルのバフをつけてたんだ。好まれやすいのはアイテムドロップ率上昇のバフかな。和風の曲だとつきやすい」

「ライブするとサーバー全体にバフがつくんですか!?」

「正確にはサーバーにいるプレイヤーにね」


 だがまあ、ライブの時に歌って高ランクのバフをつけても、ライブ映像を流しながらダンジョンに潜るプレイヤーはそれほど多くはない。

 今のところシーナが知っている『ライブ中、バフを使ってダンジョンに潜った人』はプロプレイヤー、エイランとそのエイランに背中を預けられる変態、エルミーだけだ。

 まあ、ともかくレベルが上がればその分多種多様なバフを付与できるようになる。

 歌が上手ければそれだけで追加付与もつくし、ハモりができたらさらにプラスで追加付与がつく。

 ただライブで歌っても、東雲学院の生徒ならば多少の追加付与は期待できるが、やはりレベルが高ければ高いほど基礎のバフの種類が増えるし追加付与のレベルも上がる。

 なのでこうして、定期的にレベリングしてバフの種類を増やす。

 その方が初心者のグループに差をつけられるし、東雲学院のアイドルに興味がなかった純粋なゲーマー層に興味を持ってもらい、新規ファン会得に繋がる――というわけだ。

 今のところ星光騎士団以外に定期的なレベリングをしている東雲学院アイドルグループはいないので、今のうちに魔王軍や勇士隊と差を明確に作っておくのも一種の戦略。

 

「まあ……マギはこっちがなにか言わなくてもレベリングに集中してくれてるみたいだけどぉ」

「あ、レベル15になりました……」

「と、止まりませんね、彼。そろそろセカンドソングまで行っているのでは?」

「そうかも……」

 

 一応、第二の町、セカンドソングの前にフィールドボスがいるのだが、パーティー推奨のボスも一人で倒してしまいそう。

 しかも、バフなしで。

 

「もうアイツは放っておこっかぁ。フレンド登録はしてるんでしょ? 合流する時はパーティーメンバーメッセージで呼び出せばいいしぃ」

「まあ……そうですね。それじゃあビッキーは俺たちでバフをつけるから、えーーと……」

 

 魔物を倒してみようか、と言いかけて周辺を眺める。

 いかん、魔物がマギに狩り尽くされていて見当たらない。

 流れる沈黙。


「ほ……他に初心者向けのダンジョンとかないのぉ? フィールドの魔物は時間でリスポーンするんだよね? 待っててもいいけどぉ、マギの狩尽くし系な感じ見たらダンジョンの方が安全に狩りができるんじゃあなぁい?」

「そのはずですね。アップデートでそこは改善されたはずです」

「ダンジョンとフィールドと、魔物が違うんですか?」

「うん。ダンジョンの魔物は武器や装飾品、アバター衣装を作るのに必要な素材アイテムばかり多く落とすし、経験値もフィールドよりも多い。あと、特殊な魔物……たとえば色違いとか。他にも町でゲーム内通貨“ソング”をたくさん得られる『クエスト』の対象とかはだいたいダンジョンの魔物かな。ダンジョンの中はフィールドと違って生態系の設定までしてあって、ダンジョンの中で魔物同士が弱肉強食で喰らいあって特殊進化する魔物もいるだよね。そういう魔物はクエストの討伐対象だったり、武具や装飾品の素材に最適だったり……とにかく、ダンジョンはいいよ。美味しい」

「へーーー」



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