33.欠けた刃を証明に②
「胎蔵、領域——」
破界、創界、封界、三種の『四方界』を合わせた四方の最奥。
どれほどの才能を得ようと、人生全てを捧げようとも、到達すること叶わない『四方界』の極地、その発現。
ここはもはや、元あった世界でさえなくなっている。
鳥籠という牢櫃に囲まれた内儀、ユーリの生まれ持つ氷獄世界が創世されているのだ。
「これがオレの世界だ、オレの救うべき者達を救うための力だ。さぁ、救わせてくれよヨナギ、シエ。ひどく勝手な話だが、歪んだ輪廻に囚われたお前達を見ていられない。その悲しみは今日この場で晴らして見せようじゃないか」
本来の力を解放し、コチラを押しつぶす圧力を発しながらも宣う言葉は変わらない。
「余計な世話だと言ったろ、第一ここまでやっておいて、言うことが救うだと? 胎蔵領域をこれまで使える奴がいるなんて見たことないし聞いたこともない」
「ソレっぽいことして嘘ついてるって? はは——、なら試そうか」
暴風となって荒れ狂っていた『界燐』など、初めからなかったかのように鳴りを潜めた。ここにあるのはユーリと俺たち二人だけ。
「来ます!」
「ああっ!」
破界、創界、封界を極めた者とそうでない者の間に存在する差は計り知れない。並みの天才では二つを組み合わせる混成領域でさえ到達できないのだ。
それが全て、三界の重ね合わせなどどこかの誰かが酔っぱらって口にした与太話にしか過ぎない領域。
「だが、いつの時代にも例外っていうのは現れる」
一歩、ユーリが足を踏み出した時、奴の足元に一輪の花が咲いていることに気が付いた。
「彼岸花——、気を付けろ。何かある」
「ハイっ!」
極寒の世界に生まれる生命など在りはしない。元あるものはその姿のまま永久凍土に呑み込まれ、次代に繋がることは永遠にないのだ。
ましてや足元は元々貯水湖、華の育つ土壌自体存在しなかった。
ならば、アレはユーリによって生み出されたナニカ。この地が地獄へと変生していく第一の尖兵。
「そう身構えるなよ、殺し合い…くらいは楽しくやろうぜ。何度も言うが、オレはお前たちを救いたいと思ってる。ああ、間違い一つ無くな」
「その考え自体が間違えだ! 行くぞ、シエ」
「…いいえヨナギ様、ヨナギ様はこちらへ」
「何言ってる。お前一人じゃ——」
こちらを見ることなく、そっと手で制される。
ここで待っていてほしいというかのように。
「悔しいですが、私では彼に敵わないでしょう。ですが、ヨナギ様なら、ヨナギ様の持ちえる全身全霊を出すことができるのならば…。私は、私の裡に在るものをお返ししたいのです」
「まて、それは——」
失った物は戻らない。
剣はリアの手によって返っては来たものの、“もう一振り”はどうしようもないはず。あれはたしかに俺の目の前で消え去ったはずで、死の淵にいた彼女が知るはずなどないのに。
「まさか、シエ…、いつから気付いてた」
「もちろん、あの日からです。死に瀕した炉端の石である私の命を、自らの半身ともいえる力でお救い下さったご恩を、忘れるはずありません。…はい、あの日から一度も手放すことなく。お返ししたかったのですが、私の力では取り出すことも叶わず…。そして、だからこそ私一人で行くのです。私の力では刹那の刻しか為し得ないかもしれません。無駄に命を散らす可能性もあります。ですが、必ず準備は整えてみせます。ですからヨナギ様、どうかお願いです。私を、信じてはいただけませんか…」
「………シエ」
それは、俺の為に死ぬと言っているのか。…そう、聞くことはできなかった。
俺の顔を見ようとはしないシエの背は小さく震え、伸ばされた指先は恐怖から逃れたいとすがるようだった。
「何を、馬鹿なこと言ってる」
「……っ、——ぁ」
伸ばされた手を握って、力任せに振り向かせる。
こちらを見たシエは案の定、瞳が揺らいでいて今にも泣きだしそうなくらいだった。
「行かせたくない。…正直に言うと」
「ですが私がやるしかないのです。私が——! ヨナギ様の、その右腕はもう使えません、危険です!」
確かに、もう満足に白銀の剣は握れない。そも、この剣は右腕に封印する形で俺自身の肉体と同化させている。その右腕が機能しない以上、いつまで剣を展開し続けられるのかさえ分からない。
「——、ああ…、だから止めない。ユーリに勝つにはそれしかないから。…だからシエ、自分の身を犠牲にはするなよ。お前は、お前が思ってる以上に強いんだ。あんな阿呆にやられるわけがない。ああだから、信じてる」
「………いえ」
もう一度、シエは敵であるユーリへと向き直る。だが今度は、その背が震えることは無い。真っすぐ敵を見つめ、護ると定めた相手を不安にさせてしまわぬよう。
「…ヨナギ様、一つだけ約束をしていただけないでしょうか…?」
「………なんだ?」
「ナイギを打倒し、世界に平穏をもたらしてください」
「……出来ると、思うか? …俺なんかに」
「ご自分を卑下なさらないでください。大丈夫、貴方なら出来ます。なにせ、私の主なのですから」
口に浮かべた笑みは力強く、心の底からの信頼を預けられ…、託された。
「…ああ——」
己の力を信じた先で、信じてくれる人との平穏があると信じているからこそ———。
「行ってまいります。私が“解放の準備”を始め次第、ヨナギ様も攻撃を行ってください。どうか…どうか、私のことはお気になさらぬよう。ヨナギ様の道を歩み続けてください」
「………っ」
あまりにも儚げな微笑みに、返す言葉はすぐに出てこなかった。
シエはシエ自身の結末を見据えていて、それでなお俺のことを第一に考えてくれていたから。
「……ああ、シエならどんな状況でも達成してくれると信じてる。行ってこい、かならず勝利する」
「…、———ふッ!」
返事はなく、行動によって示された。
地を這うように疾駆する。それは直線的ではなく動きを読まれないための蛇の様な軌道を描く。
「……四方、展開——っ」
定点防衛、護ることに特化したシエの能力では、自身より格上からの攻撃を防ぐことはできようとも、ダメージを通すことは難しい。
方法としては破壊対象そのものに真円を刻みつけ、自身の領域であると仮想、もろとも破壊すること。
一度真円を刻まなければならない縛りはあるにせよ、破界領域のみしか発動していないことを考えると、一点突破の貫通力であれば追随を許さない威力だろう。これは以前、鳥籠の外壁を破壊したのだから実証されてはいる。
だが——今の状況、以前とは比べ物にならない存在として立ち塞がるユーリ本体に通用するかどうかはかなり危うい。
なら、その隙を作るのは俺の役目だ。
朱い彼岸花の存在は奇妙ではある。これまででさえ触れられれば終いだったのだ。何が起こるか分からない以上は不用意に近づく事は危険に過ぎる。
片腕が使い物にならないのだから、今の俺が斬り合いに行っても足を引っ張ってしまう。
「なら、地面ごとだ——」
氷の大地に突き刺した剣を逆手に持ち、掬い上げるように切り上げる。
「…奔れ『滅刃』」
同時、圧縮していた光刃を解き放つ。
しかし今度は濁流ではない。何条もの彗星を奔らせる。広がりながら進むそれは樹の根を思わせる模様を地上に描きながらユーリを取り囲むよう成長を遂げる。
「ほう…」
回避もせず、放ってみせろと言いたげな表情をこちらに見せるユーリを睨みつけながら、根を張った光刃へと更に追加をみまう。
「ハァッ!」
二撃目が放たれ、大地が弾ける。
氷に閉じ込められた地面で抑えきれないエネルギーが与えられた。結果、爆撃でも起こしたかのように地表付近は大きくめくれ上がり、氷柱が幾本も立ち上る。
巻き込まれたユーリの姿は見えないが、当然気配は消えていない。地面ごと吹き飛ばしているはずなのに、さっきから立っていた場所から気配が一歩も移動していないのだ。
「なら、次だ——『焔刃』」
ふさがろうとする大地の圧力へ抗うかの如く、地中に奔った光刃を圧縮。時間差での解放を行う。シエを巻き込む危険性はあるが、これが今俺にできる唯一の援護だった。
そして、ユーリもどうせこれで死ぬことは無い。
結局最後は不死性がどれほどのものか暴くことにはなるだろう。
それが条件付きのものなのか、それとも驚異的な回復量というだけで限度があるかのどちらかというだけの事。それが分からない内は攻め続けるしかない。
ユーリが奥の手を出してきた以上、コチラも手は尽くさなければ勝機はないのだから。
「……三界の混成、胎蔵領域。本当に使える奴なんて見たこと無いぞ…ったく、アイツなんてヤツを引っ張り出してきやがった。だが、…進んではいるはずだ。なら、俺も進まないといけない」
澄み渡った空気の中でさえ、自分にしか分からないよう声を出す。それは決意であり、退くことのできぬ断崖に立つが故。
「救いたい、か。…はっ、勘違いも甚だしい。必要ないな、クソったれ」
鳥籠の中は現在最も破壊音に塗れている。
攻撃を放つ度、立ち上る氷柱は徐々にユーリを中心に集まっていき、その身を打ち砕かんと何度も何度も爆砕し、解き放たれた光刃は斬撃を見舞う。
開戦の号砲にしてはいささか足りないが致し方なし。まだ“準備”が整っていない以上は時間を稼ぐしかない。
「行くぞ、シエ…。関係のないヤツに、お前を不幸だなんて言わせてやらない。その言葉はシエ本人からしか言えないことだ——」
周囲全方位から轟音と破壊が折り重なる爆心地。
影の如く疾駆した先、主の放つ攻撃によって爆砕し続ける大地のほぼ中央、彼女はそこに居た。
(この技は覚えています。偶然だったとはいえ。私の前で一度だけ見せて下さったことをハッキリと)
木の根のように張り巡らされた『焔刃』、圧縮された刃状の『界燐』だが、その実は噴火寸前のマグマのようなものだ。
地中に押し込められ、自然の力を用いて過圧縮され続ける『焔刃』はいつ爆発するか分からず、一度解放されれば周囲を巻き込みながら破壊をまき散らす。
現に、彼女は幾度となく巻き込まれそうになっていた。回避し続けられているのはひとえに主の攻撃するタイミングを読み切っているからだろう。
爆砕と爆砕の間隙はユーリへの攻撃に回り、ヨナギによる攻撃が行われる瞬間には大地に真円を描き、封界『神籬』による防御を行っている。
爆砕に等しい範囲攻撃の前では、まるで意味をなさないようにも見える爆心地における回避行動。だが、彼女は阿吽の呼吸では言い表すことのできない信頼によって巻き込まれてはいなかった。
砕け、大小さまざまとなった氷塊へ槍を振るっては真円を刻み、打ち返し逸らす。
ユーリのいる方向へ打ち返したものからはまるで手ごたえがない。回避されているか気配を残してその場から消えたか。
「いいや、消えちゃいない。ここまで使って退くことはしないさ。救うと言った以上、背を見せることはしない」
「……っ!」
今度は真逆、コチラから飛ばしていた氷塊がユーリの方向から襲い掛かってきた。さらに周囲を飛び交う氷塊が形状を変え、武具となって襲い来る。
空中で触れ合ったもの同士はそのまま一つの塊となり、意志を持ったかのようにこちらに向かって高速で突撃してくる。
「く——っ」
防御に徹することが可能であればそう恐ろしい攻撃ではない。しかし、足元に真円を描かねばならない『領域条件』である以上、真円自体が破壊されてしまった場合には『神籬』を発動することはできない。
ヨナギによる攻撃自体が彼女の『領域条件』を打ち破る状況となっていた。
(そんなことっ、問題にはなりません。準備もあともう少しで——)
だが、そんなこと彼女にとって苦ではなく、分かり切っていたことだ。できることはヨナギが勝利することのできる状況を創り上げること。
(そのためならば、この程度の問題は障害にさえなりませんっ!)
「このままヨナギが向かってこないままだと殺しかねない。加減は効かないんだが」
前後左右に加え上下からも襲い来る氷の刃や塊そのもの。
先ほどまで足止め用いられていた威力を優に超え、まともに受け切ることさえ危険。『胎蔵領域』の発動によって能力自体が異様なまでに強化されている。
鋭利な刃物が、重質量の鈍器が、全方位から襲撃してくる。一つでも直撃すれば物理的なダメージとともに傷口から氷漬けにされる。そうなればもはや後は坂を落ちるように死へと一直線。
今でさえ掠り傷が凍り始め、肉体を蝕み始めている。その度に傷口が凍り付く前に自分自身で無事な皮膚ごと斬り捨てる。絶対零度の気温の中では出血と共に自然に凍り付き、痛みを発するものの、完全に凍り付いてしまうよりはずっといい。
(つまり加減ができないとはこういう事ですか——っ)
人間がどれほど優しく虫をつまんだところで、その力関係は隔絶されている。どうしたところで多大な傷を与えてしまう。
足止めのつもりで放たれた攻撃であろうとも、私にとっては必殺の一撃にまで引き上げられてしまっている。
「——っ、はっ、ヤァ!」
けれど、それで槍を振るうことを止める理由にはならない。
希望を失うことなど在りはしない。
なぜなら、私の主は誰よりも強いから。
命を救われたあの日から今の今まで変わることなく、その背中は何よりも大きく見えている。決して追いつくことのできないはずの彼の背に数え切れないほど導かれてきた。彼自身はそう思っていなくとも——。
アナタのような男とは天地の差があるのですから、何を不安になることがあるのか。
この槍がアナタの進む道を創り出すのなら本望。
「私は…っ、そのために生を全うするのです!! 私の生まれなど関係なく扱ってくれた主の為ならば、この命惜しくはないッ!」
二人の主が戦ってきた姿を何も出来ずに見続けてきた。
目の前で戦い続けているのに、私は何もしないなど許されはしない。お二人が命を懸け、心を懸け、繋いできた世界だ。
それほど大切な世界を、私の“友”が生きる世界を奪わせはしない。
その世界を護ること、主と友と生きることがこれ以上ない幸福であるというのに——。
「私の心を…、勝手に決めつけるな!!」
これ以上の言葉はない。
これが私の感じていた怒りの全て、そのほかも真実であれ後付けに過ぎない。けれど、これだけは譲れなかった。暗闇でしかなかった世界に光をもたらしてくれた人たち、世界を広げてくれた友人。
——私にとって何より大事な宝物を否定されて黙っていられるわけがないから。
「この身、この槍、この心っ! 余すことなく主と友に尽くす為のもの! 決して…、決して自分の為に振るうものではない!!」
爆破による氷の粉塵の奥へ向かって言い切る。
「………」
姿の見えないユーリは幾ばくか沈黙を宿す。その様は悲哀に満ちながらもどこか嬉しそうな、幸福をかみしめているかのような様相。
「——そうか」
「っ……!?」
そして、次に発せられた一言からはもうその様な感情は消え去っていた。
(…いいえ、くじけはしません。ヨナギ様、リア様、…アヤネ、私に力を——!)
ユーリの瞳に写されただけで彼の空気に呑まれそうになったが、そんなことではどうしようもない。私は何処までいっても大切な人の傍に付き従い、護る者だ。
「…何度でも言いましょう来なさい。主の為、友の為、この力を以って悪逆を粉砕して見せましょう!!」
「ああ、そのつもりだ。だから先に言っておくよ。——すまない」
「……ッ」
そして、彼は一歩前へ踏み出し——。
□ □ □
気づいた時にはもう手遅れだった。
(——————なに、が…)
痛みを発したと感じる間もなく、右腕はもう使い物にならなくなっていた。
「……く…ぁ…っ」
攻撃を防ぎ続けていたはずだ。ヨナギ様の準備が整うまでは完全に防ぎきり、耐え続けていた。
それでも完全とは言い切れなかった。体のいたるところに致命傷に至らないほどの傷がつき、今だって痛みを発してはいる。私はまだ生きていて、戦うことができていたのに。
「いいや、もうお終いだシエちゃん。下手に動けば死んじまう。だから、もうお終いなんだ」
「———、ふざけないでくだ———、あ…っ」
体勢を崩し、受け身も取れずに頭から倒れ込む。
氷の大地を踏みしめ、何物をも寄せ付けはしないという意思を示し続けた構えも、すでにとることが出来ないでいる。
「がっ——!」
額から流れる血が目に入り半分が赤く染まった世界の中、目の前には自分で刻んだ真円の一部が目に入る。
(なぜ…)
疑問は一つ。
私の『四方界』である『神籬』は機能している。領域たる真円も破壊されてはおらず、もしそうであったとしてもヨナギ様の攻撃する範囲は分かっていたし、壊されたところですぐ気づき修正していた。
なのに、それ自体感じ取ることはできなかった。そして、倒れた自分の肉体から、右上腕から先、右膝の下から先の感覚がそれぞれ無くなっている。
感触からして出血はない。ならば気づかぬうちに攻撃を貰ってしまい、凍らされてしまったか。確認しようにも身体を上手く動かすことができず、ままならない。
ユーリが近づくにつれ気温は急速に奪われ、ただ普通に立っているだけだというのに、流れる血が凍りつき、掠り傷でしかなかったはずの傷口は酷い凍傷へ変貌を遂げようとしていた。
「もうよそう。それ以上動いたら後遺症が残る。今くらいなら何とかオレの女に治療できる子がいるんだ。このまま手足を失うだなんて、そんなことを君の大切な人達も望んじゃいない」
「…ぐっ…、まだ、——まだ…っ」
諦めはしない。
手足の感覚を失おうとも、握った槍を離しはしない。この身に刻みつけてきた鍛錬の成果をこそ信じているのだ。なればこそ生きている私が戦えぬ理由も無し。
「っ、あ…ぁぁッ!!」
右半身が動くことを否定されているというのなら、それ以外を全て駆動させるしかない。動きは完全に読まれているだろうが気にしてはいられない。
予測されているというのならそれ以上、迅雷の加速による一撃を見舞えばよいだけ!
「——四方展開、破界領域ッ!」
単純であるからこそ最高の効果を体現する四方の強化。
真円内でのみ発動する彼女の領域条件では攻撃に向かうための強化を行うことはそうそうない。
彼女は元来護る者だ。ただ前へ、進み続ける主を後ろから支えたいと願ったからこその異能なのだ。このような力の使い方は想定していない。
(あと一つ…、だからこの…、一撃だけは…!)
動く左脚を一気に折り畳み、一瞬で踏みこむ。その場から一切動くことの無い片足の踏切りは、およそ人体が為し得る上で必要最小限の動きを最高効率で発揮する。
その姿を見る者がいれば何が起こったかさえも分からないだろう。
ダイナマイトの爆発に巻き込まれた小石のように、破滅的なまでに跳ね飛んだ。
愚直に過ぎる突進は神風の如く彼女の背を押すかのように爆発的な加速を体現し、灰色の少女は“朱が混じり込んだ”銀世界へと掻き消えた。
刹那、強化の限界を迎えた肉体は時の流れを歪んで認識し始める。最大速度へ近づくにつれて周囲の景色の流れが緩慢になっていく。
定められた時を分割し、その上さらに細断しつくしたかのような静止した世界を映す。
ユーリも同様、再び浮かべた悲し気な表情を観察できてしまうほどに世界は遅く…、いや彼女が神速を以ってユーリへと槍を振るおうとして。
「………ごめんね」
「——づ…ッ!?」
視界を風景として認識できない。
無理やりな強化は確かに彼女の為し得る最大速度、その限界へと到達した。肉体を満足に動かすことも叶わないというのにだ。
だが、槍が振るわれることは無かった。満足に突進する事さえ成功してもいない。
最高速へ到達する加速に至った瞬間、喪失感と共に身体が軽くなる感覚が襲い掛かる。体勢を崩して地面に倒れ込む。
「———?」
なんだ、何が起こっている。
理由が分からない、確かに右半身は真面に動きはしなかったが、ならばそのことを前提に動けばいいだけの話。握った槍、その穂先の軌道は理解している。どう振るえばユーリへ向かう一撃を達成できるか。腕の機微が聞かぬというのなら全身を用いて動きをこなせば攻撃としては完成する。
けれど、身体が軽いのだ。
まるで半身を失ってしまったかのように軽い。寒さによって感覚を奪われていたとはいえ重さ自体が消え去ることなんてあり得ない。なら———。
「………っ」
倒れたまま、振り返る。
血は流れてはいない。 ——流血以前に凍り付いた。
この手に槍は握られてはいない。 ——槍はとうに落としてしまっていて。
もう立ち上がることもできはしない。 ——朱き華が咲き乱れていた。
「完全とはいかないが必ず治すよ、約束する。日常生活を送ることもそう難しくはない筈だ」
「……なんて、こと——…っ」
そうか、私の身体にあったはずの右の手足は凍り付き、加速についてこれず氷結し、脆くなっていた箇所から砕けて失われていた。
地面に取り残された自分の手足と、上腕から先、膝から先を失った自分の身体を見つめる。感覚がないのではなく、物質自体が失われた。
急な出来事で、ちぎれた腕の切断面を見ても凍り付いた肉体からは恐ろしさを感じることさえできない。茶菓子を食べやすい大きさにちぎったことと同じような、自分の肉体だという実感が湧き上がってこない。
そして、それ以上に目を引く一つの異常。
「この華…は……っ」
朱い華が、傷口と取り残された手足の切断面から芽生えていた。
氷で出来た彼岸花、そして花弁を染めている赤は間違いなく彼女の血であった。
「オレの能力の副産物だ。領域内で熱を感知すると生えてくるんだが、急速に熱を奪って凍り付く。どうなるかは、この場のとおり。オレも制御が出来ない、コイツのせいで加減が聞かなくて困ってる」
「ぬけ、ぬけと…っ」
だめだ、このまま何もせず敗北を選びはしない。
這って進め。槍を取らねば戦えもしないのだから、刻一刻と失われる感覚を闘志で燃やし続けねば。例え勝機が欠片もないとしても、自らゼロにするほど愚かなことは無いのだから。
「特に花弁、触れた瞬間にその箇所だけが凍り付き砕け散る。その場所以外は無事なせいで凍り付いた端から体が裂ける。そして一度芽生えたらどうしようもない。後は華が外と内から凍らせるだけだ。我ながら単純な能力だと思う」
「…っ、…ぁ」
片腕片足、その上凍り始めている現状では進みにくくて仕方がない。今こうしている間も地面に触れた箇所から凍り始めているのだから、全身が動かなくなり砕けてしまうのも時間の問題だった。
これこそがユーリ・ナイギの真の力。
これでなお完全な発動には至っていないというのに、このまま華が成長を続けた先、渦巻く花弁に触れようものなら、防ぎようもなく触れた肉体は凍り裂ける。
かつて遠い過去に堕とされた一族の末裔。誕生より以前から、繋がってきた命全てが天を睨み続けてきたのだ。
「だからこそ地獄を欲した。天でふんぞり返る連中を堕とす為に。人の意識における地獄を再現し、顕現することこそナイギとして生まれたオレの『四方界』。君には使いたくなかったけれど、力の差は見せておくべきだと思った。けど心配しなくていい。ヨナギは殺さない、連れて帰る。オレの目標は巫女とラゥルトナーだけだからな」
「——ざ——け…な…っ」
文句を言おうにも舌が回らない。
睨みつけたくても、もう一度ユーリのいる方向を見る時間さえ残ってはいない。そんなことをする余力は残されていない。
「それにしても、ここまで来て攻撃が再開されないのは何かの作戦だったりするのか。あんなにシエちゃんを大事そうにしてたのに、何もしてこないだなんてのはおかしな話だ。怖気づくような奴でもない」
「…っ……は、ぁ…」
「そもそも姿が見えないな。領域内に居るのは間違いないが、…気配が辿れない?」
「———ぐ…、あ——」
微かに困惑するユーリを背に槍に到達した。
(これで…、最後の——)
片腕でも、最後の準備を整えるには事足りる。
剣と共に、本来の力を取り戻しつつあるヨナギだが、まだユーリを突破するには足りない。そして、最後の一手は彼女が握っていた。
(リア様…、私の中に埋め込んだのは、そういうことだったのですね)
ヨナギと離れ離れになって間もなく、主である彼女はとあるものを従者に埋め込み刻んだ。そしてそれこそ、ヨナギにとって必要なもの。
今現在、未来への道を拓き続けるための最後の一欠片。
——その結果、私が傍で仕えることができなくなろうとも、後悔はない。
「………」
さっきまで自分の身体に繋がっていたはずの右腕を目の当たりにする。
だが、一目見た感想は特に浮かばない。肉体から離れてなお、元々繋がっていた時と同じようにしか見えない。
凍った瞬間から細胞の一つさえ劣化を起こしていないかのような姿からは、現実味を感じ取ることはできなかったから。
「———く…あ…」
残された左手で槍を取った瞬間、槍から伝わる絶対零度によって掌が凍り付く。完全にくっついてしまい、剥がそうとすれば肉そのものを千切り剥がすこととなる。
そして、死に体の肉体であろうとも、この身は熱を帯びている。ならば彼岸に咲く華は己の習性に従って左腕にも芽生え始めた。
この場を離脱することも叶わず否応なしに観察するとなるほど確かに。これは死を送る、彼岸の華だろう。
手の甲の感覚まで失われると同時、溶け落ちる氷を逆再生したかのように茎が、葉が、そして華が形成され、私の血を吸い上げて朱く染め上がる。
(……、次にこの槍を振るえば、衝撃で左腕は砕け散る…)
ちぎれかけた紐の先、ボールを結び付けて振り回す。その結果は想像に難くない。
「っ………」
悲しく、恐ろしい。
押さえつけようとしても恐怖心はどうしても沸き上がる。とめどなく溢れ、心が折れそうになる。
この戦いに敗北することではない。勝利した後、皆の傍で支えることができなくなることが怖くて怖くてたまらない。
自分の存在価値が何もかも虚空へと崩れ落ちるかのような、虚無感が心を支配する。
「———」
瞼を閉じて、すでに感覚が消え去った左腕を上げ、手間取りながらも槍を地に立てる。
痛みはない、ただピシリと氷が割れるような音が左腕だったものから聞こえてきただけ。
槍を地面に突き刺し、体重を預けてようやく立っていられる状況。どうしても私自身の勝利はなく、こちらに治療できる人間がいない以上、むしろユーリを打倒した先には死が待っている。
「———」
だから、瞳を開いて空を仰ぐ。
そこに在るのは天地覆いつくす氷の鳥籠、限定的な地獄を顕現させるための舞台装置。
星は遠く、月明かりだけが差し込む様は美しいとさえ感じるのに、囚われた私はなんと醜い姿なのか。
死は近く、生は遠ざかってしまった。
熱が奪われ続ける肉体では吐く息も白くならない。
死は、近い。
だから、主である彼に、伝える言葉があるとするならば——。
「申し訳ありませんヨナギ様。シエはお暇をいただきます。これまでの事、心よりの感謝を」
これくらいなのです。
幼き日、今と同様に死を目前としていた暗闇の中で、貴方に見つけていただき、救っていただいた。
仕えることができたのは、これまでのわずかな期間でしたが、私は誰よりも幸せだったでしょう。なぜなら、ヨナギ様のことを想うだけで先ほどまでの恐怖が消えているのですから。
その想いを、心を得ることができたことこそ私の人生における最大の至宝。
ですから…、不安があるとするのなら、今の言葉を聞いてくれていたでしょうか。
いうことの利かない口で、精一杯頑張って伝えたつもりだったのですが…。もしも伝わっていなければ心残りとなるでしょう。
い、いえ、私の我儘でヨナギ様を困らせることこそ望むものではないのですが…っ。
「す……ふぅ……」
槍を地面から引き抜く。
残された左足ももう地面ごと凍り付き、倒れたくてもそうはならない。
「ユー…リ、ナイぎ——、わたし、は…アナタの元へはゆきません…。たと、え、ヨナギ様がともに——いるのだと、しても……」
「シエちゃん—————」
「そこに、私のしあわせは、ないの…です……っ。あの、方が——笑うことの出来る…世界こそ——。私の求める……っ!」
まだギリギリ動く上半身を大きく捩じり、勢いをつけて振り子のように回す。
「ぁ———っ」
その反動で完全に凍り付いていた左腕の手首は砕け、槍を握った拳ごと飛んで行った。遠くで地面にぶつかる反響音だけが耳に届くが、この身体ではもはやそちらを見ることもできない。
これでもう、皆にお茶を淹れることはできなくなってしまいました。
リア様は許してくれるでしょうか、アヤネは悲しまないでいてくれるでしょうか。
…ヨナギ様は——。
思考は途切れ、暗闇へ。
絶対零度と化した肉体では瞬き一つ自力で行うことはできず、永遠続く冬の中で眠りに落ち続けるだけ。
冷たく暗い月光の中、何も感じないはずなのに——、どうしてだろう。完全に意識が終得る寸前、とても暖かな手の平の熱だけは、しっかりと感じることができた。
□ □ □
「———」
そして、シエは最後の準備を完遂した。どのような結果であっても辛く苦しいことになるのは分かり切っていたというのに。
氷像となったシエを中心に地面に刻まれるは当然真円、だがこれは彼女の扱うものではない。
「これは——、そうか、姿を見せないと思ったら。お前は酷い男だ……ヨナギ」
「………」
虚空を映す瞳を見つめ、頬に手を当て優しく撫でる。
瞼を閉じてやりたかったが、完全に凍り付いている以上それも叶わない。
「そうか、そうだよな。お前はラゥルトナーに付いたんだ。それなら“剣”だけですむはずがない。他にも持っていて不思議じゃあなかった」
理解に至ったと声を上げるユーリには目もくれず、こんな男の為に身を尽くしきったシエを労る。
「ラゥルトナー…ッ、随分とふざけた真似をしやがる。人間をなんだと思ってるんだ。彼女の命を、一体なんだと——ッ!!」
「黙れ」
「ヨナギッ、お前だって分かっているはずだろうがッ! 墜天子である彼女を“贄”としたことの意味を!」
「黙れと言った」
これまでの余裕などかなぐり捨て、心からシエの為に怒るユーリへ振り返る。その心、理屈を知るお前ならばその怒りはもっともなんだろう。そして、敵であるはずの俺たちへ手を差し伸べようとした。
ズレてはいるが、良い奴だ。それは違いない。
だが——、これはお前の入り込むような問題じゃない。
「シエが自分から望んだことだ。誰からの反対も押し切って、アイツが選んだ道だ。アイツが歩いてきた命だ。報われない命であるからと、価値のない命だからと、せめて従者として果たしたいという覚悟だ。部外者が、口を出すんじゃないぞ…!」
「それがおかしいと言っている! 報われない命だと!? 価値がないだと?! そんなことがあるものか! 生まれの違いで不平に命が捨て去られることがあっていいはずがない!」
「捨てたんじゃない、託したんだ。お前の怒りは正しいんだろうさ。だが、俺たちの覚悟には程遠い」
ユーリの怒り、それはきっとこの場において誰よりも正しい怒りだ。怒気が強まるにつれ空間が凍り付く。一度呼吸をすれば肺は使い物にならなくなる。
「覚悟? 覚悟だと…? ふざけるな、そんな言葉で片付けるなよ…っ。その子は、最後の最後まで戦う意思を見せた。例え四肢を失おうとも、諦めることなく、その心を燃やし続けた。それを——お前はただ見ているだけだった。ああ、そうだろう、怖気づくような奴じゃない。なにか手があるんだろうと思っていた。奇襲か、戦いの準備か。俺を一撃で倒す算段の為に彼女は命を懸けているのだろうと」
「そうか」
「だが、今のお前は一体なんだ。何も変わっちゃいない。何一つ、オレに勝利する要因を持ちえないお前は、一体なんだという。…覚悟という言葉を口にしておきながら、相応足りえないそのざまは一体どういうことだ!! 答えろ、ヨナギッ!!」
救わなかった理由を示せと、意味があるのなら見せてみろと言外に叫ぶ。
「………」
誰かの死を、俺はあれほどまでに悲しむことができるだろうか。怒ることができるだろうか。
(いいや、それはきっと——)
虚空を宿した瞳で俺を見つめるシエの姿は芸術的な美しさを伴ってはいるが、あまりに寒々しい。
喜怒哀楽を忙しなく周りに振りまいていた表情は氷の仮面のごとく微動だにせず、感情を推し量ることはできない。
手足はもう使い物にならない。この戦いの後、奇跡的に命を繋ぎとめることが出来たとしても日常生活を送ることさえ不可能だ。物を握ることさえ死力を尽くしても為し得ない。
「……すまない、シエ」
だから、俺が選んでいい言葉はこれだけだろう。
無理をさせてすまなかった。命を懸けさせてすまなかった。感謝することも出来なくてすまなかった。
謝る理由などいくらでもある。
そして許されるいわれなどどこにもない。
シエが望んでこの役目を果たしたなどどれほどの理由になるものか。俺が託し、任せ、見殺しにした時点で、償うことのできない罪は此処に在る。
もはや、迷いは切り捨てろ。
この瞬間、この戦場にて、為すべきことはただ一つ。倒さねばならない敵はただ一人。
シエ、お前の命は、心はこの手に在る。共に行こう、決して消し去ったりはしない。
「俺は、お前との約束を果たして見せるよ——」
「……真髄を見せると言ったな、もう加減する必要はないぞ。死人を救うなんて、バカげたことを言うつもりも無いだろうが」
「挑発のつもりか? そんな片腕だけでどうするっていうんだ。だが、いいだろう…ッ、乗ってやる。確かにオレは敵だろう、部外者だ。だがな、幸福を貴び笑うことのできる命を犠牲にしたりはしない。ヨナギ、オレは許さない、救うべき者を救わなかったお前を、オレは許せない!!」
「なら甘ったれたことを言ってないでかかってこい。俺自身、アイツに傷つけたお前を許しはしていない…ッ。こちらも手は揃った、シエがそろえてくれた。だからこそ見せてやる。彼女の宿した力の真価を。『——死を想え、その光輝は闇の果てにこそ届くのだから』」
「———っ、これは…」
この氷獄の世界を統べるお前ならばわかるだろう。
己の世界に起きる異変、地の獄を覆いつくす氷結界を顕現した中心にて、一人の献身によって生み出されようとする一振りの光輝。
その輝きは地上へ、凍り付いたシエの心臓に宿り止まった生命活動の代わりに脈動する。
「なんだ…それは…、お前達、彼女に何を埋め込んだ…っ!」
形にすらなっていない輝きだというのに、閉ざされ凍り付いた世界そのものを揺さぶる力、常軌を逸した状況にユーリさえつかめないでいる。
そうして、紡がれはじめたのは彼にとっての敬意であり懺悔。
「聖なるかな、美しき娘よ。
お前が真に光輝に満ちた存在ならば、この欠けた刃を証明としよう」
言葉に呼応するかのように、いたるところから光の柱が立ち上る。それはシエを中心とした巨大な円を描く様に発生すると、呼応するかのように、シエの心臓に灯った光は段々と強くなる。『界燐』の純度は増し、何かとてつもないものを形成し始めている。
「これは…っ、させるか!」
もはや手を抜く必要はないということか、ユーリの言葉と共に俺はシエと共に刹那にして氷そのものに閉じ込められ、指一本動かすことができなくなっている。
さらに、氷の大地そのものがうなりをあげて呑み込もうとする。押しつぶすつもりだろう。
だが足りない、脈動する光、熱を持たぬはずのそれは触れるだけで周囲の氷を消し去り、大地の侵攻を防いで見せた。
「誰より気高き忠心を持ちえたお前ならば、暗き死でさえ光を以って祝福するに違いない。
美しき娘よ。お前に再び見えたいと願う、どうかこの愚かな男を救ってほしい。
…この血に濡れた手を取ってくれ、約束を果たし共にゆくがため」
動かすことのできる左手で、もうなくなってしまった彼女の手のあった場所へあてがう。震える手で虚空を優しく握ると、そこには何もない筈なのに——。暖かさを感じ取れた。
そして、頬から首筋へ、輝きを放つ心臓へと手を伝わせる。形を持たぬはずの光を掴みとる。
「———っ、死を想え…、不滅なるかな聖なる魂。封じ創造するは闇滅の心象領域——」
掴みとった光を心臓より引き抜く。
——そして、世界から色が消え去った。
「……ったく、ラゥルトナーめ、そんなもんまで…何処から引っ張ってきやがった…!」
眩く放たれる光は留まることを知らず、世界を白く染め上げる。月の光も、星の輝きさえも押しのけて白く上書きしていく様は穢れ一つない不浄。
そして、その力を持つ刃こそ。
「創生せよ聖遺物、天より賜りし審判の聖槍よ——ッ!
四方展開、三界混成『金剛領域・神釘神槍』」
握られるは輝くばかりの聖なる槍、一片の穢れなき様は、他者へと威光を知らしめるかの如き威容。
それこそが彼の持ちえた、もう一振りの刃だった。
『金剛領域』
胎蔵領域が地獄を生み出す空間に作用する異能であるのなら、金剛領域は武具のオリジナルを創り出す異能です。ラゥルトナーが主に使っていました。
どの様な能力になるかは武具に依存し、胎蔵領域ほど習得に才能は依存しないものの、武具それぞれによって使用者の実力が浮き彫りになる側面もあります。
今回夜凪が創り出した槍についてはラゥルトナーが所有しており、リアが夜凪にプレゼントしたものです。しかし夜凪は自分には必要ないとしばらく放置していましたが、リアの絡みに辟易し散歩へ抜け出した際、死ぬ寸前のシエに明け渡すことで心臓の代わりとなっていました。
シエが夜凪に対して忠誠心が高い理由も幼少期に起きたこの部分が大きいです。




