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異色の三人で告知スタート


 そうしてあーだこーだ、こうしたい、これもいい、悩むー、と騒ぎながら最終的に巨乳金髪美女、背は低め、アバター名はウィンディ。

 “日守風雅”の“風”からウィンディにした。

 こうしてシーナ、ラチカ、ウィンディの三人の美少女アバターでレベリングを開始することに。

 

「めっちゃ楽しいー!」

 

 そして秒でどハマりするウィンディ。

 とてもVRMMO初めて、とは思えない動きであっという間に『サードソング』の近くまで来てしまった。

 休憩もなしで。

 

「なーなー音無は今レベルいくつなん?」

「俺は69」

「え……。そ、想像以上に高い……お前忙しくしてる割にめちゃくちゃゲームで遊んでんのかよ!」

「最近は学院のお仕事もあるし、レベル上げの時間もあるからつい……。あ、そろそろショップのチェックに行く時間だ」

 

 会話の最中にタイマーの通知音が鳴り響く。

 それを止めて、近くの『サードソング』の宿を取り、セーブポイントを更新。

 

「じゃあ、今から十九時から十九時半には戻ってきてくれる? 一応、最終リハーサルというか、ライブの流れの説明だけしたいから」

「あ、お、おう。了解」

「じゃあ行こうか、ラチカくん」

「は、はい。行きます」

 

 と、言ってウィンディだけを『サードソング』に残してショップがある『ファーストソング』に戻る。

 ただ、そのシーナとラチカの後ろ姿を眺めるウィンディは、静かに「百合……いいな……」と呟く。

 なにか目覚めたのかもしれない。

 

 

 

 ――二十時。

 食事も取り、最終リハーサルと流れのチェックを終わらせてから、シーナ、ラチカ、ウィンディはリアルの姿にアバターを変更する。

 そして淳が一歩、ステージに進む。

 

「!」

 

 告知はしていたが、ゲーム内でもしっかりとお客さんが集まっていた。

 町中に小型モニターが浮遊するようになってから、ステージへの客入りがよくなっている気がする。

 ステージの下には数百人が集まり、淳が出てきたら「淳くーん!」という声がかけられて驚いた。

 しょせん、星光騎士団の一人に過ぎなかったはずなのに、SBO内では名前も覚えてもらっていたとは――。

 

「あ――こんばんはー!」

「「「こんばんはー」」」

 

 お客さんからも返事が返ってくる。

 そして、淳の後ろからもう一人、ステージに登ってきた。

 

「やっほー、お晩。平日の割と急遽だったけど、みんなが集まってくれて嬉しいよ」

「「「ぎゃぁぁぁあああぁぁぁ!」」」

 

 狂ったような歓声と淳が無意識に推しうちわとサイリウムを取り出して振るう。 

 無理もない。 

 だってステージに登ってきたのは神野栄治。

 飄々と出てきて笑顔をステージに向けた。

 ただ、さらにその後ろからもう一人、ステージに登ってくる。

 

「おうおうおうおーう! 神野はともかく音無も結構人気出てるじゃねーかぁー! にゃはははは!! 遠からん者は音にも聞け、近くば寄って目にも見よ!! おれは凛咲玲王(りんさきれお)! 星光騎士団、初代団長だー!」

 

 と、若い頃の姿の凛咲がステージの際へ走って淳と神野を通り過ぎる。

 がおー、と叫ぶ凛咲に、神野が顔を顰めた。

 凛咲の姿は学生時代のもの。

 リアルの姿をスキャンして、年齢を十代後半に設定すると当時の姿をほぼ再現できる、というわけだ。

 現在の姿だと仕事に支障が出る、当時のアイドルの姿の方がウケがいいだろう、アイドルは歳を取らない――等々すでに引退後、卒業後の東雲学院芸能科OBたちはSBOでステージをする時は“若い時の年齢”に設定してライブする、ということになっている。

 以前、星光騎士団歴代メンバーほぼ全員が揃ってライブをした時はそう設定してあった。

 なので今回も凛咲は十代の頃の姿。

 それを神野が冷ややかな眼差しで見下ろしている。

 なぜなら凛咲は『アイドルは歳を取らない!』派。

 淳はいいと思うけどなあ、派。

 どちらにしても凛咲の登場で客席は一気に盛り上がる。

 

「ようよう! 今日おれたちが来たのは星光騎士団が所属している東雲学院芸能科からのお知らせがあるからで、あーーーる! 本当は他の元アイドルの先生も誘ったんだが、今日は東雲学院芸能科、定期ライブの日でめっちゃ忙しいからふっざけんなって叱られてしまったのだ!」

 

 そりゃそうだ、としか言えない。

 忙しいので、事務的関係あまり役に立たない凛咲にお鉢が回ってきたわけだ。

 それを暴露するのもいかがなものかと思ったが、それが凛咲という感じもする。

 なので神野も明るく言い放つ凛咲に対してすぐに仕方がなさそうに溜息を吐く。

 

「って、わけでぇー! お知らせなんだけどー! あれ、もう言っていいんだっけ?」

「え? 十分前に台本の最終チェックしたばっかりでしょ? 嘘でしょ? 凛咲先生、もう痴呆入ってるの? 物忘れ激し過ぎない? ただのネタ? なにも面白くないよね? マジで言ってる? 嘘でしょ? ねえ?」

「ギャハハハハハハハハ!! コーノマジ辛ッッッッ辣!! 変わんねーなお前〜!」

「なにも面白くないって言ってるよね? 真面目にやってくれません?」

 

 はあー、と深い溜息と冷たい眼差し。

 一部界隈では超絶ご褒美なのだが、神野栄治不慣れなプレイヤーの一部はドン引き。

 もちろん、神野栄治のこの態度にドン引き。

 淳は床に正座して凛咲を見下す神野栄治を下から見上げて瞳を輝かせている。

 それにもまたドン引きする一部ユーザーと笑いを堪える一部ユーザー。

 ステージがほんの三分で立派なカオスに早替わり。

 ツッコミが不在。




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