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”ご褒美”(1)


「まあでも先にお知らせしちゃっていいよなぁ? あのなあのな! この間、 SBOにお店出せる機能が実装されただろ? それでさー、うちの学校のアイドルがよくここでライブさせてもらっているから、ここ、ファーストソングで明日十一月一日午後十二時から東雲学院芸能科公式ショップが開店することが決定したぜえぇぇぇぇぇぇぇえい! いえーーーい!」

 

 と、マイク越しに宣言する凛咲に、一瞬の困惑で沈黙が流れる。

 が、直後とりあえずよくわからないまま『おおおおおおおおおーーーー!』と歓声が上がった。

 まあ、とりあえず歓声上げとこう、みたいな歓声だ。

 ひとまずはそれでいい。

 場が盛り上がることが大事なのだ。

 

「と、いうわけで〜、今後東雲学院芸能科のアイドルグループがここでライブする時用に、いっぱいオリジナルグッズ買ってくれよな〜! アイドル個人のオリジナルグッズは、個人の売り上げに換算されるんだ! 東雲学院芸能科のアイドルは学内の個人売上でランキングがつけられる! そのランキング上位は年末の『聖魔勇祭』で『トップ4』というコラボユニットを組んで、特別ライブするぞ! 『トップ4』は卒業後の進路に影響が出ることもあるから、めちゃくちゃ応援になるんだ!」

「基本的に東雲学院芸能科アイドルのオリジナルグッズって、東雲学院芸能科公式ホームページ内にあるオンラインショップや月末にある定期ライブの物販でも買うことができるんだけど、そのグッズがこのSBO内でも購入可能になるってこと。で、一応俺は東雲学院芸能科の卒業生だし、今回の“初の公式ショップ”が上手くいけば多分『Blossom(ブロッサム)』の公式オリジナルグッズショップもできる可能性が――」

「えええええ!? ブッ、Blossom(ブロッサム)も公式オリジナルグッズショップが!? Blossom(ブロッサム)の!? マジですか!? 本当ですか!? は、はっはぁああぁ!? 全商品買います! 全財産出し渋らず全部買い占めっ――」

「落ち着いて。シー」

「ふぐっ!!」

「おい、神野! 音無が失神してログアウトしちゃうから色気を振りまくな」

「ええ~~~~……理不尽~~~~」

 

 本当に、危うく失神しかけた。

 唇に指先をあてがわれただけで心臓が破裂するかと思った。

 でも好きすぎて涙が出てくるのは仕方ない。

 

「ま、つまりファーストソングの新地区で東雲学院芸能科公式オリジナルグッズショップが、明日十一月一日、昼十二時から開店するよってこと。俺も一応東雲学院芸能科出身だからね~。宣伝に協力するってことで、今日きたわけ。で、宣伝ついでに――ライブするよー」

「「「わあああああああああああ!!」」」

 

 神野の宣言に歓声が上がる。

 ステージでのライブは、そのサーバのユーザーへバフになるので、ステージ以外のダンジョンなどにいるユーザーからも喜ばれているだろう。

 ただ、神野はウインクしながら「あ、ライブするのは俺じゃなくて東雲学院芸能科一年の音無と愉快な仲間達ね」とつけ加える。

 わかりやすく「え~~」という層もいた。

 

「はい! 本日限定コラボユニット『Stars born(スターズ・ボーン)』のラストライブです! もしかしたら配信でも見てくださった方もいるかもしれませんが、ほとんどの方が定期ライブには来れなかったと思いますので――」

 

 淳が合図すると、千景と日守を始めとする『Stars born(スターズ・ボーン)』チームA、チームB、全員がステージに登ってきた。

 日守が小声で「全員って……俺だけハブる気満々だったんじゃねぇか」と笑顔で淳の肩を掴む。

 もちろんお客さんには聞こえないように。

 淳はもちろんお客さんに聞こえないように、マイクのスイッチをオフにして満面の笑顔を日守に向けながら「え? だから”ご褒美”って言っていたじゃない」と言い放つ。

 ギリギリ……ギチギチ……。

 笑顔のままバチバチ。

 その間にもう一人、笑顔の魁星が割って入ってくる。

 

「ち・か・い」

「はーい! それでは自己紹介から入りまーす!」

 

 引き離されたついでに、淳が手を振りながら客席に「チームAから!」とメンバー紹介を行う。

 お客さんのノリはかなりいい。

 若い人が多いからだろう。

 本日三回目だからなのか、実にサクサク進む自己紹介。

 チームBのメンバーも全員紹介し終えてから、「それでは聴いてください! 『Stars born』!」と宣言し、今度は”全員で”歌い始めた。

 一番はチームAを前衛。二番はチームBが前に出て片方のチームはバックダンサーに回る。

 なにも聞いていないにしても、日守はちゃんとついてきた。

 そして最後の短い三番に、淳と千景が前に出てセンターで歌う。

 これはこの二人の歌唱力が高いのと、コラボユニットの共同リーダーだから。

 しかし、そこで淳が日守の腕を引っ張って前に連れてくる。

 困惑する日守の肩に、別の誰かが腕を乗せてきた。

 淳がそっとセンターから下がり、その人物が千景の隣に立ってサビを歌い出す。

 淳の歌うはずのパートを代わりに歌い出して、淳の代わりにセンターに現れた人物に千景と日守が目を丸くして驚愕の表情を向けた。

 

「え、あ……」

「星矢さ――」

「ヨッ! 久しぶり、ちーちゃん」

 

 歌い終わって、軽く挨拶をしたのは憩星矢(いこいせいや)

 曲が終わると同時に、千景の腰が抜けてその場でへなへなと座り込んだ。

 

「え、え、え、え、あ、え、え? な、なんで……」

「神野から連絡貰って、急遽参戦! しました! はい! どーもどーも! おれは十二代目勇士隊君主の憩星矢(いこいせいや)でーーーーーす! 東雲学院芸能科卒業生なんだけど、神野栄治の同級生! 今日は誘われたんで、来ちゃった!」






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