表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/442

SBO情報イベント(2)

 

 

「以上、SBOの新情報でした! いやぁ、一気に色々実装されて、ますます充実してまいりましたな~」

「ギルドは面白そうだよね。実は俺と一晴、ゲームあんまり得意じゃないから一つ下の後輩、蔵梨柚子に色々教わっているんだよね。アイツもたまにログインしているから、三人でギルド作るのもいいかもね」

「いいですな。柚子はゲーオタですし、フルフェイスマスクについてもとても詳しかったです。我々圧倒されましたからなぁ」

「俺らの勉強不足が浮き彫りになったのね。あれはちょっと恥ずかしかったわ。言うてアイツ元々機材オタクでもあるから、知識で負けてるのはなんか仕方ない気もするけれど」

「ですなー」

 

 智子と顔を見合わせる。

 元東雲学院芸能科、星光騎士団所属のアイドル蔵梨柚子。

 ツルカミコンビの一つ下の学年であったため、彼らと縁深い人物だ。

 当時の映像にもゲーオタ、機材オタクっぷりが大量に残っており、機械音痴の鶴城は一際世話を焼かれていた。

 現在は『プロダクションミルキーウェイ』にて飛び抜けて人気の若手声優を務めている。

 音域が非常に広く、少年から老人、ロリ声から赤ん坊声まで出せる男性声優ではちょっとお目にかかれない技術力を持つ。

 またアイドルで鍛えた歌唱力、モデルで自分にも他人にも厳しいと定評のある神野栄治に鍛えられた容姿のよさも相俟って、鶴城一晴との2.5次元舞台も話題になった。

 現在も人気アイドルゲームの新キャラクターや、累計200万部突破の女性向け漫画原作のアニメでメインヒーロー役を担うなどその人気は今尚鰻登り。

 下手をすると知名度だけならツルカミコンビを上回るだろう。

 意外な人物の名前と、星光騎士団の繋がりがいまだに健在というところに星光騎士団オタクの兄妹は震えながら顔を覆った。

 オタクとは、推しが仲良しの誰かの話をするとそれだけでエモさに身を震わせる生態を持つのだ。

 なんなら別の推しから最推しの話題を聞かせられると、それはそれでそこからしか得られない栄養素があっていくらでも摂取したい。

 最推しから別の推しの話を聞くのも栄養価が高い。

 つまり、この状況は最高のシチュエーション。

 こんなのオタク大歓喜不可避である。

 

「そういえばお二人には今日、特別な特大情報をSBO内で先行公開してくださるというお話でしたが、そろそろいいんじゃないでしょうか? 集まってくださっているみなさんの中には、お二人の特大情報を楽しみに来てくださっている方もいると思いますし」

 

 と、広報部の人が話を振る。

 淳と智子が顔を上げてステージを見た。

 そう、それ! まさにそれ!

 淳と智子の目的はそれである。

 いったいどんな話を聞かせてくれるのかと、好奇心に満ち溢れた表情を向けていると栄治がマイクを持ち直す。

 

「それではお言葉に甘えて発表させてもらうね。えー、俺とここにいる鶴城一晴、そして同事務所所属の新人二人の計四人で、なんとー」

「アイドルグループを結成する運びとなりましたー! メンバーは四月二十五日に春日芸能事務所公式ホームページ、またはSNSアカウントで発表されますぞ! さらにさらに、五月四日、四方峰町ショッピングモール中央広場で開催される東西芸能科新入生対抗デビューライブいたします!」

「そしてそしてー、五月四日のデビューライブ後の翌日五月五日十九時からSBO始まりの町、ここ『ファーストソング』の中央広場でもお披露目ライブが行われまーす。詳細はSBO公式ツブヤキッターアカウントまたはSBO公式ホームページに掲載予定なのであとでチェックしてみてよね。グループ名はもう決まっていますがー、そちらは公式発表をお待ちくださーい。ま、って感じで本日はこの辺でお開きだよね」

「はい! 本日ご紹介した新機能の実装は、来週火曜日の十三時に行われるアップデート後ですぞ! 私と栄治が所属する新グループについては、春日芸能事務所公式ホームページに掲載予定ですが最新情報はツブヤキッター公式アカウントが最速かと思います。また、近日中にワイチューブでもグループ専用チャンネルが開設される予定ですのでそちらもぜひぜひチェックしてほしいですな!」

「じゃあ、今日は集まってくれてありがとうね。まだまだ進化し続けるSBOを、これからもよろしくねー」

「ですなー! では、さようならですぞー」

 

 ライトが消えて、ステージの付近が一気に真っ暗になる。

 ゾロゾロといなくなるカジュアル層。

 だが、淳と智子は余韻でいまだに動けない。

 

「やばい」

「わかる。やばい。どうしよう。母さんになんて言えば……」

「やばい」

「神野栄治様がまた……アイドルをやる……!」

 

 その場でしゃがみ込む神野栄治ガチ勢兄妹。

 あまりの感動に顔を両手で覆い、震えて動けない。

 しかし、震える中でも淳は「あれ?」と思い至る。

 珀が言っていた五月四日の“プロデビュー”と“初ライブ”――。

 

(え? え!? そ、そ、そういうことおおおぉ!?)

 

 つまり、綾城珀と神野栄治、鶴城一晴が“同じグループ”ということ。

 四人組、と言っていたのであと一人まだはっきりとはしないけれど。

 

「うわ……絶対推す……」

「推す~~~~! 五月四日絶対観に行くし五月五日のSBO内ライブも絶対観にくる~! 課金するううぅ!」

 

 悶絶する智子。

 もう、その前に自分の定期ライブによるお披露目が、すっかり宇宙の彼方に吹っ飛んでいた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【宣伝】
『不遇王子が冷酷復讐者の手を掴むまで』(BL、電子書籍)
5cl9kxv8hyj9brwwgc1lm2bv6p53_zyp_m8_ve_81rb.jpg
詳しくはヴィオラ文庫HPまで

『国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!』アンダルシュノベルズ様より発売中!
g8xe22irf6aa55l2h5r0gd492845_cp2_ku_ur_l5yq.jpg
詳しくはホームページへ。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ