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コラボユニットライブ(4)


(すごい。けど……)

 

 隣を見ると、やはり千景は少しだけ残念そうな表情をしていた。

 なぜならこの曲は、千景が『複数人が全員で満遍なくセンターで歌ってほしい』と願いを込めて作った曲だったから。

 なにしろ、千景も淳に劣らぬドルオタ。

 東雲学院芸能科アイドルを、一瞬でも、ライブ中一度きりでもいいから輝かせたいと願うタイプ。

 それなのに強い強い輝きで、他のメンバーの輝きをかき消そうとする日守と魁星。

 千景の願いのこもった曲を歌うには、あの二人“自己主張”の輝きは強すぎた。

 もちろん、それはアイドルとして当然にあるべきモノだし、あの二人の輝きをどう捉えるのかはお客さん次第。 

 チームBもパフォーマンスが終わり、淳がハッと顔を上げる。

 

「チームB、お疲れ様でしたー」

 

 すぐさま切り替えて、MC担当の淳がステージへと進む。

 周に目配せして、チームAもステージ中央に戻っていく。 

 

「二つのチームのパフォーマンスが終わりました! さて、たった今より! 投票開始です! 投票時間は十分間! どしどし、いいと思ったチームに投票してください〜。周」

「はい。入り口などに設置してあるパンフレットやステージ近くに設置してあるQRコードでも公式ホームページ、『イースト・ホーム』に飛ぶことができます。使い方がわからない方はお近くのスタッフにお聞きください」

「さてさて、では十分間、メンバーに自己紹介をして感想も聞いてみましょう」

 

 と、言って先に隣に来た周にアイコンタクトをする。

 周はすぐにマイクを持ち直して「初めましての方もそうでもない方もこんにちは。星光騎士団第二部隊所属、狗央周です」と笑顔をステージに向けた。

 客席からは歓声。

 次はコラボユニットの感想を聞いてみる。

 

「コラボユニットは普段のメンバーとは違い、先輩に指導してもらうのではなく同級生たちに指導し、話し合いを重ねてなにがよいのかを模索していくのが非常に新鮮で勉強になりましたね」

 

 等々、そうやって順番にチームAメンバーにインタビュー形式で感想を聞いていく。

 チームAは全体的に和気藹々で切磋琢磨して作り上げたものである、という共通認識。

 問題はチームB。

 

「次はチームB! リーダーは芽黒那実くんです。いかがでしたか?」

「いやぁ……あの、実は練習してた内容と変わったところがたくさんありました……」

「え」

 

 え、とちうよりも「あ……」と泣きそうな芽黒になにかを察するチームAメンバー。

 やはりあの唯我独尊コンビの暴走じみたセンター独占パフォーマンスは、練習していたものと違ったアドリブだったのか。

 

「なるほど、そうなんですね。普段のグループの練習とはやはり違いましたか?」

 

 話を逸らした。

 ギリギリ、お客さんには逸らした内容だとわからないように。

 芽黒もすぐにハッとしたように笑顔を持ち直して「そうそう、普段のとは全然別物!」と取り繕う。

 

「俺たち『SAMURAI』は一年生だけのグループで、練習もレンタルコーチをつけたりしてやってたんだけど、今回は色々なグループの子が入ってきてて、他の三年生や二年生の先輩がいるグループの子たちは練習内容がレンタルコーチに習うものとは違う、なんかこう、本格的な、ステージでお客さんに“魅せる”ためのもので……本当に勉強になった! ステージだけじゃなく、音無と御上がリーダーとしてどんなことをするのか、事務的な面もサポートしてくれたり教えてくれたりして、今までリーダーとして必要なことを自分がいかに知らなかったか思い知ることになってさ、反省ばっかり! こんな制度があったのかー、って……」

「ま――まっじめぇ〜〜〜」

「えっ……」

 

 すごくいっぱい喋った。

 しかも内容が超ど真面目。

 淳が思わず呟くと、芽黒は大変驚いた顔をして顔を上げる。

 

「芽黒くんって本当に真面目だよねぇ。打ち合わせの時もメモを取るし、わからないことはなんでも聞いてくれるし、アドバイスの中で実行できることは全部実行するし」

「え、え、え? そ、それは、だって俺たち『SAMURAI』は一年生だけのグループだから、グループにとっていいことは全部やっていこうって――」

「真面目でいい子! 芽黒那実くんは真面目ですごく責任感もある優しくて誠実ないい子です! 芽黒那実くんがリーダーを務める一年生グループ『SAMURAI』をどうぞよろしくお願いします!」

「突然なんでうちわ出すの!? 御上まで!?」

 

 いつの間にか淳と千景が感動で涙を滲ませながら、マイクとは逆の手で『SAMURAI』の推しうちわを振るう。

 客席からも「かわいー!」という声がちらほら。

 なんで褒められているのかわからない芽黒は口元をきつく結んで恥辱に耐える。

 

「はい、では次に『勇士隊』二番隊の熊田くーん」

 

 日守と魁星を最後の方にすることにして、他のメンバーへのインタビューを続ける。

 投票時間は十分間と長めだが、インタビューをしているとあっという間だろう。

 できるだけ時間内に収めたいのでサクサクいく。

 五人目が終わり、さて、魁星と日守どちらを先にすべきか少し思案して日守を先にインタビューすることにした。

 なぜなら魁星は淳と同じくMC慣れしているので、上手く巻いてくれるだろうし、ちゃんとオチをつけてくれるだろうという信頼があるからだ。

 

「では自己紹介をお願いします」

「『魔王軍』所属の日守風雅だ! 実家は関西! 好きなものはお祭り!」

「コラボユニットに参加してみてどうでしたか?」

「めっちゃ勉強になった! 今までアイドルとか真面目にやらなくてもなれっだろーって軽ーく考えとったんだけど、顔面真っ正面からぶん殴られて目ぇ醒めた感じ?」

 

 それを 淳に 言うのか。




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