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一年生トップ4


 十一月、一週目の金曜日。

 

「ランキング出たー!」

 

 叫びながら立ち上がる淳。

 A組の生徒が全員一度淳の方を見て、慌てて皆、自分のスマートフォンを開く。

 昼休みだというのに、教室で弁当を広げていた生徒が談笑を停止して『イースト・ホーム』を覗き込み、沈黙が流れた。

 

「淳、すごいです!」

「おめでとうー!」

「ありがとうー! 魁星と周もおめでとう〜!」

 

 後期の売り上げランキングが発表された。

 一位は“音無淳(おとなしじゅん)”。二位は“花房魁星(はなぶさかいせい)”。三位は“狗央周(くおうあまね)”。

 そして、前回四位は“日守風雅(ひもりふうが)”が――後期の四位は御上千景(みかみちかげ)になっていた。

 

「ううわー!」

「どうしたの、天皚!?」

「お、おれ! 俺! 俺の順位爆上がりしてる! 三十位から十二位になってる!」

「お、俺も! 三十三位から十四位になってる!」

「俺もだよ! 三十二位から十一位に上がってる!」

「お、おいおい、マジかよ……コラボユニットに参加したメンバー軒並み順位上がってるって」

「うっわ、俺落ちてる……!」

 

 頭を抱える者、腕を掲げる者と命運がかなり分かれている。

 コラボユニットユニットに参加したメンバーがわかりやすくランキング順位が上がっており、参加しなかったメンバーは下がってしまったらしい。

 魔王軍メンバーは軒並み下がった。

 スケジュールから参加見送りだったのに、この結果は可哀想だ。

 特に長緒がわかりやすく床に崩れ落ちた。

 

「音無ぃー! コラボユニット、誘ってくれてありがとーーー! 一位おめでとうー! もう心の底からおめでとうって言える! っていうか間違いなくお前がナンバーワン!」

「あ、ありがとう〜。駿河くんもおめでとう〜」

「音無ー!」

「芽黒くん……!?」

 

 突然A組の後ろのドアが開く。

 入ってきたのは芽黒。

 そのまま淳に抱きついてきた。

 

「ありがとうー! 俺、俺、七位! ランキング、七位! 信じられない! 三十九位だったんだよ前回! グッズ売り上げ三千円だったのに……五桁超えているー!」

「お、おお……。おめでとう、芽黒くん」

「グループの売り上げも上がってる……ありがとう……ありがとう……! 音無のおかげだよぉ〜!」

 

 泣いている。

 よしよし、と頭を撫でてやると本格的に「頑張ってよかったぁ。コラボユニット、頑張ってよかったよおおおお」と泣き出しちゃった。

 芽黒、魁星と日守のバチバチやサボり魔日守を練習に誘ったり、その他事務も必死に覚えたり淳と千景の手伝いも積極的にやったり定期ライブ執行委員にも参加したりと九月十月は本当に忙しそうに動き回っていたのを見てきたので、報われて淳も嬉しい。 

 

「コラボユニット、こんなに効果あるんだな」

「人間、限定って言葉に弱いからねぇ。俺もこんなに効果があるのは驚いたよぉ。……あれ、柳くんからもメッセージ……」

 

 誰? というクラスメイトに「演技指導している俳優の子」と答えつつメッセージを確認する。

『イースト・ホーム見ました! ランキング一位おめでとうございます!』というお祝いの言葉。

 まさか『イースト・ホーム』をチェックしてくれていたとは。

 すぐに『ありがとう〜』と返事をする。

 

「とりあえず音無が一位なのは同級生の俺らから見てもアレだよな……妥当」

「それな」

「IG夏の陣も準優勝だし、コラボユニットの貢献度はガチ」

「今年一年振り返ってもお前が一番アイドルだったわ」

「気が早くない……?」

 

 うんうん、と頷くクラスメイトに若干困惑。

 そして長緒から「コラボユニットってもうやらない? またやるなら誘って」と迫真の表情で詰め寄られる。

 いやいや、やりたいなら勝手にやってほしい。

 企画の立て方なら教えるよ、と言うと「難しそうだしぃ」と言われてしまう。

 

「今年はもう厳しいから、来年でいいなら?」

「やるやるやる! 絶対スケジュール空けておく! な!」

「空ける空ける!」

「空ける、絶対空けるからぁ!」

「もうはぶらないでぇ」

「ハブいてないよ!? 魔王軍メンバーがスケジュールで参加難しかったの聞いているよ!」

 

 長緒たち、それぞれ二軍――四天王のユニットに昇級しているので、仕事が入っていたのは知っている。

 周が淳に縋る魔王軍メンバーに渋い顔をしながら「あなたたち、企画くらい自分たちでやりなさい。じゅんも暇ではないのですよ」と叱りつけた。

 実際自分たちで企画をして進めた方が、身になると思う、と呟く淳。

 それを聞いた芽黒が「俺、コラボユニットの企画練ってみる!」も目を輝かせる。

 

「はっ! 俺もちょっと千景くんにお祝い言ってくる!」

「「ええ……」」

 

 芽黒を長緒にぽいと投げて、淳が大急ぎでB組に走った。

 顔を見合わせた魁星と周もそのあとを追う。

 B組は芽黒が騒いだせいなのか、こちらもランキングネタで盛り上がって阿鼻叫喚。

 淳が入ってくると「一位から三位が来たぞー!」と謎の迎撃態勢。

 

「千景くん、おめでとうー! 『聖魔勇祭』でコラボユニットまた、一緒にライブできるね!」

「あひっ!? ひ、は、は、はひっ! あっう、あっう……お、お、お、音無く、も……あの、い、一位、おめでとうございます……」

「千景くんもおめでとうー! 嬉しいね! 嬉しいねー! 千景くんとまた一緒にライブできるね! 嬉しいねー! 大好きー!」

 

 と、本気で嬉しくてテンションが上がっている淳。

 淳の笑顔で千景が――倒れた。

 

「千景くん!?」

「ばば、ばばば……あばばばばば……ひ……光……」

「光!? なに、光って!?」

 

 可哀想に、と周が呟き、淳の脇の下に腕を突っ込んだ魁星により回収。

 なんでー! と叫ぶ淳はA組に引きずられて戻ることになった。




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