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卒業式と送祝祭(4)


 宇月に「出演するならこのままパソコン室使っていいけど」と言われたが、普通にお客さんとして参加したいのでお断りした。

 綾城と花崗はラストライブを終わらせてから、そのまま練習棟に戻ってシャワーを浴び、食事休憩を取ってからSBOにログインするとのこと。

 淳もシャワー室を借りて、サッパリしてから帰宅する。

 

「淳ちゃんログインするの?」

「うん」

「真顔……。そっかー。じゃあ俺もログインしようかな〜」

「え? 魁星、SBOログインするんですか? SBOの方は一年、二年は任意参加でしたよね?」

 

 と、意外そうな表情をする周に、魁星は少しだけ拗ねた顔をする。

 淳は首を傾げたが、周はすぐになにかを察した表情。

 

「えっと、よくわからないけどログインするのならまたその時に待ち合わせする?」

「うん……」

「はあ……仕方ないですね。ゲームの中のライブも勉強になるので、自分もログインしようと思います。ライブステージは『ファーストソング』ですよね?」

「うん、そう。全部のサーバでゲーム内放送されるんだって! じゃあ、俺もご飯食べたら即ログインするから! あとでねー!」

「「はーい」」

 

 と、心を弾ませながら帰宅。

 淳の帰宅と同時に駐車場に車の停まる音。

 間もなく両親が帰宅してきた。

 

「「ただいま!」」

「おかえり!」

「おかえりなさーい、お兄ちゃん、お父さん、お母さん! 夕飯の下拵え終わったから、行こう行こう!」

「すぐ準備するわ! 淳と智子は先にログインしてていいわよ」

「はあ、はあ、早退してきてよかった。まだ星光騎士団三年生組の出演時間、まだだよね!?」

「まだ! まだ! 一応四時からの予定! 今学校でご飯食べてると思う! ご飯っていうか、時間的におやつだけど」

 

 ライブのあとはめちゃくちゃお腹が空く。

 まあ、それ相応のエネルギーを消費するので仕方ない。

 また長丁場――午後八時までの予定――なので、ここでシャワーとエネルギー補給しておくのは必須だろう。

 特にVRMMOは体力はあまり使わないが、精神力を使うので。

 卒業祝いに花束は贈ったが、裏でしっかり栄養補給してほしいと思って、ケーキとお弁当を作って置いた淳と周と後藤。

 多ければゲーム内『送祝祭』が終わったあと――午後八時頃――にお食べください、と付箋に書いて置いた。

 周は調理研究部で一年かなり料理の腕を上げたので、淳と後藤はかなり助けてもらったのだが、魁星は逃走。

 宇月のお手伝いに立候補。

 まあ、魁星も入学後から考えてかなり包丁を使えるようになったと思うけれど。

 

「それじゃあ! 行くぞ、『送祝祭』SBOバージョン!」

「また『ファーストソング』でね!」

「うん! また後でねー!」

 

 と、音無家家族全員でそれぞれの寝室へ。

 なお、両親は別に夫婦仲が悪いわけではなく、双方仕事部屋も兼ねているのでそれぞれの仕事部屋兼寝室があるだけである。

 淳も自室に戻ってから、部屋着に着替えてフルダイブ型VR機を取り出す。

 充電は昨日の夜からしているので万全。

 

「ゲームスタート」

 

 少し久しぶりのログイン。

 キャラクター『シーナ』を選択。

 最後にログアウトしたのが『シックスソング』の宿屋だったので、一瞬「やっちまったー! 昨日のうちにファーストソングの宿屋にセーブポイントを移しておけばよかったー!」と頭を抱えかけたが、転移は簡単なのですぐにマップを開く。

 

「あれ? 新機能?」

 

 マップを開くとフレンドの名前と赤い点が表示されるようになっている。

 おそらくログイン中なら、フレンドの居場所がわかる機能が実装したのだろう。

 ログイン中のフレンドは淳の両親と智子。

 ラチカ――千景とハルナ――鶴城一晴。

 

「え、えーーーっ! 鶴城先輩、ログインしている!」

 

 というか、向こうのことがわかるということは、こっちのことも向こうに筒抜けということでは。

 居場所は全員ファーストソングに集まっている。

 今一番難易度が高い新エリアの方にエイランとエルミーの反応もあった。

 あの二人、今もバリバリ攻略しておられるのか。

 現時点で最高難易度のダンジョンにいらっしゃることに、心の底から「ヤバァ……」と思った。

 現時点での最高難易度ダンジョンがあるのは、最近解放された新エリアのはず。

 それに挑戦している……あるいはすでに攻略済みで、素材集めなどしているのでは、と思うとプロとプロに追随するプレイヤースキル持ちの変態ヤベェ、となる。

 ゲーム運営サイドもあんなのがいたらゲームの難易度考えるの大変だろうなぁ、と同情してしまう。

 今のところ、SBOの運営は学生セミプロのアイドルを取り込み、『Blossom(ブロッサム)』以外のプロアイドルにも広げていきたいところだろうに。

 だが、しっかり普通の、アイドルに興味のないプレイヤーも取り込んでおかねば『新規顧客開拓』の名目が果たせない。

 エイランとエルミーがガッツリ攻略を楽しんでおられるのなら、ゲーム自体を楽しみたい層も増えていくはずだ。

 一応、エイランはプロゲーマー。

 彼自身は「歌が苦手だから、SBOをやるつもりなかった。エルミーがいなければやらなかったかも」とまで言っていた。

 歌の苦手なプレイヤーも、歌が上手いプレイヤーと一緒なら最高難易度ダンジョンまで行けてしまうのだ。

 ファーストソングのステージで行われるライブはサーバー全体の“バフ”に適応されるので、それを上手く使えれば歌が苦手な攻略ガチ勢を十分楽しませることができる――ということ。

 ガチ攻略勢も楽しんでくれるのなら、ライブをやる方も嬉しい。



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