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新体制決定


「ところで、一週間来れなかったので新入生の状況が俺にはさっぱりわかってないんですけど……新規で面談に来た子はいたんですか?」

「来たよぉ〜。魔王軍の方に加入申請した子が、魔王軍の方から面接の受付してるって聞いて噂広まってドバーッて。もーちょーーーっめんどくさかったぁー! 毎年のことながらゴミが九割!」


 言い方が酷すぎる。

 だが、淳たちの時も八割が逃げ出したので宇月がそう言うのは仕方ない。

 つまり、今年もかなりの数が『地獄の洗礼』で逃げ出し済み、ということだ。

 

「周は一年生たちの面倒見てたの?」

「宇月先輩を見ながら頑張っていびりました」

「ええ……ああ、うん……そ、そうなんだぁ」


 周が宇月の似なくていいところを……。

 思ったけど口にしない優しさ。


「僕はあんまり出ないようにしたよぉ〜。見てるとどんどん暴言出ちゃうからねぇ。とはいえナギーとドカてんは優秀で、あんまり言うことなかったかなぁ。あの二人は頭二つ分くらい抜けてるねぇ。一年生の後半くらいのスペックあるよぉ」

「ナ……ドカ……」


 あだ名のつけ方が独特だとは思っていたけれど、まさか『(ヤナギ)』から『ナギー』、『(マドカ)』から『ドカてん』になるとは。

 珍しく宇月がかなり高く評価しているのに、あだ名のインパクトが強すぎてあとの方がほとんど耳に入ってこなかった。


「問題は料理!」

「あ……!」


 周の指摘にハッとする。

 星光騎士団の特徴の一つ、『誕生日月にケーキを作る』!

 つまり、料理ができなければならない。

 なお、今月……四月は宇月美桜の誕生日月。


「宇月先輩、ケーキのリクエストは」

「一年どもが壊滅的すぎて無難にカップケーキでいいよぉ、って言っておいた」

「あ、もう作ってもらったんですか。え……? 壊滅……?」

「やばかったよぉ……最初はショートケーキ頼んだんだけどぉ、卵そのまま電子レンジに入れたり、小麦粉一袋フライパンに入れようとしたり、ベーキングパウダーをサラダ油で溶かそうとするし、レシピ本見せながら事前に作り方の解説したのにも関わらずハンドミキサーでいちご潰し始めたりしてさぁ……」


 ヤバすぎる。

 恐る恐る周を見てしまう淳。

 周と魁星も最初は料理のりの字も知らなかったが、あそこまでではなかった。

 周に至っては調理研究部でかなり料理の腕が向上しているし。


「ま、多分残るのあの二人だけだろうしぃ、僕の誕生日にかこつけて練習させてぇ? ナッシーは忙しそうだけど、クオーならイケる?」

「やってみます。というか、あの二人は調理研究部に来るべきです。無理にでも入れます」


 周の目がマジすぎる。

 だが話を聞く限り柳も鏡音も壊滅的。

 そして宇月は「ナギーは絶対“アレンジャー”」との予想。

 アレンジャー……あれは一番ヤバいやつだ。

 レシピ通りに作れないのに、アレンジを加えようとするタイプの料理下手。

 しかも本人は良かれと思ってやるのでたちが悪い。

 それをやってもなにもよくならないのに、謎の自信に満ち溢れているので周りが止めてもこっそりやろうとするやつ。

 こっそりやられたら、すべての作業が一瞬で水の泡にもなりかねない。

 完全なる、文字通りの料理テロリストだ。

 宇月がそれを確信したのは、柳が「苺ジャムにすればいいんじゃない?」とジャムの作り方も知らず、ハンドミキサーで苺を潰し始めたのを見たから。

 柳のやつは、苺をジェル状になるまで潰せばジャムになると思っていたらしい。

 それを見て宇月がブチギレてその場で正座させてお説教したというので、それはそう。としか。


「ドカてんはねぇ、まだレシピを教えれば大丈夫そうなんだよ。もたもた手際悪いけどさぁ、アイツはなんかこう、料理もゲーム感覚でやらせるといきなり上手くなるから」

「問題は柳くんです。彼は――危険です」

「お、俺からもそれとなく注意してみておきます……」


 聞けば聞くほど怖い。

 味音痴なわけではなさそうなのだが、だから余計にアレンジャーは危険なのだ。

 料理に関しては周が二人を調理研究部に入れる、と宣言しているので任せた方がよさそうである。


「じゃ、そろそろ様子見に行ってみるぅ? 今日も一人二人減ってるんじゃなぁい? 楽しみだねぇ♪」

「何人くらい面接に来ていたの?」

「十八人、最初は。『地獄の洗礼』が開始して一週間の間に十五人辞退しましたね」

 

 本当に、文字通り地獄。

 しかし、十八人中十五人辞めた、ということは三人残っているのか。

 少しワクワクしながら一年生の練習スタジオに入ってみると、星光騎士団の曲が流れ、ダンスしていたのは二人。

 柳と鏡音のみ。

 その光景に、察した。


「あ、お疲れ様です!」

「お疲れ様です……」

「ええと……昨日まで残っていた三人は……?」


 周が一応、少し困ったように聞いてみる。

 柳と鏡音は顔を見合わせてから「「辞めるそうです」」と声を揃えた。

 頭を抱える周と、腕を組んで「フン!」と鼻を鳴らす宇月。


「残ったのは二人ねー。ま、僕とごたちゃんの時もそうだったしねぇ。ひまちゃん先輩の時なんて、ひまちゃん先輩しか残ってなかったから今年は多めな方かなぁ」

「え? 綾城先輩は――」

「珀先輩は一年留年してるからぁ、本来はひまちゃん先輩だけだったんだよぉ〜。って、ワケだから現時点を以てナギーとドカてんは正式加入ね〜」


 宇月が指差すと、柳がぱあ、と嬉しそうにする。

 鏡音は無表情のまま。

 あまり嬉しそうでもない。


「じゃ、少し詳細話すね。正式加入後は二軍である第二部隊に配置するよぉ? 第二部隊は今、ナッシーが部隊長だけどお、ナッシーは五月一日づけで第一部隊に昇格するから第二部隊隊長はこっちのクオーがやるね、お前らは今後クオーの指示に従うように」

「わかりました!」

「はい」

「じゃ、本格的にお披露目ライブのために頑張ってねぇ? 見た感じ仕上がってるっぽいけど」


 宇月にここまで言わせるスペック。

 すごい。



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