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先輩と狩り(1)


 集合場所は『ファーストソング』の広場。

 すらっと美人のアバターと、青髪の高身長イケメンが並んでる。

 フレンドはアバター名が色つきで見えるので、一眼でルーヴァとわかった。

 ということは、隣にいるのが“高埜”だろう。

 高身長イケメンのアバター名は『ソル』。

 

「ごと……ルーヴァ先輩」

「シーナくん、こっちこっち」

「やば、やば……ヤバっ……」

 

 チコ、すでに限界オタク化している。

 一応チコのアバターがゴリマッチョ男――チコの理想の結婚相手像らしい――なので、そんな姿で美男美女のアバターをハアハアしながら見るのは若干、なんというか、控えめに言ってだいぶ気持ち悪くて怖い。

 シーナの背中に隠れてハアハアしているのもキモポイントプラスだ。

 

「お待たせしました。えっと……高埜先輩?」

「はい。音無くん?」

「はい。アバター名はシーナです。よろしくお願いします」

「その、後ろの……方は?」

 

 高埜――ソルが恐々と聞いてくると、シーナの後ろにいたチコが直立して「初めまして! チコです!」と野太い声で叫ぶ。

 シーナが眉尻を下げつつ「妹です」と紹介すると、わかりやすくルーヴァとソルが一瞬固まった。

 しかし、すぐに「あ、ああ、アバターだもんね」とソルが笑顔を浮かべ直す。優しい。

 

「あ、あの妹さん? え……?」

 

 ルーヴァ――後藤はMV撮影の際、チコのリアルに会っている。

 そこからの、これ。

 SBO内でも一応ライブのステージ前でライブ鑑賞しているので、目立っていると思うのだが。

 ルーヴァ、超沈黙。

 

「後藤くん?」

「っす、すみません、ちょっと驚いてしまって。えーと……妹さんも一緒に?」

「ダメですか?」

 

 もじ、とするチコに再び硬直するルーヴァ。

 その様子にソルが「ご、ごめんね」と突然謝罪してきた。

 

「後藤くん……いや、ルーヴァくんって、女性恐怖症なところがあるから」

「え? そ、そうだったんですか?」

「……え、ええと……SDを抱えていると、話をするのは大丈夫なんだけど……VRMMOの中だと…………あ、ちょっと待ってて」

 

 と、言って突然目を閉じて数秒。

 

「これで大丈夫だと思う」

「どうしたんですか?」

「フルフェイスマスク型だから、近くの棚にあったSDを取りに行ったの。ふう……うん、SDを抱いていればゲームの中でも大丈夫。女の子がいても話ができるみたい」

「そ…………そうですか……?」

 

 後藤琥太郎、リアルのデバフが多すぎやしないだろうか。

 しかしながら、ゲーム内であってもSDを抱えていればたとえアバターがゴリマッチョでも中身が女子だと話ができないデバフを突破できる。

 

(つまり……ゲームの中ならスムーズに会話ができて、SDを抱えていればゲームの中でも女の子と話ができる。……ん? つまりリアルではSDを抱えていても女の子と話ができない? そういえばMVの時にSD抱えてたけど、母さんとも智子とも距離をとっていたような……)

 

 家庭の事情は複雑とは聞いていたけれど、本当に色々複雑なんだなぁ、と思った。

 チコの方を見ると「ナイーヴで素敵……」と呟いていた。

 さすが東雲学院芸能科アイドル全肯定bot兄妹の妹。

 

「自分はゲームをあまりしてこなくて……色々教えてほしいのだけれど」

「あ、はい。じゃあ、僭越ながらゲームシステムなどをご説明しますね」

 

 と、気を取り直してソルにシーナがシステム説明を行う。

 話していくうちに、ソルとルーヴァは追加職業に興味を持ってSBOにログインしてきたのだと知る。

 星光騎士団や魔王軍のライブの際、リアルの写真から衣装をゲーム内でアバターとして作成したという。

 そこから、多少カスタムができる。

 勇士隊の衣装を担当していた高埜が後藤からそれを聞いて、非常に興味を持った。

 高埜の趣味はぬいぐるみ作り。

 しかし、勇士隊の衣装を担当して三年、衣装作りの勉強も熱心にしているという。

 その延長線上で、SBOに参戦した――らしい。

 システムの話を聞いて「それじゃあ、素材になるアイテムを集めないといけないですね」とすぐに理解してくれた。

 

「新しく追加された“生産職”用の素材アイテムが、二ヶ月間ドロップしやすくなっているんです。お店を構えられるのが『ファイブソング』という第五の町なので、そこを目指しながら進みましょう」

「わかりました。確か、歌でバフ? をかけるんですよね」

「はい。歌バフは戦闘メニューからお気に入りに登録しておくとスムーズに開始できまして……」

 

 と、今度は戦闘システムの説明。

 説明中、メイン職業を装飾師に変更していたのを思い出し、戦闘サポート職の魔法師に再変更した。

 魔法師は戦闘メニューに登録する曲数が増える。

 音声で曲検索もできるし、歌バフの効果もアップするのが魔法師という職業。

 SBOのオリジナル曲より、月額課金してサブスクアクセスした方が歌える曲数は増えるし、カラオケ曲の方が効果も高い。

 などなど。

 

「俺は課金してるんで魔法師で先輩たちをサポートしますね。初期職はなにを選んだんですか?」

「実は中学で弓道を嗜んでいたので、弓士にしました」

「じゃあ、自分は剣士にします。前衛が必要、なんだよね?」

「そうですね……。チコが剣士なので、前衛は大丈夫だと思いますけど、ルーヴァ先輩が前衛の方がバランスはいいですね」

 

 と、チコを見る。

 チコ、職業:剣士。装備:大剣クレイモア・L。

 腕力、防御力に極振り。

 魔力系は完全に捨てている、スキルツリーもパワーオブパワー。

 筋肉こそすべて。

 暴力こそすべてを解決する。

 話し合い?

 ここは穏便に暴力で、タイプ。

 チラリとチコを見たシーナに、沈黙を返す先輩たち。

 正直、シーナと同じくらいのレベルのチコは序盤も序盤であるこの付近ではバフが必要ないくらい、ただのパワーである。




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