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SBO新人研修会(1)


 お風呂に入って、久方ぶりにSBOにログイン。

 シーナの姿で始まりの町『ファーストソング』に降り立つと、星光騎士団ファンが集っていた。

 なぜわかったかと言われると、誰かしらファングッズの小物をアバターにつけているのと、話題が鏡音活動自粛で持ちきりだったからだ。

 

「鏡音くん、いつまで休むんだろう?」

「ストーカーマジ許せん」

「うっかりゲームの中で遭遇しないかなぁ」

「SBOなら可能性あるよね」

「デビューして一ヶ月も経ってないのに活動自粛なんて、寂しすぎ〜! 私今年から星光騎士団推しになったばっかりなのにぃ!」

「とりあえずチャンネル登録したけど、活動自粛のお知らせっていう動画上がってたよ! もお、行動早すぎない!?」

 

 鏡音、マジで注目度が半端ない。

 ネットニュースにも上がっていたので、かなりの広まりを見せていると思われる。


(それにしても……想像以上にSBO内は東雲学院のアイドルファンが増えたな〜。そうなるように売り出していたんだけれど)


 SBO内に作られた淳プロデュースの東雲学院公式ショップも売上が毎月少しずつ上がっているらしい。

 やはり昨年IG夏の陣で綾城が準優勝に導いてくれたおかげで、今も知名度は上がり続けている。

 柳と鏡音が星光騎士団に入団したことも、新規客やにわかファンを呼び込んでくれたのだ。

 今回星光騎士団のファンというよりは、元々鏡音のチャンネル登録者だったのではないだろうか。

 女性が多く見えたが、アバターだろうから性別も年齢も現実と違うので、正確とは言えないだろうけれど。

 かく言う淳も、それなりの装備の“美少女”だ。

 新地区――現在は居住区と呼ばれる区画に移動して、赤煉瓦に塗り替えられた星光騎士団の拠点に入る。

 

「おつー、ナッシー」

「宇月先輩、お疲れ様です。他の皆さんは、まだ、ですか?」

「ごたちゃんは『お母さんに捕まった。一時間くらい遅くなるかも』ってメッセージ来てたなぁ。多分卒業後の進路アレそれじゃない? 事務所に入ったのは反対されてないけれど、音楽家としての活動もやってほしいって言われているみたいだからさ〜。大変だよね。あとなんかお見合いの話が来てるんだって。一応ソーケ? っていう直系血筋保持が必要な家柄だから、子どもだけは作ってね、ってすごいこと言われてるって落ち込んでたよ」

「ええ……そ、そうなんですか……」

「なんか別世界の話聞いてる感じだったよー。家の仕事をする正妻と、妾を囲うくらいは問題ないけれど〜とかも言われて鬱なんだって。ごたちゃん、精神的に弱いって思っちゃうけど、そういう話聞くとそれは鬱になるーって思うよねぇ」

 

 と、肩を竦ませる宇月、ことミオが深々溜息を吐きながら足を左右組み替える。

 聞けば聞くほど庶民には別世界の話にしか聞こえない。

 確かに後藤の精神はかなり脆弱。

 SDを抱えていないと、綾城と宇月以外の人間とは会話ができない。

 ステージに立ったあとはロッカーの前に正座して、ロッカーの扉に額を打ちつけながら一人反省会をしていることもしばしば。

 運動神経、家柄、顔、頭、容姿もなにもかも常人より上の高スペックなのに、自己肯定感がゴミカス。

 あの人なんであんなに自己肯定感低いんだ、と誰もが思うだろうが、逆に家柄が良すぎて庶民との温度差、常識が違いすぎて居場所が定まらないのだろう、と宇月が紅茶を飲みながら教えてくれた。

 さすがは幼馴染。

 後藤のことを、とても理解している。

 

「お疲れ様でーす」

「お疲れ様です。ログインしたての二人も見つけたので、連れてきました」

「ほ、ほげええええ……!」

「拠点……すごい……!」

 

 魁星こと、キャラクター名セイと、周こと、キャラクター名ルイが二人の新キャラを連れてきた。

 黄色い髪と、瞳の中に星マークのあるキャラクター『ビッキー』が柳。

 青い髪に黄色いシャギーが入っている、雷マークのピアスをしている赤い目のキャラクター『マギ』が鏡音。

 

「ドカてん、まさかとは思うけどいつも自分が使っている系のネームで入ってきてないよね?」

「あ、さすがにそれは……。一応サブキャラとして作った方でログインしました」

「え、SBOって複数キャラクター作れたの?」

「一応同じアカウントで五人まで作成可能ですよ。運営としては『女性の高音、女性の低音、男性の高音、男性の低音、残りは自由、のように使い分けられるように』他のゲームより多めにキャラクター作成できる仕様だそうです」

「へーーー」

 

 あくまでも“歌声”で遊ぶゲームなので、声の種類を選べるようになっているということらしい。

 課金すれば一度作ったキャラクターの音声変更も可能だし、淳たちのように『お気に入り』に生成したキャラの姿形、音声、装備を三つまで保存できるので実質十五種類の音声で遊ぶことができる。

 もちろん、『地声』推奨ではあるけれど。

 声という現実でも馴染みのあるものを再現する以上身バレに配慮もしている、ということだ。

 淳たちはせいぜい正体を隠す仮の姿と、現実(リアル)の姿の二つだけで間に合うが、プロゲーマーとして複数のゲームで自身の“キャラクター”を持つ鏡音は三つの姿が必要だった。

 普段“プロ”として鏡音が使っているキャラクターは、赤と白を基調としたものが多い。

 それをイメージカラーとして使っており、既存キャラクター選択式のゲーム以外ではキャラクターデザインも似たものに統一している。

 今回鏡音が作成してきたデザインは普段のものとはかなりかけ離れたデザインなので、ネームも普段のサブ垢で使わないようなものを選んだとのことでプレイスタイルで判別をつけるほどの重度のファンでなければ見分けはつかないだろう、とのこと。



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