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『侵略』VS『決闘』


 ――これだ、魔王軍が狙っていたのは。

 淳というメンバーも、もちろん本気で獲りに来ている。

 だが、ついでにIGで取りこぼした”新規ファン”をここでごっそり取り込むつもりだ。

 魔王軍も三日目まで駒を進めていたけれど、やはり『Blossom(ブロッサム)』の追い風に盛大に便乗していた星光騎士団に比べて注目度は低かった。

 だが、絶対に負けていない。

 それを自負している。

 証明するのだ、今、この場で。

 事実、一気に星光騎士団の染めた空気が魔王軍に染め直されている。

 元々『決闘』は後攻有利。

 それにしても、魔王軍のパフォーマンスはプロを食らうに十分なもの。

 こと、元々興味のある層ならば容易く侵略される。

 

「〜〜〜♪」

 

 歌が終わると先程よりも大きな歓声が上がった。

 すぐに花崗が「ほな、お手元のスマートフォンから『イースト・ホーム』投票機能でわしら星光騎士団か魔王軍、どちらかに投票してぇーなー」と呼びかける。

 宇月が「あ、『イースト・ホーム』は東雲学院芸能科のホームページから飛べまーす。ステージ横のQRコードとか、検索機能からいけるよぉ。アプリもあるから、好きなのを選んでねぇ」と細かな説明。

 一応、星光騎士団のステージなので仕切りは星光騎士団メンバーが行う。

 すでにアプリをインストールしている古参ファンは鼻息荒く盛り上がっている。

 淳、その中に思い切り混ざりたい――顔を隠しきれていない。

 

「わかんない方はカメラを起動して、QRコードを使ってねぇ〜。『イースト・ホーム』トップページのやや中盤に『定期ライブ』の文字があるから、そこから投票フォームに飛べるよぉ〜。星光騎士団に! 投票してねぇ〜」

「おいおいおいおい! 宇月ぃ、てめぇ! 投票先を決めんのはお客どもだろう! 勝手に変な誘導すんじゃねぇよ!」

「ハァーーーーーー? 駄犬がきゃんきゃんうっさいんだけどぉ〜? お前なんかこの間の『決闘』でごたちゃんに負けたくせにぃ〜! 麻野の分際で生意気だぞぉ〜!」

「ハァーーーーーー!? 『決闘』は望むところだって大口叩いたくせに声優のイベントだかなんだかで尻尾巻いて俺様との決闘を後藤に丸投げしたヘボがなに言ってやがる」

「だぁれがヘボだ誰が! あの声優イベントはせっかく当選したんだからどうしても行きたかったのー! いいでしょ別にー! そもそも当選自体すごいことなんだからねぇ!?」

「知らねーよ!」

「檜野ちゃーん、回収してぇーなー」

「はーい」

 

 と、花崗が宇月を後ろから回収し、檜野が麻野の首根っこを掴んで回収していく。

 ワンニャンファイトは東雲学院学院芸能科ファンなら名物的なプチイベント。

 古参ファンのあの微笑ましい表情たるや。

 先輩たちに回収されていくところまでがセット。

 ただ、これがステージ上だけじゃないという点だけは、淳もびっくりした。

 この人たち素で仲悪い。

 

「投票締め切りはあと一分でーす」

「淳くんが魔王軍のモノになるまであと一分だね。お別れしておくかな?」

「し、しません!」

 

 雛森の呼びかけのあとに、朝科が淳を振り返ってそんなことを言う。

 自分は星光騎士団が勝つと信じているので、と首を横に振って答えると、魔王軍三年生組になぜか恍惚とした表情をされる。

 なぜ。

 

「ああああ、可愛い! 可愛い! グループが違うままでもいいから結婚したい!」

「結婚したーい! 淳ちゃん、日織くんに嫁いできてぇー!」

「もう四人で結婚しちゃいます? しちゃいましょう? ね?」

「し、しませんよ!? 朝科先輩と雛森先輩と檜野先輩のファンに殺される!」

「大丈夫、大丈夫、私たちのファンならわかってくれるし応援してくれるよ!」

「そうそう! 四人で結婚すればなにも怖くないよね☆」

「はい、四人で幸せになりましょうね……♪」

「あ、麻野先輩、茅原先輩! 朝科先輩たちがおかしいです!」

「先輩たちはいつもおかしいぜ」

「通常運転だな」

 

 首を横に振る魔王軍二年生。

 諦めないで。

 

「そ、そういうわけにはいかない! ジュンジュンは星光騎士団第二部隊の……お、俺たちの隊長なんだから! 渡さないぞ!」

「そうです! たとえ投票結果で星光騎士団が敗北したとしても、来月にまた『決闘』を申込み、必ず奪還します!」

「魁星……! 周……!」

 

 またも魔王軍三年生にもちゃもちゃにされる淳。

 そこへ魁星と周が人差し指を突きつける。

 特に打ち合わせはしていなかったが、こういう演出もありといえばあり。

 お客さんの方も盛り上がってくる。

 特に三年生にもみくちゃにされる淳は、腐った方に目の肥えた方々から高い悲鳴という評価をいただいている模様。

 客席に見えるニヨニヨ笑顔が「あ」と察するものがある。

 

「――締め切りました。では、上のモニターをご覧ください。結果が表示されます」

 

 綾城がマイクを手に持ち、モニターを指差す。

 すると星光騎士団、魔王軍のグループ名が表示される。

 その真ん中に、票数が一気に表示された。

 

『星光騎士団 208票 対 183票 魔王軍』

 

 モニターの表示にワアッと大きな歓声が上がる。

 花崗が「マジか……こんなに追い上げられるとは……」と、唇の端を引きつらせた。

 想像以上に魔王軍が星光騎士団のファンも取り込んだ。

 

「あーあ、負けてしまったね! けれど、『決闘』で我々魔王軍のことも好きになってくれた人がたくさんいるみたいだから、今回は潔く諦めようじゃないか! 結婚は同じグループじゃなくてもできるしね!」

「そうだね!」

「そうですね!」

「法的にでけへんけどね」

 

 魔王軍三年生トリオに冷静なツッコミが入る。

 宇月もそれに続き「治外法権グループは勇士隊だけだと思ったら、魔王軍もだった……?」と眉を寄せた。

 

「ジュンジュン~~~! お帰りぃぃい!」

「た、ただいま~」

「ミャハハハハ! さらば!」

「もうくんな」

 

 颯爽とステージを去っていく魔王軍。

 ステージの持ち時間は三時間。

 魔王軍のおかげでいい感じに尺を消費できたのだけれど花崗が真顔でセリフを捨てた。





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