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コラボユニット始動(2)


「――ということで以上十四名となりました。ここから辞退、というのはご遠慮ください。なお、コラボユニットは特別制度ですが、必ずグッズを作ることも義務づけられており物販にサイリウム、ハンドタオル、フェイスタオル、バッチ、個別サイン入りチェキを予定しています。サイリウム、ハンドタオル、フェイスタオル、バッチはユニット名ロゴのみのものですでに発注済みです。後日衣装が完成後に個別チェキの撮影及びサイン入れも行いますので、その日程もチャットルームからスケジュールに記載お願いします。同等雑務系はこちらで行いますが、ここまでで質問はありますか?」

 

 にこ、と笑顔で聞く淳に、ポカーンとしている一年生たち。

 少なくとも『SAMURAI』のリーダーである芽黒は知っていないとダメだろうに。

 

「え、ええと……ろ、ロゴ……っていうのは? ユニット名ってもう決まってる?」

「え? チャットルームの方に書いておいたけど……。ロゴはもうデザイン発注済みだし、仕事の早いデザイナーさんだからもうデザインもいただいているよ。こちらでーす」

 

 と、タブレットからデータを表示する。

 おお……という声。

 日守と熊田は苦い表情をしている。

 この程度のことも覚えていないのか、と内心で落胆しつつ、他のグループの人はもっと死ぬ気で覚えないと埋もれてしまうだろうな、と憂いも覚えた。

 

「ちなみにこういうデザインや衣装、グッズ発注も『イースト・ホーム』からできるんだけど知ってる?」

「「「えええ!?」」」

「そうなの!? できんの!?」

「『イースト・ホーム』のメニュー『外注』を選択して、なにを発注したいのかのカテゴリから東雲学院芸能科と提携している業者に依頼することができるんだよ。もちろん外注だからお金はかかるけれど」

 

 正直言うと外注は本当にお金がかかる。

 今回は千景が以前勇士隊に提供した楽曲著作権使用料――サブスクによる収入と第二部隊の仕事の売り上げを周と魁星にも確認を取って使わせてもらった。

 楽曲は千景が作ってくれたし、演奏もパソコンで仕上げてくれた上、衣装デザインは後藤がホクホクしながらやってくれた。

 さらに振付は朝科と宇月がソワソワ作ってくれたので、かなり先輩たちに助けてもらえたと思う。

 これらを全部外注していたら、一年生には到底支払えない金額である。

 

「ちなみに振付は朝科先輩と宇月先輩が作ってくれたし、衣装は後藤先輩が全員分作ってくれることになっているし、ユニット名ロゴのデザインは石動先輩と柴先輩伝手で格安にしてもらったので、各先輩方を見かけたらお礼を言ってほしいです」

「えええ……三大大手グループの大御所が……!?」

「あと綾城先輩と花崗先輩もSNSですでに宣伝もしてくれているので、これから脱退する人は衣装代を徴収します。逆に最後まで出演してくれた人には物販売り上げを配分します。この辺りは制度で決まっていることなので、もし脱退を考えている人は今日中に申し出てくださいねー」

 

 さらに周が「物販売上は年末の『聖魔勇祭』出演コラボユニット『トップ4』の一年生ランキングに大きく関わることになるので、上位を狙うなら脱退はお勧めしません」とつけ加える。

『トップ4』が選出される一年生売上ランキングは“校内売上”が条件であるため、コラボユニットによる物販売上はそれに該当するのだ。

 上半期のランキングは星光騎士団第二部隊が上位を占めており、四位は日守。

 だが、三位と四位はそれなりに差があり五位の御上とは僅差。

 むしろこのコラボユニットで目立てなければ、日守は一気に降下する。

 上位は事務所から注目されやすいため、今だに目立てていない一年生アイドルたちは一発逆転の好機。

 しかも、予定である十月の定期ライブ物販売上は下半期ランキングの締切でもある。

 滑り込みのチャンスなのだ。

 それを聞いた途端、全員が顔を見合わせて顔つきを変えた。

 

「さて、というわけで雑務系は俺と周で行うので、みんなには歌とダンスのレッスンに注力していただきます。で、こちらに朝科先輩と宇月先輩という奇跡のコラボダンス見本映像がありますので、これを見ながらダンスを覚えてください。なお、俺と周と魁星は大体覚えたのでわからないところは魁星に聞いてください。俺と周はいる時に聞いてくれれば答えます」

「「えっ」」

 

 双子のびっくりした声。

 まあ、びっくりするだろう。

 そして歌詞カードと仮歌音源も配布。

 仮歌は千景による千景のイメージ通りの仮歌である。

 全員各々、ダンスの振付を確認しながら歌も聴き始めた。

 だんだん、顔が青くなる一部。

 

「それと、今回シャッフルして二つのユニットに分かれ、当日に『決闘』を行います。『決闘』なので、二つに分かれたらそのユニット同士で練習をしてください。なお、先程報酬の話をしましたが『決闘』で勝利した方がサブスク配信用の歌唱を担当することになります。つまり、東雲学院芸能科の校則及びコラボユニット制度の契約に基づき、卒業までの三年間、サブスク配信による売り上げが自動的に勝者ユニットメンバーに分割で支払われることになります。それらはすべて“校内売上”にカウントされることになる――ここまで言えばわかりますよね?」

「それって……!」

「三年間、売上が入り続けるってこと……!」

「そう。ランキングに超有利になるってことー」

 

 全員が驚愕の表情で、顔を見合わせてる。

 当然三大大手グループのメンバーはそのサブスク配信売上の配分をもらっているため、ランキングにも多大な恩恵を受けているわけで、それに参加できていない小規模・中堅どころのグループはサブスク配信そのものに参加が難しいため差が開く。

 今回のコラボユニットの参加によるサブスク配信売上は、そういう生徒にとってはあまりにも魅力的。

 特に御上千景の作詞作曲は、今後注目度が上がるだろう。

 千景のビジュアルとパフォーマンス力で話題が広がらないわけがないからだ。


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