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えあののの短篇集

作者: えあのの

 

 簡素な部屋の真ん中には茶色の大きな段ボールが置いてある。


 増えたのはたったそれだけなはずなのに何故だかすごく嫌な感じがする。


 1週間ほど前に届いた箱を私はまだ、開けられないでいる。


 届いたその日、私は不審に思いながらもその覚えのない箱を恐る恐る開けようとしたが、中からドンッと一回大きな音が鳴ったので開けるのをやめた。


 その日は一日中箱のことを考えていた。一体誰からだろう、そして何が入っているのだろう。思い当たる節はすべて当たったが、皆口を揃えて知らないと言う。


 気になって仕方がないのに、得体の知れないその箱は何となく嫌な感じがして私は結局その日箱を開けることはできなかった。


 次の日、目覚めてふと床に目をやると、そこにはまだ箱があった。


 だが、それだけではなかった。箱は2倍くらいの大きさになっていた。それは、中身が膨れ上がったわけではなく、箱自体が大きくなっている。


 恐る恐る近付こうとすると、また、ドンッと大きな音が箱の中から響いた。


 引っ越してきて早一週間、ようやく部屋も片付いて、私の好きな簡素で落ち着いた部屋ができたというのに、一体なんだというのだ。


 痺れを切らした私はそれをゴミ捨て場に捨ててきた。分別が少し気になったけど中身もわからないんだから仕方ない。


 しかし、私はその箱をなめていた。


 私が部屋に戻ると、ドアが完全に開かない。半分くらいのところで何かのつっかえてるみたいだ。


 そう、あの箱だった。


 これはいよいよまずいと思い不審な箱があると警察に電話すると、若い警察官はこう言った


 「今すぐに開けてください。誰かに見られる前に必ず開けてください。そうすれば後で伺いますから」


 と、焦ったような声で言う。


 普通は不審物があれば、到着するまで開けないようにというのが筋だと思うが、何か知っているのだろうか? 人に見られる前とはどう言うことなのだろうか。


 お巡りさんが言うなら仕方ない。私はゆっくりとその箱へと手を伸ばした。


 ピンポーン


 静寂の中にチャイムが鳴り響く。


 お巡りさんが来てくれたのかもしれない。私がドアを開くと、お隣さんが顔を出した。


 「ごめんなさいね」


 と、だけお隣さんが言うと私の視界は眩んだ。意識は闇に溶けてゆく。


 気付けば私はどこかに閉じ込められていた。


 暗くて何も見えないが、外で物音が聞こえる。何故だか、声が出ない。私はがむしゃらに走った。すると、ドンッと言う音がして壁にぶつかった。

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