表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

180/553

『下剋上』開始!


 綾城と朝科がじゃんけんぽん、とするのが可愛いのだ。

 そのギャップが。

 というわけで、千景と日守にじゃんけんをさせる。

 

「じゃーんけーんぽーん」

 

 淳がかけ声を代行して、二人にじゃんけんをさせ、先攻は日守。

 先程のコラボユニット勝負は先攻のチームAが勝利した。

 これは完全に『全員一度はセンターで歌う』チームAの方がよかった、というお客さんからのジャッジ。

 だが、今回は個人対決。

 個人のパフォーマンスなら、先程の日守の方が有意にも感じるが――。

 

「では、先攻は日守くんです! 行ってみましょう〜! どうぞ!」

 

 と、淳が言って千景と共に舞台の端に移動する。

 曲が流れ始め、日守のパフォーマンスが始まった。

 歌う曲はコラボユニットでも歌った曲なので、さすがの日守も問題なく歌って踊れている。

 だが、いよいよここで日守に疲労の色が見えてきた。

 ギリギリお客さんにはわからないかもしれない程度のものだが、パフォーマンス質が落ちているのは淳たち一年生にもわかるほどだ。

 

「〜〜〜♪」

 

 無事に終わる頃には、だいぶ息が上がっている。

 それでもしっかり歌い上げた。

 不安そうだった千景に、淳が微笑みかけると顔を上げる。

 

「お、音無くん……ぼく……」

「うん。俺、今日はMCだから――どちらかに肩入れはできないけれど……応援しているから」

「は、はい」

 

 中央に戻る淳と千景。

 肩で息をする日守だが、笑顔で客席に手を振る。

 

「日守風雅くんのパフォーマンスでした! 次は御上千景くんのパフォーマンスです! それではよろしくお願いします! どうぞー!」

 

 中立として、最低限のことだけ言って日守を連れて舞台端に移動。

 思った以上に日守の疲労が目立つので、小声で「今のうちに水分補給しておいでよ。舞台袖に準備してあるから」と教えてあげた。

 キッと睨まれたけれど、「ステージを台無しにしないためにも、ちゃんと水分補給して整えて。まだあと三十分はステージにいないといけないよ」と言うと若干顔を青くして舞台袖に向かう。

 淳もさすがに喋りっぱなしなので、袖裏に用意してあった名前入りのペットボトルをごくごく一気飲みする。

 その間に千景のパフォーマンスが始まった。

 

「〜〜〜〜♪」

 

 歌い始まる千景の歌声は、もう最初の一声を聞いた瞬間から「上手い」とわかるレベル。

 だから後攻ということも相俟って、負ける要素がない。

 なにより作詞作曲した本人なのだ。

 日守のように『俺を見ろ!』と叫ぶようなパフォーマンスではなく、千景のパフォーマンスは『みんなも楽しい?』と問うようなもの。

 アイドルは一人ではアイドルにならない。

 アイドルを“アイドル”として応援してくれるお客さん――ファンがいてこそのアイドル。 

 そういう意味では、御上千景は王道の“アイドル”と言える。

 淳と同じく“アイドルを愛するアイドル”。

 普段はあんなにおどおどして、すぐ泣くしすぐ謝るのに。

 ステージの上ではお客さんに笑顔を見せて、歌を届けるキラキラした美人系アイドルそのもの。

 

「〜〜〜〜♪」

 

 歌が終わるとすぐに淳が「千景くんのパフォーマンスが終わりました。ありがとうございます! それでは投票に移ります! 投票時間は五分です!」とスタッフさんに手を振ってお願いする。

 後ろから日守ものろのろステージ中央に戻ってきて、三人が揃う。

 

「二人ともまったく違うパフォーマンスでしたね。どうでしたか? 楽しかったですか?」

 

 日守にマイクを向けると、少しギョッとした顔をされる。

 しかし、すぐにアイドルらしい笑顔を浮かべて「おう! やっぱ定期ライブは祭りだよな!」と腕を組む。

 

「千景くんは?」

「あ、は、は、はい……た、楽しかったです……えっと……ほ、本当に……自分の頭の中にしかなかったものが、目の前で現実になるのが、やっぱり信じがたいというか……ゆ、夢の中にいるみたいです……今日は……ずっと」

 

 危うく「好き」と出そうになるのを我慢して飲み込むドルオタ。

 ドルオタがドルオタに悶絶する無限機関。

 でもやっぱり頰はゆるゆるになるドルオタ。

 

「よかったですね」

「は、はい」

「俺もコラボユニットはすごく楽しかったし、いい経験になったのでまた来年、時間を作ってやりたいです。それに、他の人にもぜひ企画してほしいな」

「わかります。色々なアイドルのコラボした姿めちゃくちゃ見たいです。今の二年生のコラボユニットとかご褒美ですよね。来年は三年生ですけど。今回参加していない一年生もコラボユニットしてほしいです。ぼく、いくらでも作曲するので!」

「太っ腹〜! でも俺も今回参加してない一年生もコラボユニットで定期ライブをするなら、できる限り全力でサポートするんだけどな〜。事務作業とか」

 

 盛り上がるドルオタ。

 それを引いた表情で見ている日守。

 

「今回のコラボユニットだとやっぱり芽黒くんは大活躍だったよね。チームBのリーダーとしてすごく頑張ってくれたもの。一年生だけのグループのリーダーとして勉強家だったし、コラボユニットでダンスがめちゃくちゃ上手くなってた」

「そ、そうなんですよ! 芽黒くん、あんなに忙しくしておられたのに、ダンスの練習も真面目になさっていたので本当に上手くなってましたよね……! 他の『SAMURAI』のメンバーの白戸くんと山原くんも……、上手くなってました……! あの、あと『Monday(マンデー)』の駿河くんの、サビの少し前のターンの時のくんのウインク、きゃーってなりました……!」

「わかるーーー! 心の中で推しうちわとサイリウム全力で振っちゃった」

「おーい、そろそろ投票終わるんだがー!」

「「あ」」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【宣伝】
『不遇王子が冷酷復讐者の手を掴むまで』(BL、電子書籍)
5cl9kxv8hyj9brwwgc1lm2bv6p53_zyp_m8_ve_81rb.jpg
詳しくはヴィオラ文庫HPまで

『国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!』アンダルシュノベルズ様より発売中!
g8xe22irf6aa55l2h5r0gd492845_cp2_ku_ur_l5yq.jpg
詳しくはホームページへ。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ