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師走は忙しい


「へー、『聖魔勇祭』って星光騎士団、魔王軍、勇士隊が主催なんだー」

「「今気づいたの……?」」

 

 出回り始めた『聖魔勇祭』のチラシを読んでいて、ようやくそのことに気がついたらしいアホの魁星。

 星光騎士団の新規グッズのサンプルを確認していた淳と周は呆れ顔。

 それにびっくりした魁星。

 宇月と花崗が仕事を減らして運営作業をしていたのに、ほとんど気づかなかったのか。

 

「淳が星光騎士団の新規グッズのデザインを作っていたじゃないですか」

「え……!? あ、あれ、『聖魔勇祭』のためのものだったの!?」

「え、そうだけど……。来年発売のものもあるけど、Tシャツとトートバッグは『聖魔勇祭』用だよ。来年の校内売上ランキングの個人売上に関わるものだから、頑張って作ったんだけど……どうかな?」

 

 と、サンプルを見せてくる。

 いや、普通にかっこいい。

 魁星のTシャツとトートバッグは『花房魁星』のイメージで、星空ふうの生地に花火と名前が書いてある。

 周は朝日のような深みのある青に名前と、二重の円がデザインされていてかっこいい。

 淳のものは白地にサイリウムと名前。

 ドルオタを隠しもしない、微妙なはずなのにセンスのよさでパッと見かっこ悪く感じない。

 

「ブッサーさぁ…………」

「ひっ、ヒィッ……!」

 

 真後ろに立つ影。

 笑顔の宇月に震え上がる魁星。 

 

「お前僕らが準備にあくせくしている中、コラボユニットの練習だけでいっぱいいっぱいになってたんだぁー? ふーーーん?」 

 

 怖い怖い怖い。

 笑顔が威圧感で満ち満ちている。 

 思わず正座になる魁星。 

 

 

「ところでさぁ、明々後日から冬休みじゃん?」 

「そ、そうですね」 

 

 一応、十二月二十三日から冬休み。 

 と言っても明日が土日なので実質明日から冬休みである。

 しかし三十日に『聖魔勇祭』があるので、各グループはその準備に追われるだろう。

 主催の三大大手グループには休みなどない。

 チラシの配布、生配信での周知・告知、個人の仕事、グループの仕事、他グループへのライブ通知、コラボユニットの練習と当日の配信準備など。

 ほとんどはイベント会社が準備を進めているものの、演者でありながらその他の雑務も運営として行わねばならない。

 淳はその中で新規グッズの制作をデザインから任された。

 ドルオタとして、ドルオタがほしいグッズを好きなように作ってもいい、という許可の下、好き放題にさせていただくことに。

 ということでずっとほしかった星光騎士団メンバー全員分のTシャツとトートバッグというなかなか大きなグッズを作らせていただいた。

 一年生分だけでなく、三年、二年の四人分もサンプルの入っているダンボールから出して見せようとしていたのだが――流れが怪しい。

 

「ブッサーはちぃーっとも星光騎士団の活動に興味がないみたいだしぃ、僕が色々教えてあげた方がいいと思うんだよねぇ。体力足りなくてグッタリしてるのも弛んでそうだしぃ。コラボユニットの練習もあるんでしょぉ? 僕がたーっぷり練習手伝ってあげようね〜。明日も出ておいでよぉ。ね〜?」

「ひ、ひっ……お、おれ、俺だけ……ですか……!?」

「えー? どうだろー? クオーちゃんも来るぅ? ナッシーは言われなくても出てくるつもりでしょぉ?」

「はい。明日は来年用のスカジャンサンプルが届くんですよ……! 一番楽しみにしてたんです、スカジャン! 値段はどうしても高くなっちゃうんですけど、星光騎士団らしくないのに星光騎士団っぽい個々のイメージにあったスカジャンって絶対かっこいいじゃないですか! あと、ぬいですね! ぬいとスカジャンは量産不向きなんで、サンプルはしっかりと吟味してお返事をしようと思っています。スカジャンとぬいはほんっとずっとほしかったんですよ〜! あ、ぬいの件は後藤先輩にもぜひご意見をいただきたいんですけど」

 

 と、淳が早口で言うと、コラボユニットメンバー用の衣装を縫っていた後藤が振り返って親指を立てる。

 ブリーフィングルームなのにミシンの音が止まない。

 今は一年生コラボユニットメンバー用の専用衣装を作っておられる。

 優しい。

 

「クオーちゃんはどうするぅ?」

「……も……もちろん……。ぜ、ぜひ……ご、ご指導、よろしく、お願いします……」

 

 ガタガタ震えながら周も床に正座して頭を下げる。

 書類整理をしていた綾城と花崗が「美桜ちゃん、あんまりいじめちゃダメだよ」「みーちゃん、リーダー引き継ぎの続きやらなあかんよ」と引き留めてくれた。

 リーダーの引き継ぎ、という単語に頬を膨らませつつ、宇月が「はぁい」と返事をしたあと冷たい眼差しで魁星と周を見下しながらをじゃあ冬休み、ちゃーんと来てねぇ?」と口許だけ笑む。

 怖い。

 

「怖い……怖い……」

「まあ、来年は矛先が新入生に向けられると思うから……」

 

 と、フォローするけれど来年無事に柳が入学してきたら、さすがの宇月もここまで厳しくいびれないだろう。

 というか、淳が所属していた劇団はゆるゆるに見えてガチ勢には本気で体を鍛えるタイプの劇団。

 コミュニケーション能力向上のために通っていた淳はそこまでのことはしていないのだが、おそらく十和や聖、柳は鍛えられているタイプ。

 淳が体力作りをしていたのは、あくまでも“神野栄治が朝ランニングしていた”から。

 

「淳ちゃーん」

「あ、はーい?」

「来年第一部隊は美桜ちゃんとこーちゃん二人になるやん? で、一応星光騎士団は下の学年の子一人は第一部隊に入れる習わしなんよ。三月一日にわしら卒業やから、その日から淳ちゃん第一部隊に昇格してくれへん? 第二部隊の隊長は魁ちゃんかクーちゃんのどっちかに任せて」

「え、あ……!?」

 

 そういえばそうか、と歴代メンバーを思い出す。

 一年生三人顔を見合わせ、もし隊長を任せるのなら――と考えると。

 

「周、やる?」

「自分でよろしいのですか」

「魁星やりたい?」

「む、無理〜」 

「じゃあ、周で」

「わ、わかりました」

「ほな、そういうことで書類まとめとくわ」

「新入生のお世話、よろしくね。周くん」

「……!」

 

 今気づいたのか、ガバリと顔をあげる周。 

 つまり来年の新入生――もしかしたら柳の世話係をやることになるのか。

 

「周なら大丈夫!」

「っ……頑張ります」




 今気づいたんですけど『星魔勇祭』って打ち込んでたつもりだったけど『聖魔勇祭』になってたのでもうこのまま行こうと思います(愚)

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