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二年生になりました(2)


 そんな話をしつつ翌日は入学式。

 東雲学院芸能科に、新入生が入ってきた。

 入学後、一週間後にライブオーデションが開催されるので、二年生、三年生はある程度一年生の情報を集めておく。

 その情報源になるのが、公式ホームページのプロフィール。


「ここで自分たちが使うことになるなんて」

「今朝まで存在すら知りませんでしたからね」

「星光騎士団と魔王軍と勇士隊は今年も希望者が殺到だろーなぁー。IGで予選突破どころか、本戦の最終日まで残ってるんだもん。学生であそこまで戦えるなんて、誰でも希望しちゃうよなぁー」


 なんて笑っている天皚に、『地獄の洗礼』を思い出した魁星と周は顔を青くして俯く。

 天皚も『地獄の洗礼』の内容を聞いたことがあるので素直に「ごめん……」と謝った。


「っていうか、やっぱり学院の知名度そのものが上がったせいかちらほら名前を知ってる生徒がいるな? これとか……柳響とか、確か子役でドラマに色々出てた子じゃないか?」

「う、うん……」

「まさか……知り合いなのか? 淳ちゃん」

「えーと……うん、まあ……そのー……同じ劇団出身の伝手で演技指導と家庭教師を少し」

「はあーーーー!? 柳響の!?」

「柳響!?」


 と、ものすごい勢いで天皚の真後ろから北王子密(きたおうじひそか)が顔を出してきた。

 四人でびっくりした顔をしてしまったのを見て、北王子がハッとしてコホン、と咳き込む。

 北王子密は周と同じく芸名。

 本名は「キラキラネームすぎて読めた人いないんだ」と顔を青くして首を横に振っていた。

 ここ数年、キラキラネームのせいでいじめを受け、芸名でまともな日本人らしい名前を堂々と名乗れるから、と芸能科を志望する子が多いという。

 そういうキラキラネームをつける親は、芸能科と聞くと「やっぱりうちの子は特別!」と勘違いして十中八九賛成される。

 で、そのまま芸能科に入り、その芸名が定着した頃転科する――というパターン。

 北王子も最初はそのつもりだったが、淳と千景のコラボユニットのおかげでアイドル活動楽しい、もう少しやってみたい、となり無事に二年生に進学。

 と、いう経緯があるのを割とペラペラ話してくれた。

 で、その北王子がゆっくり鞄の中からスケジュール帳を取り出す。

 スケジュール帳の中から出てきたのは柳響フォトカード。


「「「「……まさか……」」」」

「そのまさかだよ。僕、ショタコンなんで」

「「「「…………っ!!」」」」


 いや、その告白はしなくてもよかったような。

 淳たちは「柳響のファンだったんだ?」くらいなものだった。

 あまりにも斜め上のカミングアウト。

 違う、そうじゃない。


「柳響は小さな頃から可愛かったじゃん? あと、木村ユウカくんや椋木憧子(むくきあこ)くんを追ってた。そ、そっかー、柳くんももう高校生なんだな……っていうか、一年生!? 東雲学院に入学してきたってこと!?」

「え……シンプルに怖いんだけど、ショタコンって一歳差でも守備範囲内なの……?」

「一個年下ならもう十分範囲内」


 親指立たせる北王子。

 魁星が割と本気で怯えている。

 周があまりの怯え振りに「どうしました?」と聞くと、「クソババアの付き合ってた彼氏の中にショタコンいたことあって……」とそこまで言われると大体お察し。

 世の中本当にいろんな性癖の人がいるなぁ、と感心する。

 とりあえず周がさらに心配して「まさか被害が?」と恐る恐る聞くと、魁星は「目が怖かった」とのことで、実質の被害はなかったが……いや、十分被害を受けているか?

 とにかく怖い目には遭っているらしい。

 それを聞いた北王子は「いやいや、真のショタコンはお触り禁止だし、視姦は気づかれたらそれは雑魚」と真顔で言われた。

 性癖歪むの早いねぇ、と淳が笑いながらフォローするが、北王子は胸を張って「まあね!」と言い放つ。


「むしろそれを表に出していくと個性が出ていいんじゃない……かなぁ?」

「え? ……いいの……?」

「まあ、珍しいことだし? 俺のドルオタも性癖といえば性癖だし」


 と、淳が言うと他の三人が肩を掴んで首を左右に振る。

 しかしドルオタは拳を握って「いや、大丈夫! むしろ厄介ファン避けにもなるし!」と言い放つ。

 その説得力に、三人ともスッと手を離した。

 特に最近淳と同じく厄介ファンに悩まされている魁星と周が、厄介ファン避けの武器・盾があるのは羨ましい。


「俺もなにか変な性癖とかあればいいのか? どんな? ろ、ろりこん……? 全然そんな気ないんだけと……」

「うちは過干渉の親のことを言えば……?」

「二人は落ち着いて」


 魁星と周が混乱し始めてしまった。

 一旦二人を落ち着けながら、改めて北王子の方を見ると哀愁漂う神妙な笑顔でゆっくりスケジュール帳にフォトカードをしまう。


「今年からそれでいくよ」


 決意した顔に、天皚が一番変な顔をした。

 淳としてはアニメオタのアイドルや漫画オタのアイドルも増えているし、特になにも問題ないと思っている。

 淳自身、ドルオタだし。


「っていうことで早速一年生見に行かない?」

「オープンにすると決意してからフルスロットルなのやめた方がよくない!? ねぇ、淳ちゃん、密っちがいきなりフルスロットルでトップスピードでスタートダッシュしてるんだけどこれは止めるべきじゃない!?」

「ライブオーデションのこともあるし、圧をかけにいくのはいいことなんじゃない?」

「魁ちゃん、周っち、淳ちゃんがこんなこと言ってるんだけど!?」

「やめよう! やめよう!? それは止めて!?」

「淳、それは止めるべきです!」

「え? なんで?」


 全力で引き止められた。




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