『聖魔勇祭』のコラボユニット顔合わせ
「――と、いうわけで、来月の『聖魔勇祭』について、日織くんから楽曲提供いたしまーす」
その日の放課後、『聖魔勇祭』コラボユニットのメンバーが集められた。
当日の流れの説明と、コラボユニットの顔合わせと、雛森による提供楽曲の説明など。
一年生の『トップ4』は音無淳、花房魁星、狗央周、御上千景。
二年生の『トップ4』は後藤琥太郎、茅原一将、蓮名和敬、夏山真紅。
三年生の『トップ4』は綾城珀、朝科旭、石動上総、大久保結帆。
コラボユニットの担当の真水先生が「いやぁ、さすが一年生のトップ4は三位まで全員星光騎士団ですか。すごいですねぇ」と明るくパソコンを打ち込む。
「ふふん、でもトップ2はどちらも魔王軍ですよ」
「ハァーーー? 勇士隊だって全学年でメンバー入ってるし〜」
「一年生は一位から三位全員第二部隊かぁ。さすがだねぇ、綾城くん」
「ね、すごいよね。IG夏の陣で本当に頑張っていたから、報われてよかったと思うよ。一年生であの曲数を一日中歌って……偉かったもんねぇ」
と、段々感極まってきた綾城が涙ぐんでくる。
さすがキング・オブ・アイドル。
僻みもなにもなく、心から「うちの子頑張って偉い」と褒めちぎる。
それに対して朝科も大久保も「そうだよね、頑張ったよね。すごいよね」と優しい眼差しを一年生たちへ向けた。
「一年生のトップ4は初めてではないんですよね、コラボユニットが」
「はい、そうですね」
「すごいですね。では、楽曲の方は――」
「はいはいー。一年生のコラボユニット曲はこちらー。淳ちゃんが上半期一位だったから八月には書き上がってたんだけど……ハァハァ……マジ日織くんの書いた曲を淳ちゃんが歌ってくれるなんてマジ役得がすぎる……ハァハァ……」
「日織くん、落ち着いて」
朝科にどうどう、と宥められるが雛森の涎が止まらない。
あはは、と少し困ったように笑っていたが、隣に座っていた千景の方を見ると怯えていいのか雛森の作曲家の一面に喜んでいいのかわからなくて、奇妙な顔になっている。
とてもよくわかる、その表情。
まあ、そうなるよね、と。
「で、こちらが二年生トップ4用。一将が可愛く歌えるようにマジ超王道アイドルソングに仕上げたよ☆」
「雛森先輩本当最低ですよね……」
手渡されるUSBメモリ。
死んだような目で雛森を睨み上げる茅原。
完全に巻き添えなんだが……と呟く夏山。
「はい! 雛森先輩!」
「え? はい、なに? 蓮名くん」
「爆発は何色が似合う曲でしょうか!?」
「爆発は………………爆発は先生に聞いてみてね……」
雛森日織がドン引きしている。
さすが爆発の勇士隊。
柴が卒業するのでようやく爆発は減っていくのだろうと思ったら、蓮名はしっかり爆発を受け継ぐつもりらしい。
涙を浮かべて顔を青くする千景。
頭を抱える石動。
一気に顔を引き攣らせる他二年生メンバー。
「反対だ、絶対爆発はなしだぞ! 蓮名! 俺は認めない!」
「……っ」
「お、俺も爆発はちょっと!」
後藤が全力で首を横に振っている。
同じく全力で拒否してきたのは茅原。
反対派に乗っかる夏山。
二年生は――かなりの話し合いが必要になりそうである。
「そしてこれが三年生のトップ4用! これも八月には書き上がってたんだけど、ちょっと手直しした完成版」
「「ありがとう、雛森くん」」
「ありがとう、日織くん」
三年生の方は去年からメンバーが変わっていないためか、だいぶ慣れたもの。
先月からもちょっとずつ集まって、仮状態のデモ版で練習を始めていた。
USBメモリを受け取ってから、リーダーの綾城がスマホにダウンロードして、コラボユニット用のチャットルームにアップする。
「さて、楽曲の提供も終わったことだし練習についてだが――」
「スタジオを確保しました。スケジュール用カレンダーも添付したのでご確認ください」
「ありがとう、周。振付師さんへの依頼も終わったし、チャットルームへ楽曲アップもしたので各自ダウンロードして確認してください」
「あ、ありがとうー」
「あ、ありがとうございます……」
きょとーん、とする二、三年と真水先生。
コラボユニット経験者とはいえ、一年生でサクサク進める淳と周に先輩たちもびっくり。
なにもやることがない魁星と千景。
「あー……えーと……こっちもチャットルームにアップしといたわ」
「(こくり)」
「ありがとう、茅原くん」
「オッケィ!」
「つーか、これは後藤の仕事だろ、本来は」
「………………」
二年生の方は茅原がスマートフォンを操作して、チャットルームに楽曲データをアップロードした。
さらに手元のノートパソコンからスタジオの手配なども始める。
基本的に年末の『聖魔勇祭』のコラボユニットは、トップ1がリーダーとしてまとめ上げるもの、とされていた。
しかし、SDを持ってきていない後藤は同性とも話ができない状態。
SDも持っていない状態の後藤が話をできるのは、宇月と綾城だけ。
それを茅原に言われて、おどおどと俯く後藤。
「ごめんねぇ、茅原くん」
「いえ! いや、はい! 綾城先輩が謝ることではありませんので!」
しかし、綾城が謝ると背を正す茅原。
体育会系の茅原は、目上の人間には非常に礼儀正しい。
さらに後藤の様子を見て「仕方ないから俺が事務作業はやってやる」と言い始める。
こういう、男気溢れる面倒見の良いところが同性人気が高いのだ。
「――ふむ、それでは各ユニット、年末の『聖魔勇祭』に向けて頑張ってください。IG冬の陣もあるのでお忙しいとは思いますが、よろしくお願いします!」
『はい!』






