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第3π おっぱい実験

 おっぱいが目の前にある。柔らかそうなおっぱいの谷間が、大きく開いた胸元からのぞいている。しかも、触ってよいというのだ。灰次はごくりと唾を飲む。

「いいんですか?」

「ああ、構わない」

「では、失礼します」

 灰次は真面目な顔を作って言いながら、ベルのおっぱいに手を伸ばす。

「ちょっとま……」

 ベルが止めるよりも早く、灰次はおっぱいを両手で包むように揉んだ。柔らかい感触が心地いい。布の上からでも感じる突起が少し固くなるのを感じる。

「あんっ」

 悩ましい声がベルの唇から漏れた。同時に、灰次の手が熱くなってきた。魔法が発動しようとしている前兆だ。しかし、メークルの時と違い、静電気のようなピリピリとした刺激が走った。ベルのおっぱいの間に電気を帯びた光の玉が発生して膨張を始めた。前方に発射されるのを灰次は直感した。

 そして、灰次はふと我に返った。このままだと、自分に魔法が直撃する。自滅だ!

「まずい!」

 灰次は反射的にベルのおっぱいを上に揉み上げた。轟音を立てて電撃の光線が上の方へと放たれた。灰次の前髪をかすり、光線が天井を貫いた。凄まじい音を立てて瓦礫が部屋に落ちてくる。

 呆然としながらぽっかりと空いた天井を眺める。スイカぐらいの大きさの穴から空が見えた。

「うわぁ。天井に穴が開いちゃったよ」

 メークルも驚いたように天井を見つめている。ベルも天井の穴を見ていたが、溜息を吐いて灰次に向き直る。

「だから、ちょっと待ちなさいって言おうとしたのに……」

「ごめんなさい」

「まあ、いいわ。面白いものが見れたからね。けど、気になるのはメークルの時は炎で、私の時は電撃だったってことね」

「はあ、確かに……」

「これはちょっと実験が必要なようね」

 するとベルは部屋の奥へ歩き出し「二人とも付いて来て」と声を掛ける。灰次とメークルも部屋の奥へと入っていく。呪術的な雰囲気のある道具があちらこちらに飾ってある。

ベルは奥の扉を開け、外に出た。そこは庭になっており、壁側には怪しげな植物を植えた鉢植えや、貯蔵用の壺や箱などが置いてある。何より目を引くのが小型飛行機のような乗り物だった。自動車くらいの大きさだが、翼のようなものが左右に突き出ている。

「小型魔導飛空艇よ。今からこれに乗って魔法被害が出ない岩山の上まで行くわね。さあ、二人は後ろの席に乗って」

 そう言うとベルは扉を開けて運転席に座った。有無を言わさず話が進んでいくが、今はベルに従うほか無さそうだった。

 灰次たちも後部の扉を開けて中に入る。灰次の隣にメークルも座る。

「行くわよ」

 小型魔導飛空艇が勢いよく浮上し、高速で空を駆け抜けた。窓から外を覗くと下には平原や森が広がっている。

 すると、目の前に恐竜のような眼が現れた。

「うわああああっ!」

 灰次は驚きの余り叫んだ。

「怪鳥ディノガルーダだ」

 ベルは事も無げに言う。辺りを見るとワニのような顔をした数体の大きな鳥に囲まれていた。

「先生、まずい事になりましたよ!」

 メークルも狼狽している様子だ。

「問題ない」

 ベルは平然としながら操縦桿をぐんと傾ける。機体が揺れる。大きく方向転換して怪鳥の間を擦り抜ける。更に機体は回転する。灰次たちは座席の端に掴まりながら遠心力で体が吹っ飛びそうになるのを堪えていた。

 正面の怪鳥が大きな口を開けて迫ってくるのが座席からも見えた。

 やばい――!

 灰次は恐怖で震えながらベルに目を向けると、彼女の身体からオーラのようなものが発されていた。そして、中央の大きな魔法石に手を当てる。

「上級爆炎魔法〈ボムルゾン〉発射!」

 ベルの手元が光り輝くと同時に、飛空艇の先端から大きな炎の塊が発射された。炎弾は怪鳥の翼に命中すると爆裂した。翼と胴体の一部が破壊され、怪鳥はバランスを崩しながら落ちていった。

 おお、と灰次は歓声を上げるが、ベルと怪鳥との戦闘は続いている。まだ二羽の怪鳥が残っている。ベルは自由自在に飛空艇を操り、怪鳥の攻撃をかわす。しかし、後部座席の灰次たちは期待が揺れるたびに揉みくちゃになっていた。メークルと密着できるのはラッキーでもあったが、楽しんでいられる状況ではない。

 爆裂音が二発轟いた。灰次が顔を上げると二羽の怪鳥が弾けている所だった。そして、そのまま肉片をまき散らしながら地上へと落下していった。

「すごいですね、あんな大きな怪物を撃ち落とすなんて!」

「さすが、先生です!」

 灰次とメークルが称賛の声を上げると、ベルははにかむように微笑を返した。

「もう着くわよ」

 飛空艇の高度が下がっていき、岩山の上に到着した。三人は飛空艇から降りた。

 岩山の標高はそれなりに高く、地上に見える森の木々が小さく見える。頂上は広くなだらかで、小石が転がっていたり、雑草が疎らに生えている以外には何もなかった。

「さあ、早速実験するわよ。ハイジ、私のおっぱいを揉みなさい」

「は、はい! 揉ませていただきます!」

 どぎまぎしつつも、灰次は威勢よく返事をする。今度は自分に魔法を食らわないように背後からおっぱいに手を添えた。

 柔らかい感触を楽しみながら灰次が揉んでいると、再び静電気のような刺激が走る。そして、おっぱいからは先程と同様に電撃の光線が放たれた。光線は空の彼方へ消えていく。

「なるほど。やっぱり電撃のようね」考え事をするようにベルは顎に手をやった。「じゃあ、次はメークルのおっぱいね」

「えっ!」虚を突かれたようにメークルが飛び上がる。「私のおっぱいもですか?」

 嫌そうな顔でメークルが言う。

「ハイジの能力を調べるためには必要な事よ。それに、ハイジの魔法はなかなか強力だし、魔法使いは重宝される。きっと、あなたの役にも立つはずよ。その為にも、能力を把握しておいた方がいいのよ」

「でも……」

 メークルが口を尖らせる。

「減るもんじゃないし、いいじゃないの」

「減るとか減らないの問題じゃないです!」メークルは頬を膨らませたが、諦めたように言った。「もう……分かりましたよ」

 メークルは苦々し気な視線を灰次に送る。気まずい空気の中、灰次はメークルの背後に立ち、スタンバイした。

「では、いきます!」

 灰次はメークルの爆乳を揉みしだいた。やはり、メークルのおっぱいはかなり大きい。灰次の感覚ではHカップ位はあるように思えた。固いビキニアーマーの中で水風船のようにおっぱいが揺れ動く。ビキニアーマーのせいで柔らかさを存分には味わえないが、肩越しから見える大きなおっぱい膨らみと谷間は十分にエロかった。

 すると、手が熱くなる。


 来た――――!


 轟音を立てておっぱいから炎が噴き出した。渦巻く炎は人間一人を呑み込むほどの大きさだ。数秒間、辺りを熱気が包んだが自然と炎は消えた。

「なるほど。やはりメークルの場合は炎なのね……。これは、やはりそれぞれに属性があるのか、灰次との相性により変化するのかのどちらかかしらね。

 それにしても……」

 再びベルは首を傾げた。

「私の時より、メークルの時の方が威力が大きい気がするのだけど……。属性が違うとはいえ、何か理由があるのかしら」

 灰次もそれは感覚的に感じていた。確かに、ベルの言う通りメークルの方が威力が大きかった。そして、灰次は理解していた。威力の差が何によるものなのかを……。

 灰次は意を決して口を開いた。

「多分、おっぱいの大きさだと思います」

「えっ」

 ベルとメークルが同時に振り向いた。

「おっぱいの大きさが、威力の大きさなんです……。たぶん。ベルさんのおっぱいも大きいです。恐らくFカップ……。しかし、メークルは推定Hカップ! かなり大きい!」

「エフカップ……エイチカップ……?」

 ベルとメークルは互いに顔を見合わせる。

「カップというのはよく分からないけど、大きさの単位ってことかしらね」

「はい。そして、異世界転生者の能力は趣味嗜好が反映されるって言いましたよね? 俺は大きいおっぱいが好きなんです。大きければ大きい程良い!」

 ぐっと拳を握りながら、灰次は力説した。

「そういう事ね……」

 納得したように呟くと、ベルは自分のおっぱいとメークルのおっぱいを見比べた。

「ちょっとだけ悔しいわね」

 苦笑しながらベルが小さく言った。

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