第二部隊は安泰です
「とりあえずA組のコラボユニット参加者は――」
と、参加者を読み上げる。
星光騎士団から音無淳、花房魁星、狗央周。
魔王軍から緋村壮馬、飯葛快斗、長緒幸央。
『SAMURAI』から白戸天皚、山原未空、B組の芽黒那実もチャットルームで情報共有して参加を表明。
淳的には「B組に共同ユニットリーダーの御上くんがいるからB組の人は御上くんに言ってくれればいいんだけれど」と思ったがまあいいか、とメンバー申請欄に追加する。
さらに『Monday』の駿河屋祝、『Egg Ball』の北王子密、『双陽月』の桜屋敷太陽。
A組だけで十一人とかなり人数が増えたが、大手グループの六人はリーダーの淳以外スケジュール的に厳しいだろう。
魁星と周はIG夏の陣でなにかの一線を越えてしまい、笑顔で「このくらいの練習量でいいの!? 余裕じゃん!」「星光騎士団の定期レッスンと仕事の合間なら余裕ですね」とワーカホリックの気配を醸し出してきた。
当然淳も「だよね~。お仕事のあととかに練習追加でやればオッケー」と言っているのを聞いて、A組のクラスメイトが顔色を青くしてヤバいものを見る目になっていたのに気がつかない。
これが星光騎士団名物『地獄の洗礼』とIG夏の陣を潜り抜けた者たちだ。
「それじゃあ楽曲の仮歌ができたらチャットルームに送るから確認してね。本格的な打ち合わせは明日第四スタジオで三時から行います。参加できない人には打ち合わせが終わったあと決定事項をPDFにしてチャットルームに掲載するので目を通してください。じゃあ、俺このまま御上くんにB組の参加者聞きに行くね」
「了解しました。星光騎士団第二部隊に来ている仕事に関する情報は自分が精査してあとでお送りします。専用チャンネルの企画もこちらでまとめておいていいですね?」
「うん、周になら任せられるよ。よろしくね」
「あと、来月は綾城先輩と淳の誕生月なのでリクエストするケーキについて考えておいてくださいよ。君も綾城先輩も自分のことを後回しにしがちですからね」
「あああ!? 本当だ! 忘れてた! 綾城先輩の誕生日を忘れそうになるなんて一生の不覚……!」
「自分の誕生日を忘れるなと言ったんですよ」
「「「………………」」」
席を立った淳からもらったコラボユニットについての校則が書かれた書類を整理しつつ、周が星光騎士団第二部隊のメンバーとしてもしっかり部隊長を支える対応をするのでクラスメイトはますます息を呑む。
まだまだ三年生や二年生におんぶだっこなところがあるのが一年生。
それなのに、この二人ときたら会話がしっかり者すぎる。
「さ、さすが期末テスト学年首席&次席……会話が頭いい人のやつだ……」
「売れるためにできることは全部やるっていうだけだよ。将来的に今から名前を知ってもらえるようにするのはなにもおかしくないし? 天鎧たちも学院に申請して専用チャンネル開設したら? MV撮るのも大変だけど、『らいじんぐ』の先輩たちみたいに他のグループのMV撮影でお金を稼いで活動費にするのも策略だよ?」
「東雲学院芸能科に入学しておきながら『お金がないから活動できません』は言い訳にもなりませんよ。活動費は自分たちで稼ぐ、は入学案内にも記載されていましたし大手三大グループも条件は同じです。先輩方の積み重ねによりワンフロアという活動場所を得ている以上、我々星光騎士団は実績を残し続けて後輩に残さねばなりませんし」
「だよね~。まあ、後輩だけじゃなくファンの人たちにも還元してこそだと思うけれど。校則に引っかからない程度に新しいファンサができないか、第二部隊の中で考えてみようか?」
「そうですね。ではそちらの企画書は来週まででいいですか?」
「うん。俺はドルオタ視点で考えちゃうから、周に冷静な視点で精査してもらえると助かる」
「え? それって俺も?」
「「当たり前だが?」」
笑顔で答える淳と周に、ゆっくり表情を絶望に染めていく魁星。
そんな魁星に他のA組クラスメイトがなんともいえない同情の眼差しを向ける。
「それに企画書の作り方はアイドルに限らず、一般社会人になっても役に立ちますから作れた方が有利ですよ。わからないことは先生や先輩に聞けば教えてくださいますし」
「だよねぇ。せっかく芸能の専門学校に通っているんだし、ここで学べることはたくさん吸収していきたいよね」
「ううう……俺の同期が真面目で優秀すぎる」
「が、頑張れ……!」
クラスメイト達に肩を叩かれるのは魁星ばかり。
顔を見合わせる淳と周。
解せぬ。






