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新年のコラボユニット(5)


 いちご農家応援イベントは三日間。

 初日に変なお客は来たものの、以降は特になく、無事に例年通りに終了した。

 凛咲の車で学院に帰り、練習棟一階の共有ブリーフィングルームで今後の話し合い。

 本来なら今日でコラボユニットは解散なのだが、初日にケチをつけられて物販の売り上げ金額が淳と千景の想定を下回ってしまった。

 なので――

 

「今日限定のコラボなんですが、今月の定期ライブでも今回の曲を披露しようと思います。意義のある人〜」

「「「ないでーす」」」

「ないです」

 

 むしろぜひー、と手を挙げられて淳も「了解〜」と定期ライブ執行委員会に出す書類に署名する。

 千景も心なしか嬉しそう。 

 いやもう「音無くんとまたライブご一緒できるの嬉しい」とオーラからも出ていて普通に可愛い。 

 では引き続き合わせの練習を、と日程を合わせてからその日は解散。 

 苳茉を呼び止めて「苳茉くん、初日に来た三人の女性なんだけど、心当たりはある?」と聞いてみた。

 

「……うちの、母と、姉と、妹」

「あ、やっぱり」

「ごめんなさい。迷惑、かけて」

「え? ううん。ああいうお客さんは定期的に沸くから、別にいいんだけどね?」

 

 と笑顔で言うと目を丸くされた。

 変なことは言っていないと思うのだが。

 

「音無ー、ちょっといいー?」

「え? あ、はーい! 今行きまーす。ごめんね、ご家族をなんとかしろ、とは言わないんだけど、くる時は教えてくれると助かるな、って話をしようと思ってたの。できそうな時は教えてほしいな。よろしくね」

「え、あ……う、うん……わかった……?」

 

 苳茉にそれだけ伝えて、ブリーフィングルームから顔を出した凛咲の方に戻る。

 どうしました、と駆け寄って用件を聞くと「今年の卒業式、SBOの中でやることになったんだよ」と言われて仰天した。

 

「え、えええ……!? 学院でやらないんですか!?」

「短縮した卒業式をやって、翌日の『送祝祭』も普段より短くして、午後三時から午後七時までSBO内でも『送祝祭』をやる。ほら、初日に厄介なセコケチ親子が来ただろう?」

「はい、あれですね」

「新規が増えているのは喜ばしいけど、そういう客トラブルも増えるって教師間でも警戒していたんだ。んでな、いっそ撮影解禁しちゃえばって綾城が言い出したんだわ。ゲームの中の“イベントとして”ならオッケーだろうって。そこで新規にゲーム内マナーを通してリアルマナーも学んでもらおうぜって」

「ああ……なるほど」

 

 ゲーム内だと殴り合いに発展してもある程度、強制ログアウトやアカウント停止などの処置が可能。

 運営と提携しているので、東雲学院側の裁量で対応もしてもらえる。

 初心者のアイドルファンに対してもゲーム越しにファンマナーを覚えてもらえるし、ゲームを通した新規ファンを取り込めるし、アイドルの安全性も間違いない。

 ゲーム側も東雲学院で新規取得した層を取り込めてwin-win。

 

「いいと思います」

「だろー。ゲーム内の『送祝祭』でライブ撮影&配信をOKにする代わり、現実の『送祝祭』は校内の撮影全面禁止にする。今までは物販や屋台販売物をOKにしていたけれど、それらの撮影をするように見せかけて屋台に買い物に来た生徒の盗撮が多かったからなー。屋台側にもOKもらってるから、今後は『イースト・ホーム』の投票機能もオリジナルサイリウムで行えるように改良する予定だ。今からファンの間にそういう情報流しといてくれない?」

「俺が? え、いいんですか?」

「古参ファンはいつもお世話になってるからなー。急に発表すると困っちゃう人もいるだろー? だからお前が知り合いのファンに“噂”程度で情報流しといてよー。前情報があるだけで違うだろー?」

「はい、そうですね。わかりました。今月の定期ライブで、話を出してもいいですか?」

「うん。投票用サイリウムは三月か四月には導入できるみたいだからさー。よろしくな!」

 

 というか――屋台で売られている屋台飯を撮影するついでに、生徒の盗撮だなんてドルオタ歴の長い淳も初めて聞いた。

 そんな姑息な真似をする人がいたのか、と呆れてしまう。

 屋台飯の動画、写真の撮影及びSNSへの掲載は禁止されていない。

 理由として東雲学院が地域企業と提携し、町おこしの役割を担っていたから。

 お客さんにSNSに屋台の商品を掲載して、宣伝してもらうために、推奨すらされていた。

 だがそれを悪用して、屋台に昼食を買いに来たアイドルを盗撮していたとは。

 

「しかし、盗撮してなにしてんですかね? SNSに上がっているところは見たことがないのですが」

「個人で楽しんでるのがほとんどみたいだな。ただダメってわかっててやってるやつばっかだから、アイドル自身に見せて自慢してくるらしいぞ」

「ウッワ……」

 

 ある意味自白だが、本人は悪いことをしている自覚がない。

 個人で楽しむ分にはOKという考え方なのだろう。

 東雲学院のアイドルは原則撮影禁止だ。

 個人で楽しむのもNG。

 撮影禁止はそこまで厳しいし、校門で自由に取れる冊子の表紙にもしっかり大きく記載してある。

 理由は綾城の炎上騒動の時に、無断撮影した画像を加工してSNSで拡散されたからだ。

 それ以降、東雲学院芸能科アイドルの動画・写真の撮影は個人で楽しむためのものも含めて公式以外は全面禁止になった。

 

「じゃあ、その辺も古参ファン仲間に共有しておきますね」

「うん、よろしく」



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