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新年のコラボユニット(4)



「めっちゃ怖い。どうしたらいいの?」

「うーん……今日は気にしなくてもいいと思う。また午後も来るようなら、凛咲先生が対応を検討してくれると思うし」

「今、倉治先生に連絡したから午後のステージには間に合うと思うー」

 

 えっ、と長緒たちが硬直。

 あの強面の先生が?

 とても元アイドルとは思えない、あの角刈りジャージサンダルの絶滅危惧種並みの体育教師が――来る?

 

「なら安心ですね」

「うん」

「普通の人間ならあの人が立ってるだけで近づいてこないよね」

「だねぇ」

 

 学院内では竹刀まで持ち歩く人だ。

 女性なら怖くて近づいてこないだろう。

 忘れそうになるけど、元アイドルなんだが。 

 ちらり、と苳茉を見ると相変わらず無視。

 おそらく苳茉の家族と思ったが、苳茉もあの女性たちも、関係性は口にしていなかった。

 顔貌が似ている、とは思ったけれど、それだけだ。

 確証がないのだから「苳茉くんのご家族なんとかならない?」とは頼めない。

 

「あの家族……三、四年前からたまに定期ライブに来てましたよね……」

「うん、ちょっと有名だよね」

「え? 音無と御上、あの家族知ってるの?」

「多分……」

「うん、多分。東雲学院芸能科ファンの間で注意しても聞き入れられないDQN家族っていくつかいるんだけど、その一つ。母、娘二人のセコケチ三人組は噂になってるね。アイドルグッズの万引きとか、他のファンの持ってるグッズを『もらってあげる』とか言って勝手に持っていってるとか。他にも男の人、ひょろ長で可愛い系ショタふうアイドルオタクとか、脇の下フェチ無断撮影マニアとか……ファンの中では警戒対象リストになってるんだけど」

「ちょちょちょ……!」

「濃い! 濃いよ!」

 

 そういうファンは比較的レアキャラ。

 男性のドルオタはわりと毎回毎月ライブに来るけれど、女性の厄介ファンは(ほとぼ)りが冷めたらまた現れ出す生態。

 今まで長緒たちがそれらに遭遇しなかったのは、長緒たちがそれらの琴線に触れなかったから。

 

「アレなんだよね、男性の、そういう性癖特化形ドルオタは毎回定期ライブに来るんだけど、推しをつけ回すだけでお金もかなり落としてくれるし悪くはないんだよ」

「そ、そう……問題は女性の、厄介ファン」

「うん。女性の厄介ファンはセコケチとガチ恋の大きく二種類いるんだけど、ガチ恋は割とお金を使ってくれるんだけどセコケチは無料でアイドルにチヤホヤされたい人たち。お金を使わずにお姫様扱いして、特別扱いを強要してくる傾向が多い」

 

 淳は数年、定期ライブに通っているので古参ファンの人たちに厄介ファンについてもよく聞いていた。

 彼らの分析によると、新規ファンの中にそういうのが発生するとファンの間でマナーを教えて撃退、または矯正する。

 矯正するファンは若い人が多く、そういうファンは比較的まっとうなファンに進化するのだ。

 なぜならちゃんと素直に先輩ファンの言うことを聞くファンは、アイドルの推し方をわかっていない層だから。

 だが、セコケチ型はそうではない。

 割と一定以上の年齢で、学生セミプロだからと盛大に舐めていやがる。

 まだ年若い少年たち――特に入学したての一年生の前半の子らを狙い、言うことを聞かせるために大声で捲し立てて恫喝のようなことも平然とやらかしてくるのだ。

 

「「「こわい」」」

「この時期に出てくるってことは、アレだよね」

「う、うん……。綾城先輩の時に、逆に加害側だってわかった厄介ファン援護側だったのを、やっと熱りが冷めたと出てきたんだと思う……」

「狙われるとしたら今年入学してくる子たちだよね。守れるように各グループに注意喚起しておく必要があるかも」

「そ、そうですね……注意喚起しておかないと……いえ、しておいても、特別扱いして、炎上してしまう子が出かねない、ですよね……」

 

 千景が心配しているのは、恫喝に負けてチヤホヤしてしまう新入生が出てしまうこと。

 綾城の炎上騒動は東雲学院芸能科のアイドルにも恐怖心を植えつけた。

 炎上したくない、恫喝されて怖いから、とセコケチ厄介ファンの言いなりになって校則違反をしてしまう新入生が現れれば、その子は志半ばで転科を余儀なくされるだろう。

 それは、あまりにも……。

 

「ハァーーーーーー。だから出禁にしろって言ってるのに。どーせあいつら金も落とさないんだしさー。ま、今回の生配信で証拠も手に入ったし、出禁処置を改めて上にかけあってやるよ」

「凛咲先生、ありがとうございます!」

「気にするな。生徒を守るのは教師の仕事! おれは元々星光騎士団を守るのを目的に教師になったんだからなー。東雲学院の先生になった今、東雲学院の生徒は全部、おれの守るべき対象だ。卒業したっておれは騎士のまま! ドーンと任せろよ!」

「「カッコイイーーー」」

 

 感動する淳と千景。

 やはり凛咲は生まれながらの騎士。

 彼がいれば大丈夫な気がする。

 ちらり、ともう一度苳茉を見てみると、苳茉が目を見開いて凛咲を見ていた。

 淳の“分析”だと苳茉にとって“子どもを守る大人”を初めて見たのだと思う。

 今まで彼が生きてきた環境の中で、彼は押さえつけられるだけの存在。

 苳茉は少しだけ口を開きかけ、閉じる。

 小学校、中学校でももしかしたら家族以外の大人に――教師に助けを求めたことがあったのかもしれない。

 けれど、きっと助けてもらえなかった。

 その絶望感が、閉口した姿から窺える。

 

(うーん……苳茉くんもなんとかしてあげたい……けど、どうしたらいいものだろうか……。魁星みたいにまずは家族から離れた方がいいだろうけれど……)









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