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ソング・バッファー・オンライン~新人アイドルの日常~  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』
6章

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いちごのコラボユニット(3)


「遅くなってごめーん」

「ちわす」

「あ、苳茉(ふきま)くん、長緒くん。お疲れ様〜」

 

 長緒と苳茉が同時に入ってくる。

 やる気が相変わらずなさそうだが、挨拶するようになっただけマシかもしれない。

 淳と千景はスマホでSBO内の東雲学院芸能科公式ショップに追加された、新しいアイテムを緋村と飯葛に紹介していた。

 全員揃ったので、ちょうどいい。

 

「あ、ねえねえ、緋村くんたちには少し話したんだけど、二人にも聞いてほしいんだよね」

「うん? なになに?」

「SBOの東雲学院芸能科公式ショップに俺たちのコラボユニット『いちご狩り』のオリジナルグッズを置いてもいい?」

「え? なに? は? どゆことどゆこと? 俺らって農家さん依頼の農家さん応援で、グッズは出ないんじゃなかったの?」

「うん、毎年そうなんだけどね、今年はSBOっていうデジタルな世界で、グッズをデザイン、発注、納品ていう工程をすっ飛ばしてグッズ制作ができるんだよね。学院側と農家さんに話したら、『いちごの宣伝になるのならいいよ』って許可ももらえたし、あとはユニットメンバーの許しぐらいなの。デザインは千景くんが考えておいてくれたから、ゲーム内にアップデートしてログインしてグッズ制作すればOK。グッズは個々の売り上げに入るから、絶対やった方がいいと思う」

「ま、マジで?」

「グッズって、ゲーム内で、だよな? どんなグッズなの?」

 

 興味を惹かれたらしい飯葛が、千景の持つタブレットを覗き込む。

 不安そうだが、千景が「あ、アバター衣装と……いちごと、メンバーそれぞれの名前が入ったうちわ、と……」と説明していく。

 ライブまでまだ少し時間があるので、ここで話をまとめておいて、夜にログインした時に制作、ショップに品物としてデータを納品したい。

 最近、千景は新職業のレベルが上がって『効果付与』ができるようになってきた。

 所詮はアバター衣装なので、衣装自体に効果――防御力アップや素早さ付加など効果はつける必要もなかったのだが、職業レベルが上がって防具衣装としての製作ができるようになったのだ。

 これは鍛治師の職業も取得したおかげと言える。

 今はまだ、大した効果を付与できないが、いつか防具としての効果も持つ衣装の販売もできるようになるかもしれない。

 もちろん、今回は普通のアバター衣装として制作予定だけれど。

 ただグッズの方は小さいなりに効果はあった方が売れるだろう。

 レベルが上がっても売り上げに直結しかねないので、高い効果のグッズは作れないだろうけれど。

 

「け、結構色んなグッズ作ってくれるんだな? ゲームの中で売る、んだっけ」

「そうそう。千景くんが最近職業レベルをガンガン上げててくれるおかげで、グッズの売り上げが全体的に上がってるんだよね。あ、SBO内の話ね」

「お、音無くんがゲームのことを色々教えてくれるおかげです……」

「俺たちは学院と農家さんがいいならいいよ」

「苳茉くんは?」

 

 あまりアイドルに興味のなさそうな苳茉。

 彼はなんとなく、嫌がりそうだな、と思った。

 けれど苳茉は嫌ともなんとも――そもそも感じない。

 どうぞお好きに、という投げやりにも見える。

 

「なにが?」

「え? えーと、だから苳茉くんのグッズをSBOっていうゲームの中のショップで販売してもいい? っていう……確認?」

「売らなくていいよ……俺の売上とか、お給料とか……あったら会っただけ、保護者の母さんの財布に入るから……」

「あ……お……あ……」

 

 これは魁星と同じ系統の母親か。

 言葉に詰まる一同と、なにも感じていない眼差しを斜め下に向けて虚無の表情。

 息子を利用するだけ利用するのが苳茉の家族。

 まあゲーム内で迷惑をかけられる分には問題ない。

 凛咲には「ゲーム内だったら厄介客を強制排除可能だから、苳茉の家族みたいなやつはばんばんゲーム内に誘導しちゃえ♪」と親指を立てていた。

 しかし、保護者に学生の苳茉の収入を吸い上げられるのは可哀想すぎる。

 

「あのね、苳茉くん。うちの魁星もお母さんにお金を渡すように言われて東雲学院芸能科に入学してたんだけれどね、自分で口座を作ってそこにお給料を全額振り込んでもらって、お母さんには『学院でもらえるお給料は一律一万円だから~』って言って毎月五千円手渡してるんだって」

 

 お金目的で息子を東雲学院芸能科に入れてアイドルにする親というのは、意外なことに毎年必ず数人いるらしい。

 その対策として、学院側では「自分で口座を作るように」と「お給料を管理しようとする親には学院の校則で一律一ヶ月一万円のみの支払い。学生ごとに積み立てており、卒業の時に積み立てしていた分を渡す」と親に説明しているそうだ。

 親同士の繋がりで問題が発生した場合はその都度説明はするが、子どもが稼いだお金を取り上げようとする親と子どもの意思を尊重して自立を促す親はそれぞれかなり貧富に差がある場合が多く、双方話が通じないことが多い。

 なので裕福な親はすぐに察して、”そういう親”から自主的に距離を取ってくれる。

 子どもからお給料を取り上げる親を持つ子どもは、比較的しっかりしており自立を目指す子が多い。

 魁星もお給料を貯めて、寮からアパートに転居しようと考えている。

 しかし部屋を借りる未成年は、親の許可が必要。

 なので、卒業まではしっかりお金を貯めて、十八歳になって親の同意なく自分で部屋を借りられるようになったら親の知らぬ、セキュリティーのしっかりとしたところに引っ越す計画を立てている。

 そこまで説明すると、苳茉は目を丸くした。







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