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ソング・バッファー・オンライン~新人アイドルの日常~  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』
6章

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二年生になりました(1)


「うわー! 淳ちゃん髪の毛どうしたのー!」

「あれ? 天皚、ジュンジュンの髪初見?」

「初見初見。送祝祭は別のスペースで売り子してたから。えーーーー! すげー! でも似合ってる」

「ありがとう〜」


 と、笑顔で天皚にお礼を言う。

 周からも「自分とも魁星とも色が被っていなくていいですよね」と頷き合う。

 今日から二年生の教室だが、クラス替えなどはないので顔ぶれは変わらない。

 むしろ、髪型が変わった淳に「その手があった」「そうか、イメチェンという手」「先輩になるからには、こう、一年に舐められないようにする必要が……そうか……」とそれぞれ変な反応。

 最後にはみんな「似合ってる」とか「これ以上イケメンになるな」と言われるので、悪くはなさそうだけれど。


「っていうか、背もなんか伸びてない?」

「伸びてるかなぁ? 制服の裾は確かに気にはなってる」

「足りてなくない?」

「三年使う前提で買ったから、裾が足りないのは困るんだけど」

「え……? あ……本当だ……? なんか目線が近い……!?」

 

 魁星が天皚の指摘にハッとして、改めて淳を見つめて呟く。

 毎日顔を合わせていると、よほどの変化でないと気がつかない。


「……近くなったか……?」


 が、魁星はすぐに訝しんだ視線を淳に向ける。

 天皚もそうしつこく疑われると自信がなくなってしまう。

 

「まあ、今週末に健康診断で身長体重を測って公式ホームページの所属アイドルプロフィールが更新されると思うから」

「え……公式ホームページのプロフィール……?」

「え? うん。え? 東雲学院芸能科の公式ホームページに、プロフィール表があるよ。宣材写真と一緒に毎年更新されるんだけど……。え? 去年の健康診断前に言われたよね?」

「「「………………」」」

「魁星? 周? 天皚?」


 三人ともそれぞれ目線を彷徨わせる。

 嘘だろ、こいつら。二年目だぞ。


「興味あるのならあとで覗いてみたら? プロフィールのアイドル紹介欄って、申請すれば簡単に自分で考えた紹介文を掲載してもらえるし」

「じゅ、ジュンジュンはまさか自分で考えてるの?」

「さすがに恥ずかしいからやってないよー。でも、今年はやろうかな。営業になるし」


 そして淳の今年の目標は営業を頑張るのと、声量増強。

 去年は声変わりや星光騎士団の練習、第二部隊の隊長としての仕事なども重なって、覚えることが多すぎた。

 あまり自分を成長させるために、時間を割けなかったように思う。

 もちろん、去年のことはそれはそれでしっかり自身の肥やしになっていると思うけれど。

 できなかったことができるようになっているし、知らなかったことをたくさん知ることができた。

 そういう方面の知識を得られたことは、財産だ。

 しかし今年は第一部隊のメンバーとして、ある意味であまり責任がある立場とは言えない。

 宇月にも「今年は自分磨きしなー。その代わり来年の団長として色々教えるからー。まあ、去年第二部隊の隊長として結構覚えたことの応用みたいなもんだから、大丈夫だと思うけどぉー」と言われている。

 宇月、マジ優しい。

 来年の“団長”として、さらに自分を高められるよう努力をする年。

 だからこそ、ホームページの自己紹介文は自分で考えて申請しようと思っている。


「営業かぁ。去年とは違った、新しい魅力を身につけていく必要があるんだよな」

「自分は今年、ネットのクイズ番組などに参加して知識系に振っていこうと思っていたのですが……その時間はあると思いますか?」

「え? うーん……スケジュール管理次第じゃないかな? 周ならできそうだけど、それと同時に卒業後の進路も考えておくといいかも。二人とも夢や目標はなかったでしょ? 一年間アイドル活動をしてみて、心境に変化とかあった?」


 と、淳が聞いてみると、魁星と周は顔を見合わせた。

 魁星は去年、母のところから逃れることに注力。

 寮に移ってから、魁星の母とは音信不通になっているらしい。

 おそらく新しい彼氏のところに行ってしまったのだろう。

 周の家は祖父母と元旦に話し合いが行われて、近況報告したと聞いている。

 初めての一人暮らしで過干渉の両親から離れての生活について。

 開放感やばい。

 もうあの生活には絶対戻らない。

 自活は確かに大変だったが、あの地獄に比べたらまったく苦ではない。

 と、いう話を祖父母に切々と語った。

 しかしながら、卒業後どうするのかは二人ともまだ明確に決めてはいないまま。


「うーん、綾城先輩も花崗先輩も大学には通うんだよね? 俺はこれ以上勉強したくないけど、花崗先輩が受かる大学が存在するのなら俺も大学目指そうかな。芸能界入りしたらあのクソババアに見つかりそうだし、まだ悩んでるんだよなー」

「自分は大学を目指しますよ。IGで東雲学院芸能科から大学へ通いアナウンサーになった方がいたでしょう?」

「白羽先輩?」

「はい。自分の話し方はアナウンサーのようだとファンの方に言われる機会が多かったので、目指してみようかと」

「いいねー! 俺も合ってると思う!」


 ハキハキとして聞き取りやすい口調と声。

 アナウンサーとしてもやっていけそうな偏差値。

 淳ととても向いていると思う。


「なので今から受験勉強もやっていこうかと。クイズ番組に出演するのも、その目標の役に立つと思うのです」

「うんうん。応援するね」

「明確に決まってるんだ? 偉いなぁ、周」

「魁星もすぐに見つかりますよ。あなたはアイドルに向いていると思うので、卒業後もアイドルをやればいいと思いますけど」


 周の言葉に変な顔をする魁星だが、淳も同意見だ。

 魁星には人目を惹く魅力がある。

 もちろん強制なんてできないけれど。



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