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先輩と狩り(3)


「チコ、かなり硬い! 胴体は任せる!」

「わかった!」

 

 だがパワー盛り盛りのチコは速度がとても遅い。

 チコの持つ[クレイモアL]の武器スキル、[チャージLV8]はいつぞやのエルミーが大斧で使った[アックスグラッシャー]以上の威力を持つ広範囲超高火力技だが、それを使うには一切動かずに大剣にパワーを貯めなければならない。

 

(それよりも、ミミズの方は――?)

 

 視界の上にピコ、と[斬撃属性攻撃力LV1]と[物理防御力LV2]のバフがついた。

 不慣れながらも先輩たちの歌声で、バフがついたのだ。

 ありがたい、と少し気を抜きそうになった途端、[斬撃属性攻撃力VL4 追加付与3]と[物理防御力VL5 追加付与3]にレベルが上がり、追加付与まで。

 さすが、二年の中でもトップクラスの歌唱力を持つ音楽家一族の後藤琥太郎と、三年の高埜直士。

 二人とも歌が上手くてバフに追加効果が付与された。

 ミミズの下半身に剣を突き立てる。

 刺さった。

 上半身の、オークの体よりもミミズの下半身は柔らかい。

 突き刺さった剣の痛みでオークの上半身が叫びを上げる。

 そのままミミズ部分がのたうち回り、剣が抜けた。

 ふわりと宙に向かって吹き飛ばされて、わっと思ったけれど一回転して着地する。

 そこはゲームの中だ、地上から数メートルも飛んでも着地ができた。

 すぐに体勢を立て直し、剣を構え直し、強く、踏み込む。

 意図せず背後に回り込むことができたので、シーナも別の曲を歌う。

 

「〜〜〜♪」

 

 [斬撃属性攻撃力VL4 追加付与3]プラス[斬撃属性攻撃力VL10 追加付与13]の表示。

 純粋なプレイヤーレベルとシーナ――淳の歌唱力による追加効果付与。

 あえて斬撃属性攻撃力をさらに追加した。

 

必殺技(ウルト) 軻遇突智ノ輪(カグツチノワ)

 

 ボッと炎が剣に纏う。

 回転しながらミミズの尾に沿うように斬撃技を繰り出す。

 斬られた場所から激しく炎が燃え上がる。

 炎は継続ダメージ。

 上半身オークが地面に尾を叩きつけることを繰り返し、暴れ回るが消えない。

 距離を置いて着地をしてから、今度は曲を変える。

 

「〜〜〜♪ 〜〜〜〜♪」

 

 チコの体を包む光は[クリティカル率上昇LV8 追加付与5]と[武器攻撃力VL19 追加付与20]。

 先輩たちの歌声のバフも継続。

 ミミズの尾に気を取られていたオークは、凄まじい咆哮を上げながら消えない炎に激昂し、シーナの方に突進してきた。

 素速さを活かして、がむしゃらに振り下ろされる棘つきの棍棒を避ける。

 

(くっ! キッツ!)

 

 炎はシーナに効果はないが、視界を狭めてしまう。

 のたうつミミズ尾を火の粉を払いと棍棒を避けつつ、チコの待機している場所まで誘導する。

 

「いいよ、お兄ちゃん!」

「チコ!」

 

 その声を合図に、シーナが宙に飛び上がった。

 シーナにヘイトを向けていたオークは、シーナの後ろにいる脅威に未だ気づいていない。

 

必殺技(ウルト) 岩砕斬(がんさいざん)(きわめ)!」

 

 クレイモアの影が巨大化したものが、未だ燃え盛るミミズ尾に悶え苦しむオークを真っ二つにした。

 正直、シーナの剣で皮膚の表面を僅かにかすり傷を与えた程度の強度を誇ったあのオーク上半身を、一撃。

 いくらバフを盛ったあととはいえ、やはり凄まじい。

 

「うわ」

「どうしました、高埜先輩!? じゃなくて、ソル先輩!」

「一気にレベルが22に……」

「自分も30に上がりました。本当にレアエネミーだったんだ」

「なんだかルーヴァ先輩と一緒に狩にくると、都度レアエネミーに遭遇してる気がします」

 

 と笑っていると、ドロップアイテムの表示が出る。

 レアアイテム『神竜の卵』。

 あのレアエネミーとこのレアアイテムの繋がりが一切不明なのだが。

 

(もしかして、ミミズ部分が“竜”的な意味……? いやぁ……)

 

 それはさすがに苦しいでしょ、と思うがアイテム詳細を見てみると『神竜の卵:持ったまま一万歩歩くと神竜が孵る。所持して歩いた者を親と思い、慕ってくれる。乗り物として、戦いの補助としてプレイヤーを手助けしてくれる』とのこと。

 なるほど、乗り物。

 おそらく『テイマー』職のないプレイヤーも乗り物ペットとして使役できる特殊モンスターの扱いなのだろう。

 

「お兄ちゃんのドロップアイテム? なんだったの?」

「『神竜の卵』だって。もしかして、チコは違うの?」

「チコは『オークの内臓』だって」

 

 やばそう。

 なにそれ、と聞くと「調理して食べるとステータス総合値が2%上昇するんだって」とのこと。

 かなりの良アイテムでは?

 いや、レアモンスターからはレアアイテムがドロップする。

 チコにドロップしたアイテムは、ステータス上昇アイテム。

 しかも、普通の上昇アイテムよりも数段優秀な。

 

「先輩たちはどうですか?」

「俺は『全回復薬』と『蘇生薬』と『テント』だって」

「三つも! それも、高額アイテムばっかり!」

「ボクも同じものです。高額アイテム、なんですか?」

「はい! 消費アイテムの中ではトップクラスの高額アイテムですよ! 『全回復薬』はその名の通り体力・魔力・状態以上すべてを回復する回復アイテム! お値段なんと十万ソング」

「じゅ……」

「『蘇生薬』は同じくゲームオーバーを回避する唯一のアイテム! 体力がゼロになってセーブポイントに転移したあと、一時的に死亡ペナルティとしてステータスが全部下がるんですけどそれを即座に回復してくれるレア回復アイテムなんです。お値段二十万ソング」

「ひっ……に、二十万……!」

「そして『テント』! ダンジョン内でもセーブができるだけでなく、安地としても使用可能な特殊消費アイテム! テント内では簡易キッチンがあり、回復アイテムの製造も可能。テント内にいるだけで体力、魔力が回復する。しかも使用可能回数は五十回。お値段なんと百万ソング!」

 

 沈黙の先輩たち。

 想像を超えたお値段に硬直している。

 

「た、大変、今のレベルに不相応なものをいただいたのです、ね」

「ふ、二人ともすごいねぇ」

「いえいえ。あ、素材も結構集まりましたし、アバター服作り、しますか?」

「「あ」」

 

 忘れてた先輩たち。

 このあと色々アバター服作った。




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