コラボユニットライブ(1)
十三時。
野外大型ステージに集まるコラボユニットのメンバーたち。
特にはしゃぐのは、双子と『SAMURAI』メンバー。
「すげー! 専用衣装!」
「後藤先輩本当にすごいな! っていうか、今日一日だけのライブのために全員分作ってくれるとか――ほ、本当にお金支払わなくていいの?」
「俺たちは細かく後藤先輩の好きなコンビニお菓子を差し入れしてたからなぁ……」
「後藤先輩にお礼を包むのがいいのではないですか? ……後藤先輩はお金に困っていないと思いますが、SDの洋服などは好みがありますものね」
「だよねー」
「「「SD……?」」」
スーパードルフィーだよ、と教えてあげるがほとんどの一年生は困惑顔。
なので丁寧に「金をかけようと思えば富豪でないと破産する芸術性の高いお人形」と説明した。
多分間違ってない、と思う。
スマホで調べてみ、と魁星が勧めるので、桜屋敷の双子がスマホを開いて調べて顔面蒼白になる。
学生の身分では到底手が出せない価格が並んでいるホームページを見てしまったのだろう。
いつも後藤が抱えているSDは七体。
月曜日から日曜日までそれぞれの曜日担当がおり、すべてがオーダーメイドだそうで名前も月曜日:月代さん、火曜日:火代さん……のような感じ。
結構覚えやすいお名前である。
「コラボユニット、『Stars born』チームA、チームB、そろそろご準備お願いします!」
イベント会社のスタッフさんの声で、メンバーの大半は緊張の面持ちでステージを見上げる。
その中に日守がいた。
「あれ、逃げなかったんだね」
「っ」
日守の姿を見た瞬間、バチンと勢いよく演技スイッチが入ってしまった。
演じるのは『神野栄治』。
振り返った日守はちゃんと専用衣装を見に纏い、一丁前に緊張の面持ちだった。
「逃げたかと思った。別に逃げてもよかったのに。無駄にプライド高いのも大変だよね」
「……っ」
「まあ、言い出しっぺだもんね。今日の『決闘』。勝った方は今後も千景くんが作った『Stars born』専用曲『Stars born』を歌う権利を得る。負けた方はセンブリ茶。君が言い出したことだものね」
目を細める。
今のところ、チームBは日守以外かなりまとまってきていた。
あのプチ『決闘』のあとで、日守はちゃんと倉治先生の指導と魁星の指示、周と淳の考えた練習メニューもこなしたらしい。
今までの憑き物が、落ちたかのように。
非常に真面目に。
だからもしかしたら――いや、少なくともあの日よりは遥かにマシになっていると思う。
それでも他の生徒の真面目に取り組んできた月日と比べて、飛び抜けた才能がなければどうしても埋めようのない差がある。
「逃げずに最後までステージに立っていられたら、ちょっとは見直してご褒美あげるね。最後まで逃げずに立っていられたら、だけど」
「逃げねぇよ」
「ふぅん」
ふふ、とわざと笑ってやる。
きつく、強く睨みつけられた。
そうして――ついに最初で最後のコラボユニットの幕があがる。
「こんにちはー! 星光騎士団第二部隊隊長、音無淳です! と言ってもこれからはコラボユニット『Stars born』の共同ユニットリーダー、音無淳となります! いやあ、告知から一ヶ月。今日という日を無事に迎えることができて感無量です! しかも想像以上にたくさんのお客様が来てくださり……本当にありがとうございます!」
手を振る淳に、野外大型ステージに集まったお客さんから歓声があがる。
いや、実際想像以上にお客さんが来ていた。
野外大型ステージは収容人数の限界が実質ほぼない、立ち見のみのステージ。
それでも多少、お客との間にスペースを持って集まってはいるが、普段学院の定期ライブで野外大型ステージに集まるお客はだいたい多くて百人前後。
だが、見渡す限りに人が埋まっている。
いつもなら芝生が見えるのに、これは千人近いお客が集まっているだろう。
どう考えてもIG夏の陣の影響が、広がっているとしか思えない。
それでも淳と魁星と周はIG夏の陣でこれの数倍の会場とお客の前でパフォーマンスをした。
場数――と言えばいいのか。
あまり緊張を感じない。
逆に他の一年生たちはこんな大人数初めてだ。
そりゃあ表情も固まるだろう。
(魁星と周も初日初戦はあんな顔してたなぁ)
と、懐かしくなる。
まだほんの二ヶ月前のことなのに。
「コラボユニット制度は基本的に東雲学院芸能科に常設してある制度なんですけど、使う人はあんまりいなくて……。俺は今回、新しくお友達になった共同リーダー、御上千景くんとどうしても一緒のステージで歌いたくて、この制度を使ってコラボユニットを作りました! 今回歌う『Stars born』は、その御上千景くんが作詞作曲した楽曲です。おーい! 千景くーん」
打ち合わせ通り、先に一人でステージに駆け上がった淳がもう一人の共同リーダー、御上千景をステージに呼び寄せる。
その声に千景がステージ上がってきた。
ガチガチである。
「は、はじめまして……」
「千景くん、マイクマイク、スイッチ入ってない」
「おぎょあがゃぎゃあ」
なんて?
淳が咄嗟にマイクを自分の体から離して、千景のマイクを指差し耳元で囁く。
すると千景はマイクを宙に滑らせて、何回か回転させながらキャッチする。
MC自体初めて、と言っていたのだが、淳がサポートするから大丈夫と言っておいたし台本も作って渡したのだが、あまりにもスタートダッシュポカが王道すぎる。






