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魁星ゲーム初体験

 

 その後牛丼を作り、両親用に余っていたジャガイモと豚小間肉、糸こんにゃくで肉じゃがを制作。

 これだけでは可哀想なので、玉ねぎを根と先端をカットし少し切れ目を入れコンソメの素と水で煮込んだオニオンスープを作る。

 大根を細切りにして大根サラダにし、お椀に炊いたご飯を盛ってテーブルに並べればそれらしい夕飯の出来上がり。

 お風呂から上がった智子と三人で美味しく夕飯を食べて食器洗い機に入れて、浴槽に湯を張って魁星を先にお風呂に入れる。

 その間に淳の部屋に物置から出してきた布団を敷き、除菌・消臭スプレーをかけて寝る準備万端。

 

「あああ、もうすぐ珀様と協力プレイができるんだ……緊張してきたぁ!!」

「先にログインしててもいいよ。俺、魁星がお風呂あがったら入ってくるね」

「う、うん、そうしようかな。あ、そういえばBlossom(ブロッサム)の甘夏拳志郎について調べたよ!」

「西雲学園の普通科の生徒なんだよね」

「さすがおにいちゃん、そこまではもう知ってたんだね!」

 

 え、まさかそれ以上の情報を探してきたというのだろうか。

 恐るべしガチのドルオタ。

 こういうところを見ると、ドルオタとして自分はまだまだだと思ってしまう、

 

「あのねあのね、元々南雲学園中等部出身で空手とか剣道とか柔道とか球技とか水泳とか、ありとあらゆるスポーツをしてたんだって。だから、元々はスポーツマン! でも中二の冬にお姉さんのストーカーに刺されて腕をケガしちゃったんだって。休んでいる間に猛勉強してスポーツから離れることにしたみたい」

「そうなんだ……」

 

 綾城も「ゲームの中でナンパしたんだよ♪」と言っていた。

 怪我をして、治療中にゲームをしていたのだろう。

 その時に綾城が甘夏に出会い、どうやってか春日芸能事務所に引き入れた――ということなのか。

 

「栄治様と一晴先輩と珀様の三人と同じグループになるなんて、どんな人だろうと思ったけれど……そんなにスポーツ万能ならライブ観るのますます楽しみだね!」

「それなーーーー!」

 

 智子と盛り上がっていると、魁星が顔を赤くしながら風呂から淳の部屋にやってきた。

 三人そろったので、智子は自室へ戻る。

 フルフェイスマスクを魁星に貸し与え、淳はフルダイブ型のVR機をかぶった。

 

「この”フルフェイスマスク”と淳ちゃんの”フルダイブ型VR機”ってどう違うの?」

「フェイスマスクは最近発売されたばかりの最新機種! 旧型のVR機みたいに意識がある状態で使えるんだけれど、このマスクをかぶると防音室くらいの防音機能があるんだって! SBOは歌でバフをかけて戦うVRMMOなんだけど、この最新機種で意識ある状態で歌って練習になるかなって。フルダイブ型VR機は体を横にして脳波をゲーム内に反映させるんだ。体は半分眠っている状態かな。無防備になるから自室に鍵とかかけて、ちゃんと時間を守って使用しないといけない。連続で使う時は休憩必須。本体からゲーム内に警告も出るから大丈夫だと思うけれど……いや、まあ、こっちは俺が使うから大丈夫。今日はそんな長時間しない予定だし」

「へえ~……VR機って俺初めてなんだよね」

 

 先ほど聞いた家庭事情を思うと、VR機は初めて――というのは仕方ないのだろう。

 大丈夫だよ、と声をかけながら使い方を教えて、淳はベッドに横たわる。

 フルダイブ型は意識が半睡眠状態に陥るので、床に布団を敷いてパッドに繋いで先にプレイしてもらうことにした。

 新しいキャラクターを作成してもいいと言って、旧型フルダイブVR機にはIDを入力して端末ダウンロードを行う。

 ロードが終わってから、ゲームにログインすることにして「ゲーム内で合流しようね。サーバは『ハッシュ』で」と伝えてゲームをスタートする。

 

「――よいしょっと」

 

 キャラクター『シーナ』でログイン。

 シーナが目覚めたのは『セカンドソング』という第二の町の宿だ。

 始めたばかりの魁星は、きっと最初の町『ファーストソング』にいるだろう。

 迎えに行かなければ。

 

(ゲーム内のお知らせチェックしておきたいしね)

 

 と、掲示板を開いてみる。

 すると、やはりライブ情報が出ていた。

 五月五日、十九時からSBOの始まりの町『ファーストソング』特設ライブ会場で『 Blossom(ブロッサム)』のライブを開催。

 十九時半からトークライブ。

 十九時四十分から握手会。

 ゲーム内での握手会なので、アバター越しではあるものの握手会自体が久しぶりな神野栄治。

 鶴城や綾城は定期的にあるが、モデルの神野栄治は東雲卒業後一度も握手会をやっていない。

 何年振りだろうか。

 卒業以来だから――三年ぶりか。

 

「栄治様と握手会……!」

 

 アバター越しだとしても。

 神野栄治と。

 握手会。

 

「絶対参加するー!」

 

 智子にもソッコーでメールをして、ひとまず『ファーストソング』で魁星とも合流することにした。

 マップ転移で『ファーストソング』に移動し、広場で智子のアバターを待つ。

 

「お兄ちゃん!」

「チコ~」

 

 智子のアバターが手を振りながら駆け寄ってくる。

 智子のアバター名は、チコ。

 本名のままだが、なにを思ったのかお気に入りアバターの見た目その1はゴリマッチョのゴリラ大男。

 美少女アバターのシーナと並ぶと美女と野獣である。

 広場に新たなキャラクターが現れたので、二人は「魁星?」と首を傾げて声をかけた。

 そのアバターは黒髪黒目の男。

 頭上に浮かぶキャラクター名は『カイセイ』だからまず間違いないと思う。

 

「そ、そうだけど……え?」

「よかった~、チコだよ」

「俺が淳だよ」

「見た目で脳がバグる!」

「「あははは」」

 

 それは本当にその通り。




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