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勇士隊三年生トリオ(1)


 ”アイドル”を見た。

 自分にない、輝きを纏った人たち。

 それでもこの人たちがプロではなく、まだ日陰の存在というから自分の底辺振りに改めて絶望した。

 そして自分にアイドルを教えてくれた人が、卒業と同時に大学に進学してアイドルを辞めてしまうことも。

 そこからダイエットをして、カラオケで歌を練習して、作詞作曲も覚えて。

 

「……あの人はぼくを見つけてくれたから……ぼくはあの人がアイドルだったのを、覚えていたくて……芸能科に受かった時、勇士隊に、入ったのも、あの人のいた場所だったから……」

 

 なにもかも”わかる”。

 泣くほどその人を想うのもわかる。

 

「そんなゴミ虫ド底辺の喋る生ゴミの意見を聞き入れてくれるなんて……お、音無くんはや聖人なんですか!? 聖人なんですね!? ひいい、話しかけてすみませんでした! ア、声を出してすみません、生意気なことを言ってすみません、息しててごめんなさいぃぃ……!」

「ど、どうして……!?」

 

 話の流れがどうしてそうなるんだろうか。

 ちょっとさすがの淳も扱いに困ってしまった。

 

「おいおいおいおい、うちの千景を泣かせているのはどこの新米騎士さんだぁ?」

「「わぎゃ!?」」

 

 二人の脳天を、急に重くて冷たいものがゴツン、と乗っかってきた。

 さらに聞こえた声に顔を上げると青い髪に黄色いエクステの入った三年生――勇士隊の現君主、石動上総(いするぎかずさ)

 肩にタオルをかけた練習着姿に危うく「ありがとうございます」と大声で叫びそうになった。

 

「い、石動上総のオフショットだぁ~~~~……! ヤ、ヤバぁ~~~~……」

「はわわわわわわわあ……しゃ、写真、写真、い、いいですか……!?」

「ガーデンテラスは撮影禁止だからダメ。……IGで会った時から薄っすら思ってたけど、さてはお前、千景の同類だな……? ついに出会ってしまったってこと? なにしてんの?」

 

 どうやら明日の定期ライブの練習に来ていたらしい石動は、自分の水を飲みながらテーブルの上を覗き込む。

 千景がぶわり、と汗だくになる中、淳が「千景くんと話が盛り上がっちゃって、コラボユニットでライブができないかと」と話すと「いいんじゃない」とあっさりリーダー許可をくれた。

 まあ、基本的に勇士隊はなんでもありの、なんでもやる、面白ければ正義でNGナシのグループ。

 

「でも普通のコラボユニットでライブすんのはつまんないから、一年全員で演るくらいしたら?」

「「い、一年全員!?」」

「だって普通に演んのつまんないだろ。好き放題できる時に好き放題しておかないと、対策取られてできなくなるよ。社会っていうのは自分が気にいらなければ締めつけてやろうっていう、声のデカい他人で溢れ返っているんだから。規制される前にやんないと、世の中どんどんつまんなくなる」

 

 言ってることはわかるけど、さすがは問題児。言っていることがむちゃくちゃである。

 さすがに一年全員はスケジュール調整が、と淳が困った顔で言うと「それもそうだな」とあっさりひっくり返されてまた困惑。

 問題児というか、自由人?

 

「あ、じゃあ同じグループのやつ被りなし! 一つのグループから一人ずつ! とか! で、でっかいいつ割れるかわかんない風船を突っつきまわしながらパフォーマンスするとか!」

「ヒイイイイイ!? い、嫌ですぅぅう!」

「もー、じゃあ千景はどんなライブが演りたいの? お前自己主張しなさ過ぎてつまんないよ。曲はいかにもファン受けしそうなアイドルアイドルしてる曲で夢女みたいなのに」

 

 石動上総って夢女子の存在や意味を知ってるんだぁ、と明後日の方向の感想を抱く淳。

 

「そんなアイドルアイドルしている曲を俺たちみたいな無法者集団が歌うのがめっちゃ面白いよな」

 

 というオチがついて、淳は思わず千景を見る。

 しおしお……とまた泣いている。

 淳的にはそれはそれですごく見たいのだけれど。

 

「一年生だけでライブですか? 面白そうです! 爆薬はどのくらい使いますか?」

「爆薬、使いません!」

「遠慮はいりませんよ、千景。派手に赤とオレンジと黄色でいきましょう」

(出た~~~~~~~! 柴薫(しばかおる)~~~~!)

 

 柴薫(しばかおる)

 勇士隊『朱雀』。三年B組。上総の腹心で、護衛兼お世話係。危険物取扱者の資格持ちで、謎に爆発物を取り扱おうとする。勇士隊のライブでいちいち爆発が起きるのは主にこいつのせい。

 誕生日:五月二十六日。B型。身長:172センチ。体重:60キロ。部活:バスケ部。趣味:爆発物の勉強と花火作り。特技:花火玉をつくれること。

 石動の後ろから顔を出して、筒状のなにかを持っているのを見た時はさすがの淳も「ヒュ」と血の気が引く。

 そりゃあ千景も即答で「使いません!」と主張しないとステージが爆破されかねない。

 

「夏に爆薬って映えるモンな~。でも火花は暑いから、色のついた煙くらいにしておけば?」

 

 そういう問題ではない。

 ダメだ勇士隊の三年、爆発が日常になりすぎている。

 

「お二方、他のグループの方に変な絡み方をしては……御上くんでしたか。大丈夫ですか? えっと、もう一人は確か星光騎士団第二部隊の……」

「ふあああ!? は、はいいぃ! 初めまして、音無淳と申します!」

 

 高埜直士(たかのなおし)

 勇士隊『玄武』三年B組。元々は魔王軍に所属していたが勇士隊の特権『下剋上』により勇士隊に入った。

 誕生日:五月一日。О型。身長:177センチ。体重:62キロ。部活:被服部。趣味:雑貨屋巡り。特技:ぬいぐるみ作り。

 勇士隊唯一の良心、と呼ばれる常識人。

 淳のこともすぐに笑顔で「ああ、いつも定期ライブに来てくださっていた」と認知してくれている。




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